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21話

 代表して村長さんが集金し、それをわたしが受け取りました。にーしーろー……はい確かに、30万ありますね。毎度ありがとうございます。今回が初めてですけど。


「では、このダイヤモンドは息子さんの物です。こちらが奥様の、こちらが旦那様のです。大切にしてくださいね」


 息子さんにダイヤモンドを手渡しました。

 細工してリングに付けるなり、適当な入れ物に入れるなりできれば良かったのですが、裸の状態のダイヤモンドで申し訳ないです。そちらで良いようにしてください。


「それから、ご家族なのに相談もなく勝手にダイヤモンドにして申し訳ありませんでした。奥様の願いを叶えて差し上げるためにはこれしかないと思ったのです」

「母さんの願いって……?」

「『たとえ死んだとしても、一緒にいたい』と、そう仰られていました。悪魔に抗いながら、ずっと戦っていたようです」

「…………」


 心当たりがあるのか、息子さんは瞑目しています。

 奥様の魂と旦那様の魂はダイヤモンドとなって息子さんにずっとずっと寄り添ってくれることでしょう。

 息子さんは伝え聞いた奥様の言葉を噛み締めるように小さな手の平の上のダイヤモンドを見つめていました。

 透き通る景色の向こう側に、ご両親でも見えているのかもしれません。

 それはそれとして。


「村長さん。今後この村はどうなるんですか?」


 興味本位で聞いてみました。

 恐らくですが、息子さんのご両親──特に旦那様は村全体の稼ぎ頭だったのではないでしょうか。

 貴重な収入源が亡くなられてしまいましたし、魔人のせいで村のあちこちが引き裂かれ、壊滅状態と言っても過言ではありません。このままでは村は立ち行かなくなるでしょう。


「わかりませぬ。旅人さんのおかげで被害は最小限に抑えられたと思っておりますが、これ(﹅﹅)で最小限ですからな……」


 ボロボロになった村を見渡しながら村長さんが悲しそうに言いました。

 どれだけ長い期間をここで過ごしたのかはわかりませんが、村長なくらいですからそれなり以上の愛着があるのでしょう。

 悲しい気持ちになるのは理解できますが、時間は元には戻りませんから前を向いて、未来のことを考えて生きていきましょう。

 と、わかったようなことを思ってみたりして。


「ここは大切な場所ですから、やれることはやってみようと思っております」

「そうですか。頑張ってください」


 ちょっと冷ややかな対応になってしまいましたが、旅をしている以上よそ様にあまり肩入れするのは良くありませんので。


「他に亡くなられた方はいますか?」

「負傷者は多数いますが、幸い(﹅﹅)死者は──ンンッ! いえ、他にはおりませぬ」


 息子さんにキッ! と睨まれて、慌てて言い直していました。

 わたしはと言えば──


「そうですか、残念です」


 小声でしょぼーんとしてました。


「はい?」

「いえ、こちらの話です」


 誰かが死んでいればもっと儲けられたんですけど、負傷者は管轄外ですね。わたしの担当は〝死者〟なので。

 あ、さては忘れていましたね? わたしは旅をしながら「葬儀屋」を営んでいるのですよ? だから死者がいなければ儲けられないのです。

 覚えておいてくださいね?

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