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23話

「ど、どうして?!」


 息子さんは食い下がってきました。

 だって自由きままな旅路に〝弟子〟だなんて、お荷物にしかならないじゃないですか。

 弟子は老い先短い人が未練やらなんやらを勝手に託すための道具。

 まだまだ未来のある美少女のわたしに弟子なんて必要ありません。


「俺頑張るし、雑用だってするし!」

「それが問題なんですよ」

「えっ……なんで?」

「わたしだってまだまだ強くなりたいんです。強くならなければならないのです。雑用も立派な修行なので、わたしが強くなる機会が減ってしまうじゃないですか」


 身体も魔法も使わなければ訛っていく一方です。

 魔法を使って火を灯したり、硬い殻を割ったり、逃げる生肉を追いかけたり、それがそのまま修行に繋がります。


「それに君はまだまだ子どもです。今のままではハッキリ言って邪魔でしかありません」

「…………っ」


 わたしはズバッと言ってやりました。

 息子さんも魔教徒や魔人(おくさま)を前に何もできなかったことが脳裏を過ったのか、何も言い返してはきません。


「旦那様のように一日中斧を振り続けられるくらいにはなって頂かないとお話になりません。できますか?」

「それは……」


 息子さんは言い返すことができず黙ってしまいました。

 細い腕を見ればわたしにだって難しいことくらいわかります。


「ならばまずは村のお手伝いをしましょう。それが息子さんに与えられた最初の修業です」


 怪我をした人の手当て。倒壊した家々の撤去や再建。他にもできることは沢山あるでしょう。それらは全て旅に必要で、強くなるために身に付けなければならないことが詰まっています。


「……わかった。村の手伝いを頑張る!」

「そうしてください」


 力強く頷く息子さんに、応援の気持ちを込めて微笑みを送りました。その後ろでは大人たちが村の復興作業をせっせと始めています。

 これ以上の長居は無用ですね。


「では、わたしは荷物を回収したら出立しようと思います。短い間でしたがお世話になりました。旦那様の手料理の味を、きっとわたしは忘れないでしょう」


 しっかりと日記にも付けておきます。メニューも、温かさと持て成しの心に溢れた優しい味も。くまなく。


「奥様の愛も、息子さんの覚悟も、わたしの心と記憶と日記帳に刻んでおきます」


 旅が終わるその時は、この日記を元に自伝でも出しましょう。


「旅人さん。また会える?」

「呼べば来るというものではありませんから難しいでしょうけど、雨雲を追いかけていればいつか会えるかもしれませんね」

「旅人さんは何者なの? 本当にただの旅人?」

「ああ、そういえばそこは伏せていましたね。今更なので暴露タイムです」


 食卓で話した内容ではわたしの正体は隠していましたね、忘れてました。うっかり。

 ずぶ濡れですが身なりを整えて、「雨も滴るいい女」パワーを上乗せしまして、恭しく一礼。


「わたしは旅する〝葬儀屋〟を営んでおります、ホワイトと申します。以後、お見知りおきを。その界隈では結構有名な美少女だったりするんですよ?」


 どや。




    ──終わり。

実はもう1話だけ続くんじゃ。

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