第68話 矢倍高校連合軍VSマジック・モンス軍団その1 『トロ三兄弟』
――Side:矢倍高校――
『木端共メガ! 我ラガ偉大ナル兄弟ニ楯突クトハ、己ノ浅慮ヲ恨ムガ良イ!!!』
「矢場谷園の皆は誰一人殺させないぜ!!!」
キズナの駆るアンドロマリウスと、魔皇我が、一騎当千とばかりに大量の魔怪獣を殲滅している。
辺りには魔怪獣の在外が散乱し、その身から腐臭を垂れ流していた。
やがて、襲い来る魔怪獣は数を減らし、動く者はいなくなった。
――ただ、3体を除いては。
『やはり魔獣共では相手にならんか』
『相当の強者とお見受けする』
『我ら『トロ三兄弟』が相手になろう!』
そう言ってやってきたのは、トロールのような者、独りでに動く木馬、切り身のような者の3体だった。
彼らの言葉から察するに兄弟の関係か、あるいは何らかの契りを結んでいることは明白である。
少なくとも、量子コンピューターを遥かに超える魔皇我の頭脳と、数学に強いキズナはそう導き出した。
『面白イ奴ラダ。シカシ、コチラノ数ガ足リンナ?』
「オレ達だけでも十分だぜ!!」
『……フン、ソウイウコトカ。デハ、奴ラヲ血祭リニ上ゲテヤロウゾ!!!』
アンドロマリウスが誰よりも素早く接近し、後から巨体の魔皇我が襲い掛かる。
狙いは、巨体のトロールと素早そうな木馬だ。
『このトロ三兄弟が末弟、トロール相手に力比べか!? 無礼められたものだな!』
『貴様コソ、コノ青春学園超鬼神魔皇我ニ生身デ挑ム愚カサヲ知ルガイイ!』
魔皇我とトロールがぶつかり合う。
想像を絶する剛腕同士が接触することで、辺りには一撃ごとに衝撃波が発生し、周囲の建物を軒並みなぎ倒した。
「デケぇ馬とは戦い慣れてんだ!」
「所詮はジャイアント・ウォーホース相手だろう!? このトロ三兄弟が次兄、トロイが格の違いというものを教えてやろう!」
キズナとトロイの戦いは、今のところ千日手そのものだった。
アンドロマリウスの振るう毒蛇の槍『フェルドランス』がトロイに直撃するが、木馬であるトロイには毒が効果をなさず、トロイによる拡散魔法攻撃がキズナのヒットアンドアウェイを潰す。
お互いの強みを生かしているが、それと同時にお互いの強みが相殺しているのだった。
『ククク……驚いたぞ、我が弟達と互角とはなぁ。しかし、裏を返せば私が介入すれば均衡は崩れるということ……まあ、そんな無粋なことはせんがな。私の相手は……むっ!?』
トロ三兄弟の長男、トロが待ちの体勢に入った瞬間、高速で飛来する何かが彼を狙う。
咄嗟に迎撃したものの、それは連鎖的に爆発を起こし、トロにわずかばかりの痛痒を与えた。
『そこだ!』
トロはその身から無数の斬撃を飛ばし、建物を切り裂いた。
その影から、トロを攻撃した下手人が現れる。
『お久しぶりですなぁ、トロ殿』
『貴公は……レイジアンガー少佐か!』
『ええ、レイジアンガーです。もっとも、もう少佐はいりませんがね』
現れたのは、前に鹵獲された遠距離攻撃用メイガス・ナイト『砲撃男爵』を地球技術で改修したものだった。
かなりマッシブでやや丸みを帯びたそのデザインはさしずめ、『遥駆砲丸』といったところか。
『久しく見ないと思っていたら、裏切って地球についていたとはな……まあそんなことだろうと思ったぞ』
『おや、意外ですね。お怒りになられると思いましたが』
『フン、貴公ら地球偵察部隊の冷遇っぷりは我らの耳にも入っている。裏切りは時間の問題だろうと馬鹿でも気づくわ』
『それに気づかなかった馬鹿は多数いるようですが』
『嘆かわしいことにな。しかし、我らには関係の無いことよ!』
トロは周りの建物を動かずに切断するという離れ業をやってのけ、キャノンボールに向き直った。
内部のレイジアンガーは緊張で汗を流す。
『前々から貴公とは手合わせをしてみたかった! わずか15にも満たない実力でダンセン元帥直々にスカウトされた神童の実力を!』
『……相変わらずですなぁ、貴方方の戦闘狂具合は。正直なところ御免被りたいのですが……いいでしょう、このフューラース・レイジアンガーが相手だ』
『感謝する! トロ三兄弟が長兄、トロがお相手仕るッッッ!!!』
3つの戦闘が幕を開けた……!




