第64話 超魔獣『不死身の精霊』/超魔獣級生物『超酸単細胞生物』、『全てを喰らう者』
「ここがカリフォルニアか」
「激戦区を超えた激戦区ね」
アメリカでは既に戦いが始まっていた。
超巨大なウーパールーパーを、複数のロボット達が袋叩きにしている。
その向こうでは巨大なスライムと、トゲトゲのスライムっぽい何かが追いかけっこをしている。
スライムが通った後の道は、全てが溶かし尽くされ、消滅したような有様になっていた。それに追い打ちをかけるのが、トゲトゲの方だ。
「地獄かしら?」
「いいや、これから俺達が地獄になる」
「奴らにとってのね!」
俺達に呼応するかのように、シャークウェポンが唸りを上げる。
バトルマスキュラーに牽引されてきたブラストウェーブ、空を飛んできたラピス・ラズリとステルスBE。
『俺はあのメキシコサラマンダーモドキを攻撃しよう』
『見た所、再生能力の強いタイプか。オレもそっちだ』
『では私はスライムを』
「俺らはどうする?」
「あのスライムとトゲトゲでいいじゃない?」
「じゃあそれで」
俺達はそう決め、それぞれ散開した。
2機は戦闘機と化してウーパールーパーを狙い、ブラストウェーブからは大量のミサイルがスライムに降り注いだ。
「あのスライムは酸性のようね。ミサイルだって溶かしてるわ」
「けど、直前で爆発したやつの爆風とかは防げないみたいだな」
爆発を受ける度に、スライムの体積はどんどん減っていく。
しかし、それでもスライムは移動することをやめず、トゲトゲとした方から逃げ続けていた。
トゲトゲはスライムから飛び散った強酸を浴びているが、それでも痛みを感じていないように追いかけている。
どうやら、あの2体は天敵同士の関係にあるらしい。
だが、スライムはまだしも、あのトゲトゲとした奴は何なのか、全く見当がつかない。
「どうするか……あのウーパールーパーは……」
巨大なウーパールーパーは、アメリカに集結した複数の機体――俺達には見慣れないものも含まれている――によって袋叩きにされている。
しかし、とてつもない再生能力を持っているのか、ダメージを受けた瞬間に治ってしまうようだ。
「ねぇ、あのウーパールーパーに強酸性スライムをぶつけるってのはどうかしら? きっといい苦悶の悲鳴を上げてくれるわ」
「お前らしい悪辣な作戦だな。でもどうやって?」
「シャークウェポンの新しい機能があるわ。50メートル以上は難しいけど……体積の減った今なら余裕よ!!!」
そう言うとアルルカンは、左手を前に突き出した。シャークウェポンはそれにリンクし、同じように構える。
すると、大気が震えるような音と共にスライムの全身を、透明に揺らめく何かが覆う。そして、スライムが宙に浮きあがった。
「こ、これは……何だこれ」
「忘れたのかしら? アタシは超能力者なのよ」
超能力ってそういう。
しかも念力……美少女と超能力の組み合わせなんて、一昔前のアニメみたいな奴だ。それも、90から00年代くらいの。
「何か変なこと考えてない?」
「考えてないヨ」
「怪しっ。まあいいわ、アタシの力をそこで見てなさい」
空中で身動きが取れないスライムが、身体の形を強制的に変えられ、ウーパールーパーを包み込む。
身を溶かす超強酸に覆われたウーパールーパーは、激痛と苦悶によって暴れ狂う。
しかし、その抵抗も虚しく、全身の肉も骨も内臓すらも溶かされ、この世から消滅したのだった。
「中々素敵な死に様だったわねぇ。でも、もうちょっと耐えると思ってたんだけど」
アルルカンが邪悪に微笑む中、ロボット達はスライムに光線を発射していた。
ウーパールーパーを吸収したことで巨大になったスライムだが、強力な攻撃には耐えられず、次第に小さくなっていく。
スライムが死ぬのも時間の問題だろう。
「さぁて次はお前だトゲトゲ野郎ー!」
『ギュゥゥゥゥン……』
トゲトゲに、渾身のキックをお見舞いする。
意外と重かったのか、派手には飛ばずにゴロゴロと転がり、カリフォルニアビーチから海に落ちて行った。
「あ、やっちまったな。海に落ちた」
「どうせシャークウェポンなら海でも動けるでしょ。追いかけましょ」
「そうだな……え!?」
動き出そうとした時、海面が盛り上がり、何かが姿を現した。
「こ、こいつは……!!!」
それは、美しい流線形を描いたような身体を持っていた。
それは、力強さと凶暴さを併せ持った殺戮の化身だった。
それは、誰もが知っているだろうあの魚の姿をしていた。
「サメ!?」
『ギュゥゥゥゥン!!!』
身体から生えたいくつものトゲや、上陸するための脚、武器っぽい腕などが、そいつがサメであることを表していた。
「いや、どこを見たらサメだと思うのよ!?」
「顔がサメ……」
「サメ要素は顔だけでしょうが!!!」
「それを言ったらシャークウェポンもそうだろ!!!」
とにかく。あのトゲトゲは、恐らくサメを喰ったとかで姿を得たのではないだろうか。
スライムを追いかけていたのも、補食しようとしていたのでは。
「まあいいや、何が相手でもやることは変わらないだろ」
「そうね。微妙に納得いかないのは置いといてあげるわ」
あのサメが、モーニングスターのようになった右腕を振り回す。
どうやら、奴もやる気満々のようだ。
「あいつ何て呼ぶ?」
『ギュゥゥゥゥン!!!』
奴の、吸い込むような奇妙な声。
それだけで名称は今、決まった。
「『サメギューン』。それが奴の名前だ」
『サメギュゥゥゥゥンッッッ!!!』
シャークウェポンVSサメギューン
サメ同士の戦いの火蓋が切って落とされた!!!




