第65話 死ぬのはお前だッッッ!!! サメVSサメ!!!
「お前がサメになったのは今! 俺は2、3ヶ月前! その分アドバンテージは俺にあるんだ! うぉぉぉぉ!!!」
『サメギュゥゥゥゥン!!!』
サメギューンの鼻っ柱に、鉄拳を叩き込んでやる。
シャークウェポンの脅威的な馬力から繰り出されるパンチだが、魔怪獣にはたまに無効化してくる連中がいた。こいつはどうだろうか。
『サメギューン!!!』
「微妙に効いてる!」
「じゃあこっちはどうかしら?」
鼻っ柱が潰されたサメギューンに、アルルカンが操るショットガンが発射された。
器用に銃をクルクルと回し、カッコつける余裕があるのはご愛敬。余裕が無くて焦ったら負ける。自分達のペースを保って行こう。
鉛よりもはるかに比重の重い、超重金属弾頭(散弾仕様)を撃ち込まれたサメギューンは、まるで堪えた様子が無かった。
恐らく、銃の何かしらを無効化しているのだと思われるが……それが何かが分からない。
「パンチは効くのに銃はダメなのね」
「もしかしたら武器無しのタイマンを強制してくる能力とか持ってるかも」
「じゃあ、あの腕は何に見える?」
「船のスクリューでできたモーニングスター、ですかね……」
サメギューンの右腕には、ありえない程デカい船のスクリューがついていた。
巨大で太い鎖で繋がれており、これを振り回して攻撃するという使用方法が透けて見える。
『サメギュゥゥゥゥン!!!』
「こっちだけが使えない? そんなんまかり通るわけないでしょ!!!
スクリューを振り回すサメギューンに、巨大丸鋸『ヘリコプリオン』で対抗する。
高速回転する2つの凶器がぶつかり合い、派手な火花を散らした。
「ほら使えた」
「いまいち決め手に欠けるな。誰でもいいから来てくれないか……」
武器同士のぶつかり合いを横目に、ロボット達の方を見る。
そこでは、飛行する新たな超魔獣との戦いに忙しい彼らの姿が。
その超魔獣は、空を飛ぶ超巨大なヤツメウナギといったような見た目だった。
本当に八つある目が怪しく光る度に、ロボット達に異変が起きている。動きがかなり精彩を欠いており、苦戦しているようだ。
「嘘でしょ……」
「ここにきて追加かよクソッタレ! そっちは大丈夫ですか!?」
『あ、ああ……何とか大丈夫だよ。こいつは我々に任せて、そいつをこっちに来させないでくれ』
「了解!」
応答したのはマックスさんだったが、かなり憔悴している様子だった。
恐らく、あの目が何か悪さしているのだろう。魔法だろうか、ロボットの魔法耐性はかなり高いはずだだが……
「とにかコイツをブッ殺そう」
「練り物にしてやるわ!」
『サメギュゥゥゥゥン!!!』
サメギューンは痺れを切らしたのか、高速回転するスクリューを盾に、シャークウェポンに接近してきたのだ。
この距離なら、その長物は使えないし、パンチもあんまり痛くないとか考えているのだろう。
有効打が無いから、己の有利に引きずり込む。確かに道理だ。
だが、その考えは甘いと言わざるを得ない。
「フカヒレザー!!!」
『サメギューン!!!
「こっちも食らいなさい!!!」
スクリューと鎖を強引に切断する。
その隙を見逃さず、アルルカンがパンチを叩き込み、おまけとしてジョーズミサイルを発射した。
サメギューンが爆炎に包み込まれ、体液や肉体の破片が飛び散る……
「死んだんじゃないか?」
「油断しないで。まだ生きてるわ」
「まあそうだろうな……何っ!?」
『ザメギュヴヴヴヴンッッッ!!!』
煙の中からサメギューン……の頭が伸びてきた。
そして、シャークウェポンの胸にあるサメの顔に食らいついてきたのだ。
噛みつかれるだけならいい。しかし、こいつはそれだけではなかった。
「おおおおぉぉぉぉ!? ヤバい!!! シャークウェポンが……シャークウェポンが喰われてる!!!」
「えぇ!? ……どういうこと?」
「こっちのカメラを見ろ、シャークウェポンが侵食されてるんだ!」
「うわキッッッショ!!!」
アルルカンの言う通り、それはもう気色悪かった。
噛みつかれた場所から融合するかのように溶け込み、1つとなっていく。これはもう悪夢のようだ。
「クッソが! このシャークウェポンと融合なんざ……ブチ殺してやる!!!」
「げ、目がこっち見たわよ!」
「その目ん玉から潰してやるよ……えっ」
目潰しを遂行しようとした俺だったが、いきなりその目がコックピットに向けて伸びてきたのだ。
そして、その目はフロントガラスを突き破り……俺の腹に突き刺さった。
「お、おおおおぉぉぉぉ!?」
「嘘でしょ……クソッタレがぁ!!!」
アルルカンが俺を掴んだ瞬間、俺の意識はどこか奥へと吸い込まれるような感覚の後に……
「……? どこだここ」
そこは、矢場谷園という街の一画だった。
ここは何処……?




