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サメ兵器シャークウェポン  作者: アースゴース
第3章 真・異世界決戦編 サメ&地球VS魔道帝国マジック・モンス
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第57話 合体技


 「ぐ……」


 あの拳が眼前に迫ったと理解した時、俺の視界はブラックアウトした。

 意識は失われず、目が見えない中で恐ろしいほどの衝撃のみが感じられたが、同時に()()()()()()()()()()ような感覚がした。


 衝撃がなくなり、目を確かめようと左腕を動かそうとした。しかし、ピクリとも動かなかった。

 幸いだったのは、右手が動いたことだろう。


 「う……お……」


 目をまさぐると、破片らしきものが突き刺さっている。

 それを力任せに引き抜くと、急に視界が回復した。


 「お……左手……」


 コックピットに添えられていた俺の左手は、無惨に潰れていた。

 それどころか、残骸と混ざり合い、原型がなくなっていた。


 「クソが……おい! そっちは大丈夫か!?」


 俺はアルルカンを呼んだ。

 アルルカンの立っていた場所には、黒い液体が()かれていた。匂いからしてガソリンか。どこからか漏れたのだろう。

 しかし、アルルカンは見当たらない。


 「おい、どこにいるんだ」

 「ここよ」

 「ひゅいっ」


 真後ろから声がしたので、思わず変な声が出てしまった。

 振り向こうとしたら、頭をガシッと掴まれる。めちゃくちゃオイル臭い。


 「な、何する!」

 「ちょーっと服が破れちゃったのよ。こっち見ないでくれる?」

 「服? ははぁん、さては俺を盾にしやがったな?」


 俺は服どころか身体もボロボロだ。もう治ってきてるけど。しかし、顔の、殴打男(オウダマン)につけられた傷だけは全く治っていない。

 そんな俺と比べて、アルルカンは服だけ。しかも場所は真後ろ。これは!!!


 「その通りよ、よく分かったわね……なぁんて言いたいところだけど。実際はあのパンチの衝撃でこっちに飛ばされただけなのよね。ちょうどアンタの近くだったから盾にしただけで」

 「はーっ! 死ね!」

 「ド直球な罵倒どうも。で、そんなことより。これからどうすんの?」


 まあ、アルルカンには世話になってるし、俺はモラリストなのでここは多めに見てやろう。

 ……多分、俺を包んだあの感覚はアルルカンの超能力か何かだと思う。それを言ったら貸しにされそうなので絶対言わないが。

 それと、あれ以上殴られても不味かったし、キズナにも感謝だ。


 「どうするってもなぁ」


 コックピットを見る。

 操作盤(コンソール)はほとんどが破壊され、スパークが火花を散らす。レバーや操縦桿でさえもへし折れていた。唯一、暴走を止める赤いレバーだけが無事に残っている。

 しかし、機体そのものは、ぎこちないものの動くようだった。後もう少し何かあれば、戦えるかもしれない……


 「行ける……か?」


 ガラスも全て割れ、ボコボコにへこんだ正面から外を見る。

 そこでは、キズナが何とかロンズデーライトゴーレムを引きつけているところだった。


 (長くは持たないな……)


 キズナがジリ貧なのは明らかだった。

 その次は俺達の番だ。しかもフロントガラスすらない今の状況では、攻撃されたら俺達は助からないだろう。

 この状況から奴を倒せる方法は……


 「……」


 俺は、赤いレバーを見てゴクリと固唾を飲みこんだ。

 本間博士からは、決して前に倒すなと言われていたものだ。


 「1つだけ方法があるかも」

 「何!? あるの!?」

 「この赤いレバーを倒す」

 「な、何ですってぇ!? ……それ暴走を止める用のやつでしょ? 暴走させるの?」


 アルルカンの疑問も分かる。

 俺は、震える手で赤いレバーに手をかけながら続けた。


 「シャークウェポンはエネルギーが無くても暴走できるだろ?」

 「そうね」

 「アレには訳があってな……簡単に言うと、シャークウェポンには現在、16台の炉心(エンジン)が存在する……量子格納装置の異次元空間にな。そこからエネルギーを取り出していたんだ」

 「えっ、そうなの!?」

 「一度に全部は使えないけどな。つまり、このレバーがあれば何台かから、エネルギーを取り出せる。取り出せたらそのエネルギーで強引にシャークウェポンを強化できる!」


 訓練用のシミュレーターで何回かやったことがある。

 その時は出力が高すぎて、とても俺には扱えないものだったが、アルルカンならできるかもしれない。


 「(ダイレクト)(コントロール)(システム)は生きてるか?」

 「ギリギリ生きてるわ……やるのね!? 今、ここで!!!」

 「そうだ!!! ちゃんと手綱は握れよな!!!」

 「望むところよ!!!」


 思いっきり赤いレバーを倒す。


 「うおおおお……こ、これは!?」

 「何て力……!?」


 その瞬間、俺達は、噴きあがる莫大なエネルギーに呑み込まれた……




 ◇




 『GHOOOOOOO!!!』

 『オオオオォォォォ……!』


 ゴーレムが拳を振るう。その威力は、比喩でなく山を一撃で砕く威力を秘めている。

 だが、シャークウェポンは、それを、真正面から跳び蹴りで打ち砕いた。


 『GAGOAAAAAAAA!!!』

 『オオオオ……』


 宝石の腕を破砕しながら進み、やがて貫通する。

 その衝撃で、中身までギッシリとロンズデーライトの詰まったはずのゴーレムがバランスを失い、片膝をついた。


 『オオオオォォォォ……』


 しかし、ゴーレムは壊れた部分を一瞬で再生して見せる。内に秘めた莫大な魔力、吸収した光がそれを可能とした。

 そして、振り向きざまに裏拳を放つ。


 『GHOAAAAAAAA!!!』


 存分に遠心力がかかった剛腕が、シャークウェポンを殴り飛ばす。

 エネルギーの防御を貫かれ、咄嗟(とっさに)の判断でガードに使われた右腕が砕けた。


 『GHOOOO……バトルマスキュラァァァァッッッ!!! リキッドォォォォッッッ!!!』


 曇天(どんてん)の空に、虎鮫の声が響き渡る。すると、どこからか馬の(いなな)きが聞こえた。

 大地を踏みしめる、力強い(ひづめ)の音が近づく。


 『ヒヒィィィィンッッッ!!!』


 大空を駆け抜けるその神馬は、バトルマスキュラー。

 とてつもない速さでゴーレムに迫り、突進でその身体を粉砕した。


 『よくやった!』

 『ブルルルル!』


 シャークウェポンが、バトルマスキュラーに飛び乗った。

 ミオスタチン関連筋肉肥大を患っているマスキュラーにとっては、489トンの重みなど有って無いようなものだった。


 『オオォォォォ……』


 下半身を失ってもゴーレムは止まらない。

 腕を使って、駆け回るバトルマスキュラーを捕らえようとする。


 『ギャアアアルルギィイイイイッッッ!!!』

 『オオオオォォォォ!?』


 だがそれは、地面から足元から勢いよく飛び出した何者かによって防がれた。


 『ギャオオオオォォォォッッッ!!!』


 金属同士の(こす)れるような、不気味に甲高い咆哮が響く。

 この恐るべき大怪獣は、液体金属と化したリキッドメタルザウルスの『リキッド』。

 地底からドリルのようにゴーレムを貫き、さらに身体を粉砕する。まさに、地底怪獣の面目躍如(めんもくやくじょ)である。


 『オオォォ……』


 強力な新手が2体も現れたことに、ゴーレム人間でいう『焦り』のようなものを抱いた。

 ゴーレムは砕け散った自分の破片を無造作に掴み、コイントスのように親指ではじく。


 欠片は雲を突き抜けるが、太陽が顔をのぞかせたのは一瞬だけで、すぐさま曇り空へ逆戻りした。

 だが、()()()()()()()


 『オオオオォォォォ!!!』

 『!』


 落ちてきた自身の欠片を使い、自己再生する。その際、空中で集めた光は据え置きなのだ。

 光の力を得たゴーレムは、再びシャークウェポンへと襲いかかった。


 『リキッドォォォォ!!!』

 『ギャオオオオッッッ!!!』


 だがそれでも、シャークウェポンの方が速かった。

 虎鮫の声に反応したリキッドが形を変え、壊れた右腕の代わりと化したのだ。


 『オッッッ』


 巨大な拳が、ゴーレムを真正面から殴り飛ばす。

 馬の速度、リキッドの質量、シャークウェポンの怪力が合わさり、大質量・超重量のゴーレムが天高く飛んだ。

 無数の破片が舞うその光景は、まるで黄金のダイヤモンドダストのようだった。


 『オオオオォォォォ!!!』


 雲に大穴を開け、太陽が輝く空に出たゴーレム。

 太陽光という文字通り天の恵みを受けられるならば、ロンズデーライトゴーレムは無敵だった。

 空中で光を吸収し、内部で乱反射させ、増幅させる。おまけに砕けた身体すら再生した。


 ――この光ならば、あの怪物(シャークウェポン)を殺せる。


 ゴーレムは本能的にそう感じた。

 小さな石ころから、この巨体になるまで。太古の昔から、ゴーレムを支えてきた文字通りの必殺技。


 『GHOOOO……』


 ……しかし、『必殺技』ならばシャークウェポンも持っている。

 この体ならば、普段よりも更に破壊力の高いものが使えた。


 リキッドが変形し、シャークウェポンの身体全体にアンテナのようなものを形作る。

 それと共に、サメの顔にとてつもない量のエネルギーが収束した。


 それだけでも、今まで戦ってきた魔怪獣が束になったとしても、触れただけで消し飛ばされるほどの出力だった。

 ロサンゼルス戦で見せた『アトランティックビーム』に似ているが、威力はその比ではない。


 さらに、バトルマスキュラーが魔法によって巨大なエネルギー力場を発生させた。そして、リキッドのアンテナがそれを吸収し、シャークウェポンのエネルギーへと変換される。

 荒れ狂う破壊の力を凝縮した、文字通りの『必殺技』だった。


 「凄ぇエネルギーだ!!! これならいけるぜ! けど……足りねぇな」


 キズナは、この必殺技が不安定であることを見抜いていた。

 今のシャークウェポンは半壊した状態。そんな状態では必殺技が制御できず、ゴーレムを撃破した後も止まらず、目につくもの全てを破壊し尽くす。

 一歩間違えば日本列島が二分割され、文字通り西日本と東日本になるだろう。


 「なら安定させりゃあいいって訳だ!!!」


 キズナは、槍の石突(いしづき)えメカトパスを軽くコツンと叩くことで、指令を下した。


 メカトパスの上部のパーツが、上に乗ったアンドロマリウスに連結する。

 更に、8本のタコ足を展開され、ゴーレムを狙う。

 そして、アンドロマリウスは胸部に内臓された『デモンズ・スフィア』にエネルギーを収束させた……


 メカトパスの支援と、シャークウェポンやゴーレムから漏れ出た多量の余剰エネルギーにより、チャージは数秒で済んだ。

 キズナは叫ぶ。現時点でアンドロマリウス最大の必殺技を!


 『ディアボルテッカァァァァッッッ!!!』

 『GHOOOOAAAAAAAA!!!』


 獲物に襲いかかる蛇のような極太のレーザーが、シャークウェポンに放たれた。それとほぼ同時に、シャークウェポンもビームを放つ。

 2つの光線は空中で混ざり合い、1つの巨大な奔流となり、ゴーレムに喰らいつく!!!


 「これぞ名付けて! 必殺『アトランティスオルム(アトランティスの大蛇)』だぁぁぁぁッッッ!!!」

 『オ、オオオオォォォォ!!!』


 迫りくる大蛇に、ゴーレムは全ての光を一点に集め、レーザーのように放つ。

 だが、それは拮抗することすらなく、一瞬で光ごと飲み込まれた。


 「おお! ロンズデーライトゴーレムの野郎、魔力だけ全部消し飛ばされたんだ!!! ロンズデーライトは全部丸々残ってるぜ!!!」


 地面に墜落したゴーレムは、表面上は無傷だった。

 しかし、残存する魔力。つまり、魔怪獣にとって魂ともいえる部分は全て消え去り、今や単なるロンズデーライトの塊に過ぎなかった。

 それを手にするの勝者達……まさに億万長者。国が買えるレベルだ。


 「だが、先輩方は……」


 キズナがシャークウェポンの方を見ると、徐々に光がおさまり、元に戻っていくところだった。

 変わらず右手は破壊され、右脚は骨組みだけ。各部に傷のない場所はないのではないかという有様(ありさま)である。


 「ひでぇなありゃ」


 素人目にも分かる程の大破だった。

 そして、中の先輩達の無事を祈りつつ、キズナはその場を後にした。




 【ダイヤモンドゴーレム】体型:人型 身長:50メートル 分類:ゴーレム

 ・全身がダイヤモンドでできたゴーレム。

 その貴重さから、歩く宝石と呼ばれている。そのまんまである。

 もし重さを10000トンとすると、ガバガバ計算した結果、大体50,000,000,000カラットくらい。驚異の『500億カラット』である。

 中身がスカスカにせよ、ぎっちり詰まっているにせよ、大きさがとんでもないので、値段もそれ相応である。

 下位種に、『カーボンゴーレム』『コールゴーレム』などがいる。

 ちなみに、1ct(カラット)=200mgらしい。つまり、このゴーレムが魔法か何かを使って自身の体重を200mgに詐称すると、1カラットしかないことになる……? 分からなかったので、詳しくは自分で調べよう。

 『地球では、ダイヤモンドが高値で取引されてるらしいっスよ』

 『そこにコイツを持ってけば……いや、無理だな。うん』


 【ロンズデーライトゴーレム】体型:人型 身長:500メートル 分類:ゴーレム

 ・黄金に輝く、ダイヤモンドを超える硬度を持ったゴーレムで、伝説に語られる超魔獣の1体。

 地下空間の超高圧力を受け続けたその身体は、いかなる攻撃であろうと傷つかない。鈍重だが、圧倒的なパワーと体格で押し切るパワーファイター。

 全身に光を集め、内部で乱反射したそれを放出する技を持っている。かつては、これによりいくつもの国が滅ぼされ、山が消飛び、海が蒸発した。

 強い光を一点に浴びると黒く変色するが、焦げている訳ではない。超エネルギーに変換された光が、身体をより硬化させているのだ。更に、その余剰エネルギーは、身体能力の強化などに使用される。

 この特性はマジック・モンスでは知られていなかった。何故なら、知る前に死ぬか、特性が発動する前に全力で倒すかの二択だからである。

 その身体は、例え一欠片であろうと大国を買っても有り余ると言われる。

 『奴こそがゴーレム最強の存在だ』

 『これでも超魔獣の中では2番目に小さい……』

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