表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

2021.6.19 九州大学文藝部・三題噺

あき

作者: ぜんざい

大学生活の傍らで自分を熱狂させているものがある。いつも通りの風景に、いってしまえばスパイスを降り注ぐようなもの。最近は、何故か香辛料の量がエスカレートしてやまない。


20分近くだろうか。なんの面白みのない山がある。美味しい山菜もない。どこが面白いのか。年寄り夫婦が出入りすることもない。だから、自分が行ってやらねばなるまいよ。


荒れた山道は、自分を焦らす。夏ぶりに、水分を摂取する欲求が、常に自分を追い詰めてくる。止めどないストレスが溢れるばかり。ああ、背中に背負った、死体も可哀想だ。早く捨ててあげたいところである。


辿り着いた先には、使用されていない神社らしきもの、この世界の綻びの最骨頂ともいえるがある。もう原型もないくらいに。でも自分はそれが、神社であることを信じてやまない。ああ、そろそろだ。どこか異質なものを感じさせる井戸がその神社裏で待っている。


「待たせてごめんな。」

背中に背負った死体を、丁寧に井戸に落とす。至って単純な作業である。

第一の仕事を終えて、爽快感、達成感、優越感など数多の感情が自分を溺れさせる。しばらく、その感情に溺れていた。しばらくして、曇り空を覗いた。昔から、いらなくなったものを不法投棄していた頃を思い出す。いつからだろう。こんなことを繰り返すようになったのは。本当の自分は弱い。誰かに見てもらわなきゃいけない寂しい人間だ。そんなときに、この場所に来たのである。再び、山の深部へ潜り込む。少し奥には、銅像がある。古すぎて、分かりづらいが、小さな女の子を模したような銅像である。大好きな、大好きな銅像だ。その銅像に今日のことを報告して、終わりだ。


「ない。ない。ない。」

いつもの銅像がいない。銅像がいなければ全てが終わりだ。銅像があったはずの場所は落ち葉しか見られない。怖くなって、ひたすら、その落ち葉を切り裂いた。落ち葉が落ち葉ではなくなるくらいまで。


その後、世間で、未成年で死体遺棄事件を多数起こしたとして一人の人間が逮捕されるに至ったようである。その人間は、拘置所で、ひたすら誰かに謝っていたそうだ。

「君を飽きさせて、ごめんね。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ