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サメ兵器シャークウェポン  作者: アースゴース
第3章 真・異世界決戦編 サメ&地球VS魔道帝国マジック・モンス
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第75話 虎鮫VS魔王!!!


 『……』

 『この不可視の力……貴様は“D”か!? “D”なのか!?』


 魔王が恐れ(おのの)いている。

 何やら“D”なるものを恐れているようだ。


 『魔王は“D”を最後の1匹になるまで滅ぼした』、『“D”は魔王を封じる力を持つ』というのが分かっている情報だ。

 ……その情報があっても何も分からないが。


 しかし、キズナに対して言っているので、彼の何かが“D”なのだろう。

 その実、キズナは重苦しい声を発した。


 『……我は“D”、調停者なり』

 『――やはり“D”か!!! この死にぞこないめ、地球人の身体を乗っ取ったか!?』


 マジドラゴンが、ぎこちない動きで立ち上がり、アンドロマリウスに殴りかかる。

 倍以上は体格が離れているからか、アンドロマリウスは軽々と避けた。だが、それは普段のキズナの動きではない。まるで、別人が動かしているようだった。


 「Dって何だよ!」

 「アタシ達の分かるように説明しなさい!」

 『“D”……それは世界最強の生命体、ドラゴン。かつて私が、マジック・モンス宇宙に存在する8割の生命、そして9割の銀河と7割以上の宇宙エネルギーを消費してようやく仕留めた』

 「……?」


 急に話が壮大になってきた。

 Dとやらを倒すのにそれだけ労力をかけていたら、マジック・モンスは既に滅茶苦茶なのではないだろうか。


 『マジック・モンスは、そこに住む住民以外は私の幻覚魔法によって成り立っている。最早、建材すらも満足に使えんのだ』

 「それで? 地球に移住させるために侵略ってわ――」

 『馬鹿をいうなッッッ!!!』


 アルルカンの言葉は、魔王の怒りによって遮られた。


 『マジック・モンスの奴らは、最初から最後まで魔法至上主義の差別主義者しかいなかった!!! そんな奴らは、さっき私が滅ぼしてきた!!!』

 「えぇ……」

 「戦争終結したじゃん」

 『だが!!! “D”はもっと気に入らんッッッ!!! あの調停者気取りがいる限り、人類に真なる幸福は訪れんのだッッッ!!!』


 魔王が叫ぶと、マジドラゴンの腕に変化が起きた。

 腕を覆う刺々しい装甲がボロボロと剥がれ、シンプルな腕が露出する。

 何度も何度も錬鉄し、鍛え抜いた金属のような腕だ。


 『悪魔たる怪物よ、傲岸不遜に嘲笑うがいい!!! はーっ“D”よ死ねッッッ!!! 【傲岸(DEvil)不遜に嗤(Arrogant)う龍(Dragon)ッッッ!!!】』


 燃える呪いの腕が、超高速でアンドロマリウスに襲いかかる。

 まるで、武術の達人のような無駄も隙もない一撃。例えスーパーロボットだとしても、耐えられるものではないだろう。

 だが、俺達はあえてその中に割って入った。


 総オリハルコン超合金製のシャークウェポンのボディが、いとも容易(たやす)く、それこそ紙切れのように貫かれる。

 だが、実はちょっとだけ()()ことのできるシャークウェポンによって、腕が捕らえられた。


 『何故邪魔をする!?』

 「中身はDとやらでも、肉体はかわいい後輩さ。戻す方法もあるはずだ」

 「あら? 戻す方法なんてあるのかしら」

 「あるさ。もう1人、()()()()()()()使()()()()がいる」

 『何っ!? “D”と同じ力だと!? “D”の全てを統べる力、超強力な現実改変能力と同じ力を持つ者がいるというのか!?』

 「え、現実改変? そんな物騒な力なのか……まあいるよ。そうだろ? グリット!!!」


 そんなヤバい力だとは思わなかった、精々超強い魔法くらいにしか……

 俺の呼び声に応えたかのように、空間が揺らぎ、そこからグリットが現れた。


 『ご名答。よく分かったね……どうやって?』

 「キズナがアンドロマリウスを動かす時と、お前が魔法使う時。どっちも同じ匂いがしたもんでな……いや、シャークウェポンに備えられた計器も同じ波動を記録してんだよ」


 そう、サメと化した俺も、機械も同じ反応をしていた。

 ならば、それは同じものである。


 『なるほどね。その通り、ボクの力は魔法じゃなくて現実改変。キズナも同じものを持っている』

 「やっぱりな」

 「そんな凄い力なら、何で最初から使わなかったのよ? 魔怪獣だってけちょんけちょんでしょ?」


 それは俺も気になっていたことだ。


 『キズナは自分の能力に気づいていない、垂れ流しだ。そのおかげでボクも能力を使い続けざるを得なかった。ま、おかげで拮抗してバランスは取れてるんだけどね』

 「はーん」


 要約すると、お互いの力がぶつかり合って相殺してたんだな。


 『ええい、同じ現実改変を持っていようが、“D”の呪縛からは逃れられ――』

 『――呼んだか?』

 『えっ』


 それは確かに、キズナの声だった。

 先程の重苦しい声などではなく、キズナ本人のものだ。


 『な、何故!?』

 『“D”の魂とやらは、オレが吸収しちまった!!!』

 『ば、馬鹿な!? “D”が人間の器に収まるはずがない!!!』


 どうやらDはキズナが吸収したようだ。

 魂を吸収? 一体どうやって? まあいいか。とにかく今は、魔王を倒すことが先決なのだから。


 「キズナ! グリット! シャークウェポンごと動きを止めろぉ!!!」

 『おう!!!』

 『了解』


 シャークウェポンに重圧がかかる。

 これが2人の現実改変、世界を書き換える力を丸々封印に使った、最も高価な拘束具。


 取っ組み合った2体のスーパーロボット。

 完全に互角の睨み合いを破ったのは、魔王マジナだった。


 『動けん! ならば私が出るのみ!』

 「はぁ!?」


 魔王は、コックピットらしき場所を強引にけ破り、中から飛び出した。

 しかし、マジドラゴンの強さは健在。恐らく人工知能か何かを搭載しているのだろう。


 「ヤバいわね! アンタ、外出て戦いなさい!」

 「えぇ!? 俺!?」


 アルルカンがとんでもないことを言いだした。

 あんな単体でも恐ろしい力を持つ魔王に、生身で戦えと。


 「こっちはアタシが何とか持たせるから! アンタは魔王をグチャグチャにして!!!」

 「……あぁ! 分かったよ!!! クソ、自分だけ比較的安全圏にいやがって」

 「それでこそアタシの相棒ね!」

 「それでこそ俺の相棒だよっ!」


 俺はコックピットの出入り口を開け、外に出た。


 「必ず勝ちなさい! 勝利するのよ!!!」




 ◇




 「逃げずに来たか、狂人よ」

 「誰が狂人だ。格好ならそっちのが狂ってるぞ」


 破壊され、瓦礫に満ちた街。

 山のようなロボットや魔怪獣が殺し合う、地獄のような場所。

 その中心で、俺と魔王は向かい合っていた。


 「もう何の目的で侵略に来たかは知らんし、実力差もえげつないくらいに開いてるが……ブッ殺してやるよ」

 「できるものなら……なっ」

 「うあっ!?」


 離れた場所から、魔王が拳を突き出す。

 すると、俺は後方へと吹き飛ばされた。


 「この技は……魔法か!?」

 「いいや、今のは富士見(ふじみ)無敵(むてき)流、波羅空打(ばらくうだ)。」

 「富士見無敵流……? それ、俺ん家のじいちゃんが教えてるやつじゃん」

 「なに?」


 確か、江戸時代らへんから続く古武術の流派だった気がする。

 まあ、俺は全く、それこそ基礎すら学んでないので、詳しくは知らないが。

 しかし、こんなとこまで縁があるとは。


 「お前は富士見家の者だったのか。だが、それにしては身長が低いな?」

 「何とでも言いやがれ、デカいのに囲まれるのは嫌いじゃないんだ。で、そっちこそ魔法使わなくてもいいのかよ?」


 魔王は肩をすくめた。


 「ふん! 魔王など所詮は他称に過ぎぬ! 魔法などいらぬわ!!!」

 「魔法使わなくて何が魔王だよ!」

 「高度に洗練された技術は魔法と見分けがつかない……私にはそれで充分だ!!!」

 「ならその技術ごと叩き潰してやるよ!!! これでも兄弟喧嘩じゃ負けなしなんだ、体格差も技量差も無意味だってことを教えてやる!!!」


 魔王……いや、マジナと俺の決戦が始まる。

 片やサメの暴力性、片や魔法と見紛う武術。

 死闘の果てに何があるか……




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