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サメ兵器シャークウェポン  作者: アースゴース
第3章 真・異世界決戦編 サメ&地球VS魔道帝国マジック・モンス
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第63話 雪崩――Great Avalanche――


 『パオオオオッッッ!!!』

 「こいつ!」


 大口を開けたマンモスが、光線のようなものを吐き出した。

 それを浴びた建物は、一瞬で氷像へと変わり果て、砕け散った。


 「冷凍光線ってわけね。シャークウェポンならある程度は大丈夫だと思うけど……」

 「あえて浴びてやるほど優しくはないな」


 マンモスの周りを飛び回る。

 燃料は作れるが時間がかかる。途中で切れたら大変だ。


 「あんだけ硬いんだ、初手から全力で行こう」

 「そうね。狙うなら……柔らかそうな目!」


 ドリルに変化したシャークウェポンの左手が、マンモスの目を狙う。

 このドリルは掘削用ではなく、波打つような形と、多数の(スパイク)がついた異形のドリル。


 サディストであるアルルカンの趣味で、敵をより苦しめるための形状であるらしい。

 激痛を与える腐食性の劇毒を注入するというおまけつき。他者を苦しめるのが大好きなアルルカンらしい新武装だった。


 「チィッ! 何で目に透明な氷なんかつけてんのよ!」

 「掘削用じゃないからなおさら……しかも氷が再生してるし」


 しかし、マンモスの目は見えないほど透明度の高い氷に覆われていたのだ。サディスト御用達の拷問ドリルでは、その透明で分厚い氷を貫くことができなかった。

 その上、氷自体が修復されている。これでは、氷を貫けたとしても目にダメージは少ないかもしれない。

 しかも、魔怪獣特有の強い再生力があり、多少の怪我ならすぐに治る。


 「そもそも目がシャークウェポンより大きいからなぁ」


 マンモスは4キロの巨体。

 それなので、目も相応の大きさとなっていた。


 『パオオオオォォォォッッッ!!!』

 「いい加減邪魔らしいわね」

 「へっ、馬鹿がよ。その手足じゃ目に攻撃は届きもしな……なにっ」


 シャークウェポンが、突如として吹き(すさ)ぶ暴風によって転がり落ちてしまった。

 見れば、山と見まごう巨体から、風が吹いている。これは……


 「(おろし)よ! あのマンモスは山そのもの……颪を吹かせることができても不思議じゃない!」

 「山は風を操っていた……?」


 こんな世の中だ、そんな山もあるかもしれない。

 現に、生きた富士山みたいな奴が異世界からやってきたのだから。


 地面に落ちそうになるが、推進機(スラスター)を一瞬だけ起動して宙に浮かび上がり、マンモスの太く強靭な毛に掴まった。

 シャークウェポンの馬力で引っ張っても結構大丈夫なのは、流石の超魔獣といったところか。


 「他に弱点と言えば……股間か尻のあ……」

 「絶ッッッ対に嫌よ!!! やるってんならアンタをブッ殺してでも止めるわ!!!」

 「いや、俺も嫌だけどよ……」


 俺も命の危機らしいので、この案は却下となった。

 さて、では奴の目を潰し、脳みそまで貫通させるにはどうするべきか。

 そんな方法は決まっている。


 「デビッドソンさん、ラリマーさん、オブリビオン。こいつの目に集中攻撃を!!!」

 『何か考えがあるのか?』

 「ギリギリシャークウェポンの腕が通れる隙間さえあればいいんだ。最悪人間大以下のサイズでもいいんだ」

 『了解しましたわ』

 『やってやるよ』


 ステルスBEとラピスラズリが方向転換し、レーザーでマンモスの右目を狙う。

 更に、ブラストウェーブからは高硬度物質破壊用の特殊貫通弾が発射され、神がかったエイムによりほとんど同じ場所に命中した。

 また、同じく発射された粘着質の強化改良型ナパームにより、わずかではあるが氷が融け続ける。


 『パオオオオォォォォッッッ!!!』


 それを黙って見ているマンモスではない。

 全身から天候を変えるほどの大吹雪を放った。

 ロンドンの全てを氷像に変え、分厚い雪と永久凍土の下に閉じ込め、魂すら凍てつかせる絶対零度の嵐。


 しかし、その氷結地獄は鋼の(からだ)を持つスーパーロボット達には効かないようだ。

 高速での機動戦に耐えうるため、襲い来る高圧のGや衝撃への高い耐性。外部環境からの干渉をシャットアウトするための機能を、吹雪は貫けなかった。


 『パオオオオッッッ!!!』

 「しびれを切らしたみたいだな! やらせるか!」


 さっきまで遅かった動きが、機敏になっている。

 ほんの少し、それでも俺達からしたら長大な距離を跳び、巨大な脚を振り上げ、ブラストウェーブを潰そうとしている。

 降り積もった雪と氷の欠片に車輪の回転を阻害されており、超巨大な足の裏の範囲から抜け出すには速度が足りないのだ。


 俺はそこに割って入り、巨大な脚を受け止めたのだ。

 えげつない質量がのしかかるが、バトルマスキュラーの援護により、そんなに消耗も無く防ぐことができていた。

 しかし、あと一歩が足りない。それを補ったのは、他でもないブラストウェーブだった。


 『お任せを。完全自立型パンジャンドラム!!!』

 「えっ」


 ブラストウェーブが、車輪から()を放した。

 すると、車輪が独りでに動き出し、マンモスの後ろ脚にぶつかり……大爆発を起こした。

 下に積もっていた雪は一瞬で蒸発し、何も残らない。マンモスは、突如としてバランスを失ったのだ。


 『パオオオオ!?』

 「アレって脚じゃなかったのね……まあとにかくチャンスよ!!! ふんっ!!!」


 バトルマスキュラーが後ろから引っ張り、シャークウェポンが引きずり倒す。

 バランスを崩したところを集中して狙ったので、コケてくれないと困るぞ。


 『パオッ……!?』

 「よし転んだ!」

 「袋叩きにしてやるわ!!!」


 多勢に無勢とばかりに数の差を活かし、転んでもがくマンモスの目を集中的に攻撃する。

 すると、目を覆う氷に亀裂が入り、それと同時に大技の予感がひしひしと伝わって来た。


 「もう少しなんだけど……あっ! ちょうどシャークウェポンがの腕くらいの穴が!」

 「よし! ちょっと開けるぞ!」

 「えっ、ちょ、ちょっと!?」


 俺はシャークウェポンのコックピットを開け放ち、純オリハルコン製の手にあるものを握らせた。

 極寒という表現すら文字通り生温い環境が、俺の全てを凍てつかせるが、俺はこれくらいなら死なない。


 「穴に向かってロケットパンチだ!」

 「ロケットパァンチッッッ!!!」


 わずかな隙間に寸分狂わずロケットパンチが侵入し、巨大な目に入り込んだ。

 しかし、再生力の強い魔怪獣よりも更に強力な超魔獣。その怪我は一瞬で治ってしまった。


 「どうすんの?」

 「離れろー!!!」


 俺の叫びを聞いたロボット達は、一目散に逃げだした。

 その隙を逃さずマンモスは立ち上がり、こちらを睨みつける……が。


 『パ、パオッ!? パオオオオッッッ!?』

 「よし!!!」

 「マンモスが苦しんでる? アンタ、何したのよ?」

 「もうじき分かるさ」


 マンモスは苦しみと痛みにのたうち回りながら、やがて倒れた。

 鼻や目、口からは多量の血を流しており、ピクリとも動かない。マンモスは死んだ。

 その巨体に累積した雪や氷が、雪崩(なだれ)となって滑り落ちてくるのが、雄大な山の化身の死を表しているようだった。


 「……え? 死んでる?」

 「そうさ、コイツは死んだんだ。この寒い雪の日にな」

 『寒い雪の日……!?』


 皆でマンモスの死体を見物していると、マンモスの目がわずかに動いた。


 『コイツ生き……』

 「いいや、死んでるさ。この寒い雪の――」

 「それはもういいから」

 『おいっ、何か出てきたぞ!』


 やがて、目から何かが出てきた。

 それは透明度があって、マンモスと比べるとまあまあ細長くて、生物的だった。

 このマンモス討伐の立役者こそが――


 『キューイ!』

 「ダオラン!」


 そう、巨大ミナミヌマエビのダオランである。

 俺はシャークウェポンにダオランの入ったボトルを握らせ、それを目の中に侵入させた。

 目論み通りダオランは、目の中で巨大化しつつ脳まで到達し、脳みそをグチャグチャにしてでてきたのだった。


 「なるほどね? アンタのペットの仕業だったの」

 「ペット? 仲間と言ってくれや。大体ダオランは高校レベルの数学なら解けるんだぜ」

 「デカくても賢くてもエビじゃない」


 アルルカンは呆れた様子だった。

 まあ、他生物に対して興味や慈しみを持ちそうな奴ではないのは明らかだ。


 「お、腕まで持ってきてくれたか。よすよす」

 『キューイ!』

 「で、どうすんの? 終わったけど帰るの?」

 『まだじゃ』

 「うわっ!」


 突如として通信が入る。

 相手は本間博士だった。博士がそう言うなら、戦いはまだ続くということなのだろう。


 『次はアメリカじゃ! そこで複数の超魔獣が暴れておる!!!』

 「ロサンゼルスが吹っ飛んだ後なのに……」


 再び地獄と化したアメリカを舞台に、新たなる戦いが幕を開ける……!




 【アイス・エイジ】体型:四足歩行 身長:4キロメートル 分類:哺乳類

 ・氷を纏った巨大なマンモス。別名、氷河期マンモス。

 動く永久凍土とされ、その体表面に堆積した氷の中には、様々な古代生物の遺骸が紛れている。さらにその遺骸が、紛れ込んだ魔法道具マジックアイテムの力で一時的に蘇るということもある。

 体内に存在する超高密度な氷の魔力を常に放出し、周囲を氷漬けにしながら移動する。この氷は生半可な熱では溶けず、半永久的に残る。

 自ら攻撃をすることは稀で、ほとんどの場合は攻撃を受けようとも気にも留めない。しかし、自らの生命を脅かすほどのダメージを受けた場合、恐るべき力で反撃を開始する。

 長い鼻からは猛吹雪、山の如き巨体からはおろし、大口からは冷凍光線。あらゆる手段を使い、敵対者を氷像に変えることだろう。

 『寒い雪国だと思われていた場所が、実はアイス・エイジの寝床だったとはな』

 『今や南国のリゾート地……南なのに雪が降ってたのがおかしいんですよ』



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