表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

今日の予定は


 中村遥香は無印のルームウェアを着たまま、テーブルの上に突っ伏した。

 カーテンの閉じられた薄暗い部屋。アイフォンのホーム画面を開いたり閉じたりする。誰からも連絡は来なかった。

 せっかくの休日なのに……。何のやる気も湧いてこない……。

 遥香は足先で、床に脱ぎ捨てられたままのスーツを弄った。

 はぁっとため息をつくと、ベットにアイフォンを投げて床に寝転がる。

 先週もその前も、最近、ずっとこんなだ。

 遥香は、自分が鬱病では無いだろうかと悩んでいた。

 社会人四年目の遥香は、外資系コンサルティングファームで毎日忙しく働いていた。仕事を任されるようになると残業も増え、平日は夕飯を作る時間も無い。せめて休日くらいは充実させたいと願ったが、仕事中に思い描く理想の週末が訪れることは無かった。休日になると気分が落ち込んで、身体が動かないのだ。

 仲が良かった学生時代の友達は、相次ぐ結婚のラッシュで連絡を取り合う事すらも稀になった。恋人もいない。

 寂しい人生だな。暗いベットの下を覗きながらボソリと呟いた。

 ふと遥香は、暗がりに何かが落ちている事に気がついた。床に寝転がったまま腕を伸ばす。埃を被ったそれは、学生時代のメモ帳だった。

 パラパラと捲ってみる。そこには放課後の予定や、休日の時間割がびっしりと書かれていた。

 こんなの持ってきてたっけ? 

 遥香は懐かしいなと思いながら、カーテンを開けた。眩しい日差しに目が眩む。

 あの頃は友達も沢山いたからな……。

 遥香は感慨深げに読んでいくと、意外にも一人の時間の予定も沢山詰まっていた。

 映画鑑賞。漫画の読破。川沿いの散歩。ジョギング。お菓子作り……。

 そう言えば、観たい映画があったんだっけ。

 遥香はずいぶん前に友達に薦められたホラー映画を思い出した。

 読みかけのあの漫画、続きはどうなったんだろう。

 学生時代に愛読していた少女漫画の続きが気になってきた。

 遥香は窓の外を見た。青々とした空に白い雲が流れている。

 よし、適当に開いたページを、今日の予定にしよう。

 遥香はワクワクとメモ帳を閉じた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ