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16話

 わたしは即座に手をかざし、握り拳を作るようにして魔法を発動。落石を砂粒のように圧縮します。

 べぎゃん! と音を立てて小さくなった巨岩を払い除け、視線を戻すと砂煙の向こうには魔人の気配はありませんでした。


「逃げましたか」


 近寄るのは危険と判断して砂煙が晴れるのを待ってから確認すると、壁に人一人が通れそうな裂け目があって、それがずっと奥へ続いていたのです。

 物理的に道を切り開いて逃げるとは、つくづく頭が強いんだか弱いんだかわからない魔人です。


「……いや、なるほどそうきましたか。これは一本取られましたね」


 悠長に呟いている暇はありません。洞窟全体が揺れて、天井からパラパラと小石が落ちてきています。今にも崩落しそうなこの揺れは魔人が引き起こしているものに違いありません。

 あの引き裂くような魔法を使えばこの洞窟を崩落させることなんて訳ないでしょう。


「まあ、その程度でこのわたしをやれると思っているのなら大間違いですけど」


 そして予想通り洞窟の崩落が始まりました。

 わたしは両手を広げて天を仰ぎます。地下ですけど。

 わたしの魔法をできるだけ縦に長く、広範囲に展開して──


「はい!」


 ──そしてパン! と勢いよく合掌。流石にこの量の瓦礫(がれき)を片手だけでは手に余ります。

 わたしの上に落ちてくる瓦礫だけに絞って、とにかく圧縮。地上まで繋がる大きめの穴が完成してしまいました。そこからはちょうど満月が見えました。

 気分はまるで井の中の蛙ってやつでしょうかね。

 そして月に重なり、大穴から覗き込む人影がうっすらと。


「ああなるほど、これが本命でしたか」


 思っていた以上の知性を持っていて、わたしは素直に感心してしまいました。

 地下水脈は崩落して、生き残るために頭上の瓦礫は何とかしたものの、それゆえにわたしの周りは瓦礫で塞がっています。

 つまりは逃げ道がありません。

 この状態であの魔法を放たれたら、(かわ)しようがありません。

 そしてもちろん、この状態であの魔法を放たない理由がありません。


「ならば、こうするまでです」


 わたしは壁を蹴り上げ、勢いよく駆け登ります。もちろん魔力(マギ)による補助も併用(へいよう)して。

 少し見て分かりましたが、あの魔法は座標を指定してピンポイントで発動する類の魔法のようです。つまり動き回って狙いを絞らせなければ滅多に当たることはありません。

 そのためにわたしを狭い空間へと誘い込んだようですが、この程度でやられるわたしではないのでした。どや。

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