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曇り空の下で
公営団地の人が減った。
黄ばんだカーテンの隙間からは小さな広場が見えた。そっと見下ろすと、錆びた遊具が風にキコキコと揺られていた。
玄関にはゴミ袋の山があった。コバエが飛び回る。破れた袋には虫が群がる。
三百十三号室の小太りの老人が、玄関で膝を抱えていた。こちらをギョロリと見下ろすと、しっしと追い払うような仕草をする。
赤い服を着た少女がエレベーターを降りた。歯の無いお婆ちゃんは花壇に何かを埋めていた。
カマキリが潰れていた。お腹は無事なようで、まるまると柔らかなお腹を頂く。団地の奥の工場跡からは、こちらを睨む複数の目があった。慌てて団地に引き返す。広場に向かうと、ペットボトルが地面に並べてあった。曇り空の下で、濁った表面が陰気な日を反射した。
小太りの老人は消えていた。
部屋に戻ると、ゴミ袋の山を越えて寝室に向かう。
今日もご飯は無い。
ベットの上でお父さんが横になっていた。ハエムシが飛んでいる。
床に溜まった汁を踏まないようにお父さんに近づくと、薄くなった頭皮に身体を擦り付けた。
早く起きて。
日が沈んでいった。




