第51話 支援メカ登場!
「沼が邪魔だな、一気に吹っ飛ばすぞ!」
「オーケー! ストロンゲストミサイル!」
重みのせいでどんどん沈むのを防ぐため、まずは沼を潰すことにした。
背中についた、『ストロンゲストミサイル』。ロケットブースターの代わりに搭載されたもので、飛行能力はクソだが、ジョーズミサイルよりはるかに強力な威力を持つ。
真上に打ち出されたが、そのうち降って来る。
これなら沼を破壊できるはずだ。
「これで沼を潰してやるぜ。さて、まずはシャコからだ」
「よく見りゃ足元が貧弱じゃないの。キックボクシングに持ち込んでやるわ」
まともな殴り合いでは分が悪い。
ならばと、弱点を突いてやることにした。
『ギュルッ!?』
「はっはぁ、馬鹿ね! ロボットの関節が生物と同じとでも考えたのかしら!? だとしたらおめでたい脳みそね!!!」
外したかと思われた右拳が、さらに右へと曲がった。
ロボット特有の、広い関節可動域を活かした戦術である。
その上、腕についた刃『フカヒレザー』が、シャコに上手く突き刺さった。
『ギュ、ギュルリィィィィ……!!!』
「なにっ」
シャコは最後の力を振り絞り、シャークウェポンを沼と化した地面へと引き倒した。
そして、ここぞとばかりにリンチしに来る魔怪獣達。多勢に無勢だ。
「クソ! 重さでどんどん沈んでる!」
「滅茶苦茶ウザいわねこれ」
「どう抜けるか……ん?」
近づいてきた小さい奴から殺しながら抵抗し、ボコスカ殴られていると、いきなり暴力が止まった。
何だと思いながら起き上がると、目の前にはデカいカニがいた。
「蟹……?」
見た目はデカいサワガニみたいだが、ハサミが違った。
右手が青く、左手が赤くなっているのだ。それぞれ、『S』と『N』のように見える模様が描かれている。
さらに、ハサミそのものがU字になっており、物体を挟むのには適さないように見えた。
そのカニは、ガチンと両ハサミをくっつけ、泡を吹いた。
『ボクタチホーカゴデンジハクラブ~』
「え、何っ、うああああ!?」
ハサミから、紫電が放たれた。
その雷撃を受けたシャークウェポンは、宙を浮いてしまった!
ビルや地面に何度も叩きつけられ、近づきすらしない腰抜け玉無しメイガス・ナイト共の砲撃にさらされる。
「あちこちぶつけちまったぜ。奴ら、ぶっ殺してやる」
「こんだけやってほぼ無傷なのは、流石に頑丈ね」
ビルに頭から突っ込んだのを最後に開放されたようだ。
しかし、数の多さもそうだが、飛び道具が封じられているのはキツいな。
「ストロンゲストミサイルは……もう破壊されてるか。そうだよな」
「もうちょい何かあればねぇ……あら? 通信が入ったわ」
「通信?」
シャークウェポンが頑丈なのをいいことに、策を考える。
そうしていると、アルルカンが通信に気づいた。本間博士からのようだ。
『こっぴどくやられているようじゃの』
「そうなんですよ。沼が……」
『うむ、確かに沼は厄介じゃ。じゃが、今から送る支援メカにかかれば、瞬きしている間に』
パチン、と指パッチン。
『皆殺しにできる』
「流石博士! いよっ、日本一!」
「マッドサイエンティスト!!!」
『フン、よせ、照れるじゃないか。では、今から送るぞ! 空に注目じゃ!!!』
通信は切れた。
俺達は、博士のいう通り、空に注目する。
すると、徐々に支援メカらしきものがこちらに近づいて来るようだった。
「アレが……」
「支援メカ、かしら?」
赤い、アダムスキー型UFOだった。ばいき〇まんの乗ってるやつみたいな感じだ。
そんな赤いUFOは、地味に速いスピードで接近してきた。
「おお、避ける避ける」
「さぞかしいいAIでも積んでるんでしょうねぇ」
遠距離攻撃しか能がないチキン野郎なメイガス・ナイトの大砲も、一切当たらなかった。
唯一の取り柄が奪われたことにムキになったのか、連発するものの、全てが避けられる様はお笑いだ。
そして、ついに俺達の隣までやってきたのだ。
「どうするんだこれ」
「何か……変形でもするんじゃない? シャークウェポンみたいに」
「ああそうかも……うああああ!?」
「何それ?」
そんな支援メカは、シャークウェポンの周りをフヨフヨと浮いている。
すると、俺の操作盤から、新たな操縦桿らしきものが飛び出してきた。
「こ、これは?」
「何か書いてあるわ。どれどれ……『メカトパス操るやつ』?」
「えぇ……」
例にもれず、出てきた操縦桿にもテープが張られ、そこにメモが書かれていた。誰がこんなメモ書いたんだろう……
それと、このUFOはメカトパスというらしい。
「と、取りあえず俺が動かそう」
「そうしてちょうだい」
俺は操縦桿をガチャガチャと動かす。すると、UFOも動き出した。どうやら操作は簡単なようだ。
「ふむ、シャークウェポンとそう変わりは無いな。この『足』ってボタンが気になるが」
「押してみたら?」
「……やるか」
『足』とだけ書かれたボタンを押す。
すると、UFOから8本の、タコのような脚が生えてきた!
メカトパスって、メカとオクトパスを合わせたってことなのか?
「この脚は一体……?」
「タコでしょ。見れば分かるわよ」
生えてきたはいいが、どうやって戦うのだろうか。
そう思っていると、あることに気が付いた。
「沈んでないな、このタコ」
この場所は沼になっている。タコの脚は液状化した地面にどっしりとおろされているのだが、沈む気配は無い。いや、正確にはちょっと沈んでいるが、余裕で動けそうだった。
どうやら、メカトパスは沼に強いようだ。
「お? 何かボタンが光ってる?」
「合体って書いてるわね」
「……」
「……」
「やるか!」
「そうね!」
俺達は顔を見合わせた後、ボタンを押す。
すると、フロントガラスに文字が現れた。
『SHARKWEAPON OCTOPUS MODE』
「シャークウェポン……」
「オクトパスモード?」
シャークウェポンが、触ってもいないのに自動で変形する。
そして、メカトパスの頭にあたる部分が、下半身を包み込んだ。
上半身はサメ、下半身はタコ。
完全なるキメラロボットの誕生である。
「シャーク〇パスだぁ!!!」
「前にアンタが話してた映画みたいね!」
「これで奴らを皆殺しだぁ!!!」
脅威の怪物と化したシャークウェポンが、牙を剥く!!!
◇
「まずは邪魔な貝共だ! 死ねぇ!!!」
メカメカしいタコの触手で、そこら辺にいる貝を持ち上げ、シャークウェポンに喰わせる。
バリバリと豪快な音を立てて咀嚼し、割れた貝殻が飛び散った。
『ギュイイイイ!!!』
「来やがったなぁ、エビにザリガニ共め」
「アッハァ! 凄い蹂躙ね!」
この触手はとてつもない怪力を持っているらしく、たった2本で30メートルくらいのエビを真っ二つに引きちぎることができた。
エビもザリガニも、ちぎった後は美味しくいただく。エネルギーがモリモリ回復していくぞ。
ちなみに、今は俺が1人で操作している。
人型ではなくなったので、アルルカンの強みが引き出しきれないのだ。
なので、アルルカンは座席でくつろいでいる。
『ギャアアアギョオオオオ!!!』
『ジャアアアア!!!』
「何だ、ヒュドラか?」
「多頭の蛇みたいね。あんまり大きくないけど」
数えると、5本の首を持っている。
多分、斬ったら増えて生えてくるんじゃないだろうか。
面倒なので、一気に斬ってしまおう。
「何が多頭じゃ、こちとらタコだぞ!?」
『ギャアアアア!?』
それぞれの首を、一気に斬り飛ばす。
残ったのは、いまだにビチビチと跳ねる胴体。どうやら、生命力の強い魔怪獣のようだ。
万が一、再生されると厄介なので、それは焼き尽くしておく。
「アハッ! 焦ってる焦ってる! あいつら慌ててるわよ!!!」
「撃っても全く効かねぇのによくやるよ」
魔怪獣の数が減ったのに焦ったのか、奴らは急いで大砲を撃って来た。
しかし、冷静ではないからか、ろくに狙いをつけられていない。その上、当たっても効かない。
「どうやらジリ貧のようね。馬鹿みたい」
「そのアホ共は逃げようとしてるみたいだが……オクトパスモードにはこんな機能もあるんだ」
俺が操作すると、シャークウェポンが浮き上がった。
そう、メカトパスには、飛行能力が備えられているのだ。
合体したとしても、その機能は失われることはない。
宙を舞う、サメとタコを合わせた鋼の怪物を前にした、メイガス・ナイト共。
奴らは、曲がりなりにも軍属であるにもかかわらず、恐れおののき、敵前逃亡を図った。
処罰する立場である上官っぽい奴も真っ先に逃げ出したので、代わりに俺達が処刑してやろう。
「逃げられるとでも思ってるのかしら? 本気でそう思ってるならお笑いね」
「確かに速い……が、シャークウェポンより遅いな」
見た目と大きさに反して高機動型らしく、素早い動きをしていた。
しかし、シャークウェポンはそれ以上に速い。
手始めに、先頭にいる隊長機らしきメイガス・ナイトから殺すことにした。
脚の遅い奴らは後回しだ。どうせいつでも殺せる。
『あわああああ!?』
「アハハハハ!!! 笑えるわ!!! クソ情けない悲鳴ね!!!」
「このまま押し潰してやるのか?」
「ええ! 圧死って苦しいらしいわよ!」
素早く隊長機に追いつくと、8本の脚で包み込み、思いっきり力を入れる。
すると、頑丈そうなメイガス・ナイトがミシミシと音を立て、潰されていく。
中からは、哀れな犠牲者の悲鳴が聞こえてきた。
『や、やめてくれ……』
「いや、お前こそやめてって言われてもやめなさそうじゃん」
「ま、地球侵攻なんて考えた上を恨みなさい」
『そんな……ああああぁぁぁぁ……』
八方から締め付けられたメイガス・ナイトは、動かない鉄塊と化した。
その光景を見ていた他の奴らは、絶望したような雰囲気を出していた。
「後は雑魚の集まりねぇ。精々、楽しませてちょうだい?」
『うああああああああ!?』
本性を現し、俺と操作を交代したアルルカンによって、メイガス・ナイト達は悲惨な末路をたどった。
◇
「よし、これで全部殺ったな」
「沼が無ければ烏合の衆だったわね」
辺り一帯には、魔怪獣の肉片やメイガス・ナイトの欠片が散乱している。
メイガス・ナイトを破壊した後は、塩試合の消化試合だった。
「暴走も止めたし、もうやることは――」
「待って、何か飛んでるわよ」
「なにっ」
俺は、アルルカンの指す方向を見た。
新手の魔怪獣が飛んできたのかと思ったのだが……
「あれは……」
「ヘリコプター?」
明らかに軍用でもないヘリコプターが飛んでいた。
拡大してよく見ると……報道ヘリか?
『ご覧ください!!! あの騎士のようなロボットと、サメの頭を持ったロボットが怪獣とロボット達を倒してしまいました!!!』
「あ?」
「は?」
な、何だこれはどうなってるんだ。
魔怪獣やシャークウェポンが出ている間は、そこら辺にいる魔術師が、その存在を隠蔽しようと頑張っていると聞いた。
社会を混乱に陥れてはならないし、魔術や超能力が知られてもいけないからだ。
ちなみに、本間博士達は、そんなこと一切関係ないので、隠蔽は別のところに使っている。例えば、俺やアルルカンの存在とか。
つまり、報道ヘリが来るのはおかしいということだ。
「どうする?」
「様子を見ましょ」
「撃ち落すかと思ったよ」
「ウザいと思ったらそうするわ」
「そっかぁ」
マスコミよ、命が惜しけりゃ、頼むから変な真似はしてくれるな……!!!
【沼貝】体型:二枚貝 身長:10メートル 分類:軟体動物・二枚貝
・大きな二枚貝。
殻は非常に頑丈で、大型の魔怪獣でも破壊は困難。さらにその殻を魔力で補強している。それでも、天敵に捕食されることはある。
口から特殊な液体を吐き出し、地面を液状化、沼のようにしてしまう。そのため、沼以外の場所で沼貝を見つけると、ただちに討伐される。
沼貝は沼に住んでいるのではない。沼貝の住む場所が沼なのだ。
『また地盤が……』
『やめてくれぇぇぇぇ!!!』
【放課後電磁波クラブ】体型:カニ 身長:54メートル 分類:甲殻類
・雷属性のカニ。
一体何が放課後なのかは全く分からないが、青いS極のハサミと赤いN極のハサミを持つ。そのため、磁力を操ることができる。
あくまで『磁力』なため、スキルキラーの影響下でも使うことができる。
海水、淡水、陸上のどこでも生存できるので、生息域は広い。
『こいつ何て言ってるんです?』
『さぁ……?』
【シュリンプ・リンプ】体型:エビ 身長:30メートル 分類:節足動物
・巨大なエビ。
スピードが速く、身体を折り曲げることで、後方へ高速移動する。これは、水中でも陸地でも使える。
大きさの割には細いので、耐久力は低い。
美味である。
『動きキモくないスか?』
『キモい。が、慣れればいける』
【ザ・パンチャー】体型:シャコ 身長:50メートル 分類:甲殻類
・シャコ。
平均は20メートルほどだが、たまに大きな個体がいる。
そのパンチは音速を超えるとされており、頑丈な大型の魔獣でさえ失神KOされることもある。
また、沼貝の天敵の1匹である。仕留めた沼貝の殻は、幼体のパンチの練習に使用される。
『叩き袋と一緒に飼育したら、飼育難度が格段に楽になりましたよ』
『この2種に以外な関係が……?』
【毒沼ヒュドラ】体型:ヘビ 身長:40メートル 分類:爬虫類
・毒沼に生息する、比較的小さなヒュドラ。
牙にはもちろん、皮膚や血にも毒があり、気化したものを吸うだけでも危険。討伐には、血清をばらまきながら迅速に仕留めることが求められる。
基本的に3本くらいの頭があるが、下手に切ると最大9本くらいに増えるほど、再生力が強い。
あまりにも危険なため、飼育用の毒沼ヒュドラは、毒素が弱くなるように調整されている。
『毒沼ヒュドラってことは、火山とか海とかもいるんスか?』
『ああ。天空ヒュドラもいるぜ』
【対巨大ロボット用メイガス・ナイト キャノン・バロン】体型:人型 身長:35メートル 分類:ロボット
・対シャークウェポンを視野に入れた、新型のメイガス・ナイト。砲撃男爵とも呼ばれる。
その名の通り、超遠距離から超大口径キャノンでの狙撃を念頭に置いた機体で、大火力での破壊を目的とする。機動力も高く、近づかれてもすぐ逃げることができる。
また、スキルキラーと一緒に運用するため、魔法が使われていない。
『まさか敵前逃亡するとは……』
『機体性能はいいっスけど、パイロットが……』




