第45話 地底怪獣リキッドメタルザウルス現る
早速だが、俺とアルルカンは魔怪獣と殴り合っていた。
「全然パンチ効かないじゃないの!!!」
「金属にパンチが効くかー!!!」
「シャークウェポンならブチ抜けるでしょうが!!!」
相手は、金属でできた巨人。つまりゴーレムである。
さっきから何度か殴ってはいるものの、ゴムのような弾力があり、衝撃が吸収されて全く効果がないのだ。
「ゴムにパンチが効くかー!!!」
「シャークウェポンなら破壊できるでしょうが!!!」
このやり取りも、さっきから5度目くらいだろうか。
ダルガングのダメージが修理完了しておらず、大体の武装が使い物にならない状況でコイツ。
マジック・モンスもようやく本腰を入れてきたか?
「キズナは……上手く誘導して同士討ちさせてるみたいだな」
「相変わらずの操作技術ね」
キズナの方は心配ないだろう。
問題は、こっちに7体くらい集まってきていることだ。地獄か。
「ん? レーダーに反応? 新手か?」
「いや……これは地面よ、地面の下にいるわ!」
「なにっ!?」
俺は、大慌てでその場から飛び退いた。
すると、地面が勢いよく爆発し、中から何者かが現れた。
「な、何だっ!?」
全身は金属のような外皮で覆われ、一目で硬いことが分かる。
筋肉質な太い脚での二足歩行で、尻尾を引きずっている。所謂、『ゴジラ型』などと呼ばれる体型だ。
頭に特徴的な角が生えた、まさに『怪獣』と呼ぶべき存在だった。
「魔怪獣!?」
「違う……魔力は感じない! 多分、地球産の生物よ!!!」
「アレがか!?」
『キジャアアアアァァァァッッッ!!!』
怪獣は、雄叫びを上げながらゴーレムに突撃した。
高音と低音が入り混じった、妙に不気味な咆哮……身も蓋も無い言い方をすれば、昭和の特撮の怪獣にいそうな声だった。
怪獣は、大口を開けながら、ゴーレムへと食らいついた。
そして、金属同士の擦れるような音を立てながら、咀嚼した。
『ゴォォォォ……』
『ガゲンギィィィィッッッ!!!』
ゴーレムも、されるがままではない。
数の差と重々しい身体を活かしながら、格闘戦を挑んだ。
流石に分が悪いのだろう、怪獣の金属質なボディもボコボコである。
『ギャリリリリン!』
『ゴ――』
「え」
「何?」
その時だった。
突如として、怪獣の身体がドロドロに溶けたのだ。
ゴーレムの仕業かと思ったのだが――
『ガギィィィィン!!!』
『ゴゴゴゴ!?』
「と、溶けたまま動いてる!?」
「あれは生物の範疇におさまらない、まさに怪獣ね……」
金属のような光沢を放つ液体と化した怪獣が、素早い動きでゴーレムを包み込んでしまったのだ。
内部からは、金属が削れるような音がする。恐らく、ゴーレムを喰っているのだろう。
その証拠に、怪獣が元に戻ると、ゴーレムは跡形もなく消えていた。
「ああ、あっという間にゴーレムが喰われた」
「お次は……キズナの方に行くみたいね」
キズナも怪獣に気づいていたようで、ゴーレムの隙間をぬって素早く離脱した。
怪獣は、キズナには目もくれず、ゴーレムを包み込み、捕食する。
またもや、ゴーレムは全て喰われてしまった。この怪獣は金属相手によほど強いのだろう。
「……こっち見てない?」
「ああ……」
「アタシ達を食べる気じゃ?」
「……」
「……」
『ギャイィィィィン!!!』
俺達に狙いを定めた怪獣は、襲いかかって来た。
シャークウェポンも金属。襲われない訳がなかった。その割には、アンドロマリウスが狙われなかったのが気になるが。
それよりも、迎撃しなければならないか。
「パンチは悪手か……」
「武装はほとんど使えない……詰んでない?」
「シャークトルネードは使えるぞ……でも腐食効果とか無いからなぁ……せめてルストハ〇ケーンなら……」
「ないものねだりはよしなさい。それで、何か無いの、効きそうなやつは」
探してみる……そういえば、これがあったな。
「金属だろ? 熱に弱いかもしれない。ちょうど接触したら使えるやつがある。奴の熱伝導率にもよるが……いや、でも地底から出てきたんだ、マグマの熱にも耐えるかもしれないし……」
「マグマって最大で1200度くらいらしいわよ、地球の中心の核はもっと熱いけど。その武装の温度にもよるんじゃない?」
「……今のところ、5000度が限界だ。やってみるか?」
「やりましょう……もう食べられちゃってるし」
「あ?」
どうやら、しくじったようだ。
足元に身体を伸ばしているのに気づかず、もう半分くらい呑まれていた。
それを見たキズナが助けに来るのだが……
『先輩!!! 今助けるぞ!!!』
「キズナ……あ! 後ろ! 新手の奴が出てくるぞ!!!」
『! すまねぇ、先輩方!!!』
光の粒子から現れたのは……14体ほどのメイガス・ナイトだった。
どうせカカシにもなりゃしない程度の強さだろうが、数だけは多いのがマジック・モンス。
今回もさっさと死んで、死体と残骸で地球に技術提供してくれるのだろうが。
「もう全部吞み込まれたぁ! よし行くぞ! 熱いぞ、準備はいいな!?」
「ええ、多少の熱さならどうとでもなるわ!!!」
俺は操作盤をいじくり回した。
武装とは言うものの、今からやろうとしていることは、ちゃんと搭載されているものではない。
シャークウェポンの機能に対してちょっと悪さをすることでできる、裏技のようなものだ。もちろん、とても負荷がかかるので、普段使いは論外だ。
「あら、武装じゃなかったのね」
「エンジンから出る熱を纏ってるんだ。装甲の厚いシャークウェポンだからできる裏技だよ」
「負荷とかかからないの?」
「あー、元々出てる熱をそのまま利用してるだけだからなぁ。でも長時間は絶対ダメ。長時間じゃなければ大丈夫。負荷も少ない」
「なるほどね」
じわじわと上がっていく、シャークウェポンの温度。
熱もほとんど遮断する、スーパーロボット特有の凄い金属が使われているからこそできる荒業だ。
コックピットから見える怪獣も、徐々に赤熱している。
さて、どちらが先に音を上げるのか……
【ゴムメタルゴーレム】体型:人型 身長:50~80メートル 分類:ゴーレム
・全身が金属でできたゴーレム。大きさは個体による。
鋼よりも硬く、ゴムのような柔軟性を持っている。そのため、討伐が困難な恐るべき魔獣として知られている。
筋肉質な体型と金属の重量が合わさった、天性のパワーファイターである。
弱点のコアとかは無い。魔力を吸い取ってただの鉄塊にするか、身体の70%以上を破壊するか。それが討伐方法である。
『どこから湧いて出てくるんだよ……』
『地底じゃないスか?』




