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サメ兵器シャークウェポン  作者: アースゴース
第3章 真・異世界決戦編 サメ&地球VS魔道帝国マジック・モンス
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第55話 一方その頃(マジック・モンスその2)


 マジック・モンス魔王城の会議室。

 そこで、軍の高官や貴族による会議が行われていた。


 「ははは、魔法も使えない劣等種族にしてはよく持ちこたえたと思いますが、ロンズデーライトゴーレムを送り込んだからにはもう終わりでしょう」

 「奴は魔力無しでは殺せない。下等生物には過ぎた戦力です。やれやれ、手こずらせてくれましたねぇ」

 「全くですな! あの何とかというノロマな巨人族を仕留めた程度で調子に乗るなど……身の程知らずも(はなは)だしい! 大人しく我らに従えばよいものを……」


 それは最早、会議などではない。

 単なる茶会に成り果てた集会で、彼らは楽しくお喋りをしていた。


 (魔法主義のカス共が……突然爆発して死んだりしないものか……)


 そんな彼らを冷ややかな、まるで不愉快な害虫の集まりでも見るような視線を向ける者がいた。

 (ひたい)には見事な青筋が浮かんでおり、湧き出る激情を抑え込んでいるのが分かる。


 彼女はフューラース・レイジアンガー。マジック・モンス軍の少佐だ。

 つい数ヶ月前まで大尉だったが、最近になって昇格した。異例のスピード出世である。


 「レイジアンガー少佐はどう思いますかな?」

 「はぁ、そうですね。流石にロンズデーライトゴーレムは無理でしょう。今までの戦闘データから算出しますと……負ける確率は0パーセントです」

 「ははは、そうか! 平民上がりにしてはやるではないか!!!」

 「どうも」


 そんなデータは存在しない。全て今彼女が考えたでっち上げである。

 こう言っておけば、ろくにデータも見ない馬鹿な貴族や高官のご機嫌が取れることを、彼女は知っていた。

 まだ10代前半という若さで覚えざるを得なかった。それが処世術――


 「あー……コホン。それでは今回の会議はここでお開きとさせていただこう」

 「うむ。実りのある会議だった」

 「我々こそがマジック・モンスを担う者よ」

 「マジック・モンス万歳!」


 会議室から、レイジアンガーともう1人以外が退出した。

 勿論この会議に、彼らの言うような実りや中身は無い。


 「すまんな、少佐」

 「いえ……いつものことです」


 軽く謝罪したのは、魔道元帥ニック・ダンセンである。

 例え軍のトップであり、毎日プロテインを飲んで鍛えていることことを差し引いたとしても、かなりえげつない密度の筋肉を身体に備えていた。


 「閣下、これを」

 「ああ、ありがとう」


 レイジアンガー少佐がこの会議に呼ばれるのは、彼女だけが正しい情報をくれるからだった。

 彼女は子飼いの部隊を地球に送り込み、諜報活動を行っていたのだ。その隊員達から送られてくる情報によって、ダンセン元帥とレイジアンガー少佐だけは、状況を正確に把握していたのだ。


 今、元帥に手渡されたのは、『望遠の水晶』。

 レプリスタルの上質な水晶から加工された魔法道具(マジックアイテム)である。

 その効果は、『対となる水晶を持った生物の見ている映像を映し出す』。つまり、テレビで生中継しているようなものだった。


 2人は準備をし、真っ白な壁に映像を映し出した。

 そこではちょうど、シャークウェポンとロンズデーライトゴーレムが戦っているところだった。


 「ふむ。ダイヤモンドゴーレムが一瞬で消し済みになるとはな。奴らはそこそこ硬いはずだが」

 (ダイヤモンドゴーレムが()()()()()()だと? 冗談じゃない! 底の読めない人だ……)


 マジック・モンスにおいてダイヤモンドゴーレムというのは、硬さだけならば上から数えた方が早い魔獣である。

 それを『そこそこ』で済ますというのは、レイジアンガーにとっては想像もつかない実力を持っているということだ。

 それこそ、怪物的な実力を誇る四天王にすら匹敵するほどの。


 「……そういえば、ダルガングの奴は死んだのだったな」

 「ええ。ダルガング殿は胸に大穴が、隕鉄号は喉の肉がごっそりと無くなっていました。いかに頑丈な巨人族と巨人(ジャイアント)戦争馬(ウォーホース)といえど、死は免れない怪我でした。遺体は魔王様直々に……」


 ダンセン元帥は、顎髭をさすりながら、どこか遠くを見ているようだった。

 彼は、ダルガングとは個人的な親交があった。恐らく、その時を思い出しているのだろう。

 あるいは、英雄とまで(うた)われたダルガングが死んだなど、未だに信じられないのかもしれない。


 レイジアンガーも、ダルガングが死んだ瞬間を目にした時は、己が目を疑った。

 確かに、慣れない戦場、初見の相手、魔力の薄さなどの要因はあるだろう。しかし、その程度でダルガングが負けるとは思わなかった。ましてや、戦死するなど……


 魔力・魔法至上主義の者達(マジック・モンスの99パーセント以上を占める)は、魔法が使えず、魔力の薄いダルガングが死んだところでほとんど気にしなかった。

 ダルガングの葬儀に参加したのは100名にも満たない。その内の70人程は巨人族で、残るはダンセンとレイジアンガーと彼女の部下達。

 参加した一部の者達は、これが国に尽くした英雄の葬儀なのかと、ダルガングの死に悲しむよりも、悔し涙を流したという。


 ……思えば、ダルガングの死こそがレイジアンガーに()()()()()を考えさせる定的な出来事だった。


 「もう行くのかね。結果は見なくても?」

 「分かり切ったことです。今回も負けだ」

 「何故か聞いても?」

 「ダルガングは……単身でロンズデーライトゴーレムを倒しました。彼を倒した者なら、どんなに相性が悪くても勝てるでしょう」

 「ふむ……まあ、そうだな」

 「それに……」

 「それに?」

 「私の『魔法』をお忘れでしょうか?」


 レイジアンガーはダンセンの目を見つめながら、眼鏡を上げた。


 「なるほど……もう会うことはないかもしれんな」

 「できれば会いたくはないですね」

 「お互いな……では、達者でな」

 「ええ、お元気で」


 ダンセンに見送られながら、レイジアンガーは会議室を後にした。

 彼は、椅子に深くもたれかかる。


 「やれやれ……寂しくなるな」


 アイテムボックスとなった懐からマギ・プロテインの入った水筒を取り出す。

 それを酒のように飲みながら、ダンセンは映像に目を向けた。




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