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題名のない音楽祭 ~Konzert ohne ein Titel~  作者: 魔弾の射手
本章 Zur Genealogie der Molal
9/20

第5.00話 ~開進篇~


『続いてのニュースです。昨日未明、人種・年齢・性別を問わない世界的規模で現在判明している範囲で約一万名の人命が失われる事件が発生しました。原因は現在のところ不明で、死傷者の数に関しては現段階でも増え続けています。専門家からの聞き取りでは、未知の病原体を発端とする集団感染(パンデミック)の兆候ではないかと云う意見や小規模無差別細菌テロの可能性が示唆されています』


 先のぶつかり合いで一万の人間が世界中から消えた。ネットニュースに添付されていたニュースエンターテイメント番組の内容は、彼女たちの選んだ結末を如実に物語っていた。

 不思議とあの宴の記憶はないようだと妙な安堵を覚えたのもつかの間、その結果が意味するところを理解すると戦慄せざるを得なかった。

 たった二人が争っただけで一万人以上の人間が死んだのだ。そしてその犠牲の上で彼女たちは今も息をしている。普通に朝食を食べて、予定通り行われる運びとなった高校の入学式に参加する。

 老若男女、貧富貴賎の別も無く適当に、手の届く範囲の人間で陣取り合戦を行っていたような物。そのうえで、その犠牲を看過したうえで二人は決めた。生きるということを。


『政府関係筋の話では、死傷者に共通する点はなく、また世界的大規模で同様の事例が報告されており、同一犯若しくは同一思想に基づく犯人グループによる無差別テロではないかと危機感を顕にしています。しかし、平成細菌類研究所や病院関係者からの聞き取りでは死傷者に共通する点や生活習慣病などの類はなく、また死因の多くが自殺と判断できることであることが判明しています。これについてサイコセラピスト兼心理学者の秦理外先生からは世界的な集団催眠による同時多発的自殺行動ではないかとの見方を示しており、寄生虫学の権威、鬼勢以蔵先生からは脳に寄生虫が寄生し、何らかの理由によって統御している女王蜂のような役目の寄生虫が死ぬなどして同時多発的に自殺を遂げたのではないかとの見方が示されています』


 自分勝手な理屈の為に多くの命を弄んだのだ。その結果が今目の前に提示されている。


 誰かの家族が死んだのだろう。何処かの一家が死んだのだろう。

 恋人が死んだのだろう。夫婦が死んだのだろう。

 孤児が死んだのだろう。偉い学者先生が死んだのだろう。

 様々な立場、様々な理由の元に様々にこれまでの人生を生きてきた多くの人が死んだ。一万人以上。

 救いたかったなど思わない。人間を逸脱しても救いきることなどできないのだと彼女たちは身を以て身の程を知ってしまったから。

 人に言わせれば、それこそ無責任だろう。所詮彼女たちは己の無知を知り多大な犠牲のもとに人生を決めた愚者に過ぎないとしても。

 一般論で云うならば、死ぬべきだったのだろう。鷲宮准も御鏡弥生も。百人がそれを知れば、百一人が責任を果せと糾弾するだろうことなど容易に理解できる。


『まぁ私から云えるのはね、政権は何をやっているのかってことですよね。地球温暖化も全部自民党の責任ですから』

『地球温暖化も、ですか?』

『地球が自民党に怒りを示しているんですよ。つまりこれは自民党の責任ですよ』

『えぇと大原田畑さん、大分論点がズレてしまっているように思われますが……』

『だから自民党が悪いんですって。地球温暖化もデフレも仮想通貨インフレも新型プリウスミサイルもカ号超巨大標的通称カマタゴロウリュウの出現も、何でもかんでも自民党のせいなんですよ』

『いや、自然災害の発生は政権与党の責任ではないように思われますが……』


 アニメや漫画の主人公が羨ましいと今日ほど思った日はないと思った。

 いっそアニメや漫画の主人公のように開き直って屍の玉座に胡坐を掛ければどれほど良いことか。いっそアニメや漫画の主人公のように吐き気を催すほどの純白で要られればどれほど良い事か。

 あの後から御鏡弥生は流れゆく外の景色を虚ろに眺めて一言も発さず、鷲宮准の隣に腰を下ろしている。しかし繋がれた手はきつく結ばれ、まるで生きていることを確認するかのようで。

 今以て初めて鷲宮准は、人類補完計画を企画するような人間の心理が分かったような気がした。鬱々として惨憺として、人生そのものが暗礁に乗り上げてしまったような不安感が伴ってどこまでも墜ちていけそうな安定感がある。ろくでなしの発想だとわかった。


 人を殺すということの意味を考えなかったわけではない。自分たちの都合で人が一人も死なないなどと都合の良いことを考えていたわけでもない。だが何処かでそんな錯覚を得ていたことは事実だ。今までが散々、周囲の大人たちがお膳立てした中でやっていることだと知っていて。

 高々喧嘩でと思っていたわけでもなく、こんな簡単にと思っていたわけでもなく、いとも簡単に一万人以上の人間を殺してしまった自分たちの怪物さ加減に辟易としたくて出来ない。

 今はもうそんな力はないと頭で分かっていても、いつかはまた、若しくは自分たちの手で犯してしまうのではないかと思えば、己の軟で細い腕がまるで見たこともない巨大な怪物の剛腕のように錯視されてしまうのだ。


「――准」


 憂いを秘めた顔をこちらに向けて、徐に左のスカートのポケットから二つの小さなチャック付きポリ袋を取り出して、何も言わずに片方を彼女の右手に乗せた。

 カラフルなハートやらスペードやらの描かれた錠剤が数個入っている袋は妙な物々しさがあって、一週間で大分図太くなった自覚のある彼女が思わず息を飲んだ。


「うちのグループの病院が精神治療目的で扱っている物だから、比較的安全だよ。六時間おきに一粒。それ以上飲むと強い依存症状が出たりして最悪壊れちゃうからね」

「――こんなもの渡して、私にどうしろってんだよ」

「別に馬鹿にしているわけじゃないよ。辛くなったらって……」

「――お前私より頭いいのに、こういうところはホント馬鹿だよな」


 右手に渡された合成麻薬の袋を静かに突き返すと、弥生を安心させるように頬の筋肉を動かして見せた。上手く笑えているかなんてわからないが。


「まったくお前は、私がこんなの渡されてありがたがると思ったか? 二人してこんなの使ってみろ、後悔するのなんて目に見えているじゃないか」

「…………でも、怖いのは分かるよ。初めての時の僕もそうだった」

「そりゃそうだろ。初めて自分のせいで人が死ぬところを目の当たりにしたんだから、思うところがないわけない。そうだとしても、お前だって決めたんだろ。お前の意思で決めたんじゃないか」


 忘れようなんてわけじゃない。傲岸不遜に葬り去ろうなんてわけじゃない。かといって小説や漫画の主人公みたいに笑って人の死に胡坐をかくわけでもなく、薬を服用してでも現実逃避をしたいわけでもない。

 自分の意思で生きるとはそういうことであろうとも、忘れてはならないだろうし忘れていい立場にないことも重々承知の上で、楽な方法(MDMA)に縋るのも違う。それは想像の放棄に他ならない。

 昨晩、二人して盛大に暴走して決めたことではないか。生きようと。

 それは合成麻薬なんかで前後不覚になって惰性で生きるのとは違う。自分の意思で、自分の両足で地面に立って進むことだ。たとえそれが罪だとしても、たとえそれが罪の上塗りのような人生になろうとも。

 だがそうやって生きて、闘って、そうして得た心を誰かと分かち合い、親から子へ、子から孫へ、孫からその先へと。連綿と続いていく命の連鎖――それこそが永遠の命だと、それこそが人生だと今の彼女なら、そう胸を張って言える。


「お嬢様、私からも散々申し上げましたよ。鷲宮様はそんな物(MDMA)に頼るほど軟弱ではないと」

「――僕が間違ってた。ごめんなさい」


 顔を逸らしたまま都城美峰が助け船を寄越すようにツンと云い放つと、疲れたように笑んで頭を下げる彼女に、迷った。どのように返してやれば、お互いに気を揉まずに済むのだろうかと。

 いつも通りでいるには、たった一日二日で色々あり過ぎた。其れこそ友情が壊れても可笑しくないほどに。

 お互いに妥協しようとかでもなく、共犯者として一緒に生きようと、半ばヤクザ者がやるような手口で和解したような物で、一度離れた距離感をどうやって図ればいいのか考えあぐねていた。

 いつも通りでいるには不自然であろうともいつも通りをいつも通りに続けるしかないのだとは云われずとも分かっていたが、お互いがお互いに加害者となって愛憎入り乱れて、一度間を置かねばならないというのも分かっていて、じれったかった。


「お前が謝るなんて、珍しいこともあるな。明日は槍でも降るんじゃないか?」


 そういった指摘をする勇気もなく、関係を終わらせる気もなく――その答えはこれで十分だった。


「らしくなって来たね――――そんな准にはこっちをあげよう」


 MDMAの入った袋の代わりに、いつも通りの人を食ったような笑顔で手渡されたのは『世界の偉人の金言集』やら題された、少し厚めの本だった。

 洋書やらを平気で読むような幼馴染が珍しい物を読むものだと思いつつ、だがよく見れば特定個所に付箋が張られていて、ナ行の後半あたり、恐らくナポレオン辺りではないかと思いながら開いて最初の金言を読んだ。


 弱き人こそ薄情である。本当の優しさは、心の強き人にしか期待できない


 赤い蛍光ペンでなぞられた跡が残っていた。

 丁寧に、普段のおちゃらけた姿とは相反して変なところで几帳面な御鏡弥生らしく、定規で引いてそうな一本の蛍光色の線が引かれていた。

 無数と云っても差支えがない。様々な格言に線が引かれて、何度も読み直して擦り切れた痕を認めれば、彼女には片割れが何になりたかったのかを真の意味で理解させた。


 御鏡弥生は主人公になりたかったのではない。鷲宮准(主人公)のような主人公(鷲宮准)になりたかったのだ。


「なんだ、お前素直じゃないな」

「だってほんとに准は強いもの」

「私が強いんじゃない。云っただろ、お前の人生はお前の物だって」

「――それで戦えるのが強いんだよ」


 御鏡弥生の、多分に羨望を孕んだ呟きは、車の走行音に掻き消された。

 しかしそれは、妙に彼女の耳に残った。







 来客用駐車場に停まった黒塗りの車から出てきた二人はそのまま正門側へ移動し、教師の案内を受けた。

 今朝の騒動で急遽呼び出されたのだろうか、この寒空で教師の額には汗が滲んでいた。


 名簿と共に割り振られた教室に移動した彼女たちを待ち受けていたのは花瓶に挿された花の載せられた机と黒板に書かれた出席番号順の着席位置だった。

 十中八九、昨日の騒動で死んだ生徒だろう。入学式に参列するはずであった、この学校の新入生のうちの何十二んか、もしかすれば百人にまで上るのかもしれないが、彼らは今日と云う日を拝むことも出来ずに狂ったまま死んだ。

 事実としての死が、目の前にあった。彼女たちの見も知らない誰かが、見も知らない何処かで死んでいた。彼女たちが原因として君臨した中で。


 担任の自己紹介もそこそこに、昨日の混乱でクラスの数名が帰らぬ人となったことを改めて説明され、五分間の黙祷ののちに体育館に集められた。

 入学式で学年代表になっていたのは、御鏡弥生ではなかった。彼女たちの知らない誰か、昨日の夜、無作為の悪意に選ばれなかった運の佳い男の子だった。

 当たり障りも無く、脈絡しかなく、そして退屈で。これから先の人生のことなんて分からないのにこれから先の人生の話が、延々と校長や理事長の口から垂れ流されていく、良くあることだ。


『てっきりお前が学年代表になるかと思っていたよ』


 音響効果(ハウリング・)・音階螺旋(エコーロケーション)。即興で作った音響効果とか全く関係ない能力。ただ自分の思考を相手に直接伝える、トランシーバー的な何か。

 突然の直接伝わる声に、御鏡弥生はいつもの人を食ったような笑みを張り付けたまま冷静に答える。


『校長も理事長もうちを敵に回したくないから学年代表にならないか聞いてきたけど、僕は学年代表だかそういった物に興味はないし、自分の実力以外で手に入れたものにも興味はない。誰かに席を与えられることほど屈辱的なものはないよ。だから僕よりもこういったことが好きそうな子に任せた』


 アニメやライトノベルの主人公みたいに、高尚なことを述べて死を乗り越えていくことはしない。背負えもしない。謝罪することも出来ない。かといって知らない振りも出来ない。

 彼女たちが息をし続ける限り、生き続ける限り、償うことすら許されずに傍観者を気取ることも許されずに目の前に鎮座し続けるのだ。


『恐ろしいな。法人の理事会が怖がるって、お前の影響範囲ってどれぐらいあるんだよ』


 罪を上塗りながらでも良いじゃないか。誰も知らないなら、特定の派閥の人間たちしか知らないなら、大多数が知らないならそれでいいじゃないか――そうやって生きていくと決めたのだから。


 ある種の完全犯罪と云っていい。誰もその犯罪手法を解明することが出来ないのだから、犯人の特定など特定の派閥に属していない限り不可能で、限りなく真似できようない方法を用いての犯罪なのだから、完全犯罪と云っていい。

 だからと云って暗く生きるつもりもない。一生を懺悔に費やすつもりもない。

 罪を背負って生きる、そんな格好良いことを云って誤魔化しているわけではない。云っていることは同じでも、生きる覚悟を決めた、ただそれだけなのだ。

 家族への不義理だとか、あらゆる人に心配をかけたとか、世界の人口の10000分の1を一夜にして殺してしまったとか、そういった罪を償うでも戒めるでもなく、誰に後ろ指を指されようとも生き続ける。終わりがやってくるその時まで。

 ただ今まで通りに、これまでよりも強く、誰かを守るためではなく自分の為に――御鏡弥生が鷲宮准の同位体であるならば、鷲宮准もまた人らしい弱さと冷たさを持つべきなのだ。御鏡弥生が決意した様に。


『最小でも、この県全体。この県って他県の指定暴力団とかが居ないでしょ? これは逆なんだ。海外マフィアや他県のヤクザがいないんじゃなくてね、居付かせないんだよ、この僕が。だから事実上、この県全体は御鏡グループのホームグラウンドと云うことになるね』


 しかし聞けば聞くほど、馬鹿げた規模を誇るものだ。


 鷲宮准は御鏡弥生にすら聞こえないように独り言ちる。

 御鏡弥生の実家は、例え御鏡弥生が超能力者でなかったとしても十分に楽な人生を歩める土台が整っていた。人生の勝ち組とすら称して良いだろう。

 これ以上にないほどに、少なくともこの県内において御鏡弥生に勝てる人間はいない。個人であろうとも、集団であろうとも、軍であろうとも、特殊部隊であろうとも。県全体が御鏡家の要塞と化している。

 どうせこれで終わりはしないのだと知っている。御鏡弥生に代が移ってから急激な勢力拡大が図られていることも知っている。


『最大だと?』

『国会の与野党両方にそれなりの数、うちの息のかかった人間が潜んでいる。他県のヤクザにも、警察組織にも、検察庁にも、自衛軍にも。あらゆる公共にうちの息が掛かっているよ。うちはほら、表向き資産家だから』


 資産家だからではなく、御鏡家の情報網と金と人と――各方々があらゆる弱みを握られているのだ。都城美峰が先代以上の武闘派と呼ぶだけはあって、母親である御鏡皐月よりも凄烈なまでに過激だ。

 地位があるゆえに不自由だとは云うが、これほどまでに力があれば自由さと不自由さのバランスは取れているだろう。そもそも、御鏡弥生は自由が好きなのだから。

 何かに縛られるのが嫌いだ。何かを強要されるのが嫌いだ。何かで面倒くさくなるのが嫌いだ。

 それはともすれば能力の根幹にすら関わってくる要素だったのかもしれない。しかしそれでも御鏡弥生は風来坊を気取れない風来坊で居続けようとした。


『人生楽だな』

『つい昨日、脱イージーモードしたけどね。これからは今まで以上に本気で生きていく。折角生きていて良いって云ってくれる友達が居るんだから、期待には答えないと』

『はぁぁ…………警察もヤクザも政治家もひっくるめてあらゆる力を持っている人間のことをなんていうか知っているか? 無敵って云うんだよ』


 とんでもない友人を持ってしまった。

 呆れ果てて言葉も出ない彼女に対し、御鏡弥生は終ぞ笑みを崩さない。御鏡弥生らしさとかではなく、その姿はまるで自分の為してきたことを誇る子供のようだと、彼女は思った。

 無邪気で無垢で、悪意も無く善意も無く、ただ自分の為に。独善的だし誰彼構わず迷惑をかけまくっているが、これが御鏡弥生の素なのだろう。

 そろそろ四十分にもなる校長の長い話は、終始自分語りで退屈だった。


 話すこともなくなってきたところで、彼女は先延ばしにしていたことについて聞くことにした。

 朝ベッドで目を覚ました時から不思議でならなかった。彼女の左腕は完全に死にきり蘇生は効かない。

 御鏡弥生の真の能力、死刑執行人の断頭鎌は死神の力と云っても過言ではない。それに睨まれた瞬間に死なされる。死ぬ運命になかったとしても死ぬことを強制される。つまり有体に云えば命を奪い取る。

 他ならぬ親友の手によってそうされたのだ。側だけを再生しようが結局中身を作ることは不可能だったように、どれほど御鏡弥生の才能喰らい(リヴェンジェンス)の簒奪王(・ベガーブング)と鷲宮准の才能再定義(カヴァレリア)の贋作王(・ルスティカーナ)が万能なように見えても、世界を流れる法則を捻じ曲げきることは出来ないのだということをいやと云うほどに理解させた。

 しかしながら鷲宮准はひと悶着合った昨晩、正しく死ぬような目に合い実際に失血性ショックで死にかけたのだが何の因果か今も元気に生きて、普通に左腕を使って生活していた。

 御鏡弥生の根幹となる狂気的な邪念や破壊衝動を吸い出し消滅させ半ば封印したも同然だから起こった結果が巻き戻った、などと都合の良いことを考えてもいたがその結末は車内で見た通りだった。

 御鏡弥生がまた(・・)元に戻っても結果が巻き戻るなんて都合の良い事象の改竄は起こってはくれなかったようで、ならばつまり鷲宮准の左腕もまた死んでいて然るべきなのだ。

 その割に彼女は普段通りに目を覚まし顔を洗って朝食を食べ登校の支度をし家の前で待っていた御鏡家の黒塗り高級車(ロイヤルサルーンG)に拉致られるまで何の違和感を持つこともなく生活できていた。それこそまるで生身のように。


『なぁ弥生……私の左腕は死んだんだよな』

『そうだね。うん、間違いなく准の左腕は死んだ。左腕の消耗限界、つまり寿命と云う概念を奪い取って即座に死滅させてしまったから』

『じゃあ、私の左腕についているこれ(・・)は何なんだ?』

『有体に云えば、義手かな。外皮には人間とほぼ同じ物質で構成された擬装外皮を施したうえで内部骨格に軽量なアルミを七割とタングステンとチタンセラミック複合材を三割使用した複合素材を成形した代物を使っているけど、神経系には本人のDNAから培養した人工筋繊維と疑似神経が通っているからレスポンスはこの手の義手の中では比較的良好。日常生活には支障がないはずだよ』


 一見して生身の左腕と大差ない風に見えるそれが、実はすべて人工的に作られた物であるなど嘘のようであったが、何でもかんでも貪欲に研究開発している御鏡グループならあり得ないことでもなさそうだと思える当たり、自分も大分毒されているなと妙な感慨を覚えた。

 指先から感じられる温度や触った感触全て生身のそれと大差ないのに全てが人工的に作られ後付けされた部品なのだというのも感慨深い。偽物の感触と云うわけでもなく、本物なのに間に仲介業者を挟み込んだことによる違和感なども無い。

 気持ち悪いくらいに本物。本物過ぎて気持ち悪い。偽物が混ざれば気持ち悪くなるとはよく聞く情報だが、これではまるで真逆。全くの正反対。

 御鏡弥生は他人の手を借りることで人工的に人体を錬成してしまった。本当ならば超能力でとっくに出来たであろうことを遠回りな方法を用いて。そんな疑問にすら論理的回答が用意されていることが良く分かっているから何も言わない。

 彼女たちの超能力はなんにでも成れてなんにでもは成れない。一長一短、得手不得手の問題だけでなく、ただ単純な話器用貧乏。

 御鏡弥生は超能力に依存した生活は送らないと決めているし、鷲宮准もまた“なんにでも成れてなんにでも成れない超能力”の危険性を理解しているからこそ過度な期待はしないし依存した生活形態をとらないと決めている。

 裏方から様々な業界を資金面でプロデュースしている御鏡弥生に曰く、きっとこういう理由だろう。


 超能力でやれることを人間がやれない筈がない。人はそうして不可能を可能にしてきた。

 科学技術や数学的手法でアプローチできることなら尚更人間にやれないことはない。

 結論、超能力なんてなくたって人間社会は回っているんだから、自分たちがやっているのはスラロームを描くA地点からB地点への瞬間移動、若しくはショートカット(経路の短縮)に過ぎない。

 そんなことも含めて、聞かずとも大体の見当はついていたが、改めて本人から言われれば信じざるを得ない。


 やはり左腕は死んでしまったのだ。


 認めたくはなかったが、完膚なきまでに死んでしまったのだ。

 厳然とした事実として、彼女は隻腕になっていた。いや、正確には限りなく本物に近い義手が付いているからには隻腕ではないのだろうが。

 不意に視線を御鏡弥生の横顔から逸らした時、神経質そうな男と目が合ったのは、見間違いであってほしいと思った。そんな鷲宮准に気付いているのかいないのか、御鏡弥生は続ける。


『あの後急いで用意させたからまだ完全には完成してないんだ。最低でも三か月に一回メンテナンスが必要で、繋げるときには大分痛むよ』

『…………まぁ、片腕で生活するよりはましさ。痛いのに比べれば、断然ましだ』

『ちなみにだけど、まだ調整が完璧じゃないから始業式が終わったら道上(どうがみ)総合福祉技術研究所に――――』

「こらそこ、私語は慎むように!」


 ヒソヒソ声も無く元から静まり返っていた体育館内に、神経質そうな男の甲高い怒声が響き渡ったのは、御鏡弥生が鷲宮准の義手の調整云々の話を終えようかと云う瞬間だった。

 校長のありがたい様なそうでもないような、既に二時間にも及ぶ無駄に近いお言葉を遮った神経質そうな教師は、真っすぐに鷲宮准の瞳を見返している。

 不快な、まるでガラスとガラスをすり合わせたかのような生理的な不快感の伴う甲高い声が何も返せず唖然とする鷲宮准を狙い撃ちにするが、しかし鷲宮准はそんな些事(さじ)に驚愕したのではない。驚愕するべきは先ほど神経質そうな教師が自分から暴露してくれた。


 聞かれていた。本来は外に漏れ出ず脳内で全てのやり取りが行われるはずの能力が、あの神経質そうな男には傍受されていた。

 濁ったような瞳は工事の騒音や同世代の暢気そうな声に悩む受験生のようで、他の教師が何事かと彼に詰め寄るが、彼はそれに気が付いていない。彼にとってはそれが正常(・・)だからだ。


「落ち着いてください暮戸先生。生徒たちは皆静かに聞き入ってくれていましたよ」

「いいえ、特にあの二人ですよ! 進学クラスの御鏡と鷲宮です! 二人してコソコソと――他の生徒だって……!」

「分かりました、分かりましたから落ち着いてください」


 木や花が陰口を叩いている、人や動物がラジオのように聞こえる、あの物陰にブギーマンが逃げ込んでいくのを見た。

 統合失調症患者が高確率で宣うという言葉の一覧に以上のようなものがある。脳内をジャックした、世界中の人間が自分を盗聴している、などといった誇大妄想もそれだ。

 彼はまさしくそういった存在だった。

 別に統合失調症だとかいう話ではなく、本当に彼の中ではこの体育館内は騒音で満たされていたに過ぎない。

 人の口に戸は立てられないとは云うが、人の思考機能を制限する事もまた常人には出来ようもない。たとえ頭が空っぽに見える人間も何かしらを考えていることは往々にしてある。

 彼女たちと同様の、人の範疇を軽く逸脱してしまった逸脱者、はみ出し者。例えば常人が皆150Mhz~200Mhz帯のラジオを聞いているとした場合、超能力者は300Mhz帯のラジオ放送を受信しているような物。

 それは即ち知覚する視野、認識できる領域が先天的か後天的に拡張された人間であり、常人ではないがゆえに違う階層に属する物を違う階層の識域であれば受信できる。それは一種の超感覚でもある。

 彼はそういった物(・・・・・・)を受信してしまっている。宛ら木や花がラジオのように、人や動物がスピーカーのように。あるべきでない音は増幅されて彼にだけ届くように。そうして生きてきたから不自然に気が付かない。それが彼にとっての正常(・・・・・・・・)だから。


 天然物の読心能力者(サイコメトラー)

 対超能力者集団(アンチスキルズ)や堺境とも、ましてや鷲宮准と御鏡弥生の両名ともまた違う、自然発生的に生じた超能力者。

 ――鷲宮准は初めて本物の超能力者に遭遇した。


 だが一瞬疑問符が浮かんだのも事実。

 読心と名が付くからには心を読むのではないのかと鷲宮准は思ったのだが、直後にその疑問も氷解した。御鏡邸にある小難しい本に在った内容だ。

 心とは脳内のセロトニンやシナプスなどの伝達物質の活動によって作られる、と云うのが医学的な模範回答。脳内に存在しながら階層的に違う場所に位置する非存在物質であり、確かに存在しながら物質として観測不能とされる。

 故に心とは脳である、と云う通説がまかり通り幅を利かせる。故に心を読むとは思考を読み解く、と云うことと同義であるのだ。







 結局有耶無耶のうちに入学式は終わった。あのまま話を続けるほど神経が太くなかったのか、校長の話はあのままお流れとなり、恙無く、と云うほどではないが入学式は終わらざるを得なかった。

 保護者説明会と並行してそれぞれの教室で説明会が行われたのち、初回と云うことで授業も無く、程なく解散。彼女たちを除く他の生徒たちは一目散に後者の外へ駆け出して行った。目的は彼女たちと同じだろうことは、言うまでもない。

 御鏡家と鷲宮家の合同写真となったのはある種の必然であった。

 有体に云ってしまえば幼馴染。ずっと続いている仲良しこよしだから親も釣られて仲良くしている。家族ぐるみと云えば聞こえはいいかもしれない。

 

 校門では案の定家族写真の列や場所の取り合いが起こっていたが、それを制したのは鷲宮聖――鷲宮准の父だった。

 下らない言い争いに、しかし鷲宮家の誰も、そして御鏡家の誰もが鷲宮聖が勝つと確信して、参列した誰かの親が鷲宮聖の怒髪天を突いた。

 相手の首根っこを引っ掴んで校舎裏に連れ込み数分。己の父親が何をしているか分かってしまい恥ずかしさやら何やらが混じって顔を赤くしていると、同じクラスにいた男子――先ほど鷲宮聖の怒髪天を突いた父親の息子だが、彼がいつの間にか鷲宮准のすぐそばまでやってきていて、徐に謝った。

 言い訳とかも無く、ただ迷惑かけてごめんとだけ。鷲宮准自身気にしていないことであるし、校舎裏で今頃行われている猥褻物陳列大会を考えると逆に彼女の方が謝りたいくらいだった。

 この彼が、卒業までの三年間の腐れ縁になるだとは、この時の彼女が知るはずもない。


 平賀(ひらが) (げん)と名乗った彼が鷲宮家の諸兄と御鏡家の諸兄に挨拶を済ませてしまうと、そもそもの目的だったのだろうか――鷲宮准を狙い撃ちするかのように話しかけた。

 それをまるで面白い物でも見るように御鏡弥生がニヤ付いて見ていたのだけが、彼女には妙に気になった。


「迷惑かけてごめん」

「いや、そんなことないよ。と云うかこっちこそごめん」

「え、なんで?」

「多分今頃君のお父さん、打ちのめされてるから――うちの父、妙な悪癖があって……」

「へ、へぇ――」


 その変な癖とやらが大通りでは絶対に云えない内容だなどと、口が裂けても云えない小心者加減に、そして早くも自分たちの犯した過ちを忘れかけている暢気さと異常な鈍さ(・・)にそうとは悟られない程度に辟易とした。

 階層が一つ上がるとは、超感覚によって人を辞めるとは、そうした痛みから鈍くなると云うことでもある。

 痛みや苦しみと云ったものは主体者の身に危機が迫っているという信号である。それに鈍くなるとは、即ち死を意味する。その痛みを感じなくなったら最後、死ぬしかなくなる。精神的にか、それとも肉体的にか。

 お互いが死ぬ寸前を行き来し合ったから、


 片や殺し屋家業を継ぐ前に人間的に終わって、


 片や見当違いな英雄気取りに打ちのめされて、


 …………そうして彼女たちは人間を辞めていく。痛みに鈍くなっていく。痛みが分からないから、鈍くならざるを得ない。常人よりも振るえる暴力の桁が上がるにつれて。

 下手すれば目の前の彼のことすら、家族のことすら他人として認識できていないのではないかと――


「大変御見それいたしました――まさかあんな立派な物をこさえていらっしゃったとは――世界は中々広い物です」

「いやいやそんなことはありませんよ。あなたのも中々の物でした。あ、そうだこちらお一つどうぞ。この前出張で南アフリカに在る男性しかいない村と女性しかいない村に商売に行ったのですが、その時に買ったものです。これを根元に強く、きつく巻き付け日々の鍛錬を欠かさなければもっと太く大きく育つと、地元のシャーマンから聞きましてね。私も毎日これを巻いてトレーニングしているんですよ」

「おおそれは素晴らしい。このご恩は必ず返します」


 そんな頭を駆け巡る不穏な思考に割って入るようにして、鷲宮聖の長身ともっこりと膨れたジーンズの股間部分が見えた。またやったのだ、猥褻物陳列大会(巨根コミューン)を。

 何を隠そう彼、鷲宮聖は稀代の巨根――それも自身の身長の半分もある巨大な根っこを持つ男であり、困ったことがあれば取り敢えずその大根っこを勃起させることで武器にしてしまう悪癖を持っている。

 大きすぎて敵う人間など男性は愚か女性にもなかなかいない。どちらもあまりの巨大さに打ちのめされ敗北してしまう。

 この巨大な根っこを見せ合う勝負を彼は巨根コミューンと呼んでいるのは余談だろう。

 呆れと共に、しかし彼女は思った。自分が道を踏み外すことは、この家族がいる限りはあり得なさそうだと。

 超能力を先天的か後天的に手に入れた者は、多かれ少なかれ踏み外しやすい。

 御鏡弥生に曰く、ガス爆発として報道される事件の一割は突発性爆轟現象(パイロキネシス)の類であるという。

 猟奇殺人の一割に満たない数は精神感応系能力であるという。

 意図的か意図的でないかの違いだけで、その多くは踏み外すという。それは何故か――


 超能力なんて(こんなもの)、余程家庭に問題があって精神の均衡を保つためにおかしくならざるを得なくなったか

 それか若しくは本人が元からおかしい潜在的な殺人者(サイコパス)か、そのくらいしか原因がないからだ


「おお、源。こちらは鷲宮聖さんだ。彼は中々素晴らしい人でな、俺が井の中の蛙だったことを思い知らされたよ――あ、聖さんの奥さん、先ほどは大変失礼なことを云ってしまいました。大変申し訳ございませんでした。いやいや、聖さんが素晴らしければ奥様もまた大変すばらしい!!」

「ありえない――あの自己顕示欲と傲慢の塊みたいな親父が、人に尊敬と敬意の念を持つなんて…………」

「聖さん、またですか? 大学時代から変わりませんね」

「まぁまぁ皐月、その方があいつらしいよ」


 いつの間にか黒塗りの高級車(ロイヤルサルーンG)で駆け付けたらしい御鏡夫妻も加わり、場は一層混迷を極める。

 鷲宮聖(父親)は御鏡出雲と大学時代の話で盛り上がり、御鏡皐月と鷲宮洋子(母親)は平賀母と雑談しているし、入学式が先送りになった鷲宮茜と臨時休業になったとぼやいていた鷲宮誠に鷲宮霞も駆けつけて、当然の帰結のごとく御鏡弥生も鷲宮准も撫で繰り回される。

 思いついたと云った具合に一層ニヤけ面を深くさせた弥生が()に耳打ちし、姉を経由して()に耳打ちすれば、三人してニヤついて平賀源と見比べ合う始末。

 とりわけ長姉と長兄の方は普段から仲が悪い癖に、悪巧みの方向性は二人して共通で、絶対にろくなことにならないという予感がしていた。

 それぞれの家族全員がそろえば最終的にこうなる。騒々しくて傍迷惑で何よりも他人のことなどお構いなし。

 自由過ぎる人間が溜まって自由に振舞えばこうなるといった具合で、兄と姉の暴挙から逃れるためか彼女の腹に顔をうずめていた(末妹)を引きはがしつつ御鏡弥生に顔を向ければ、銭形警部もかくやといわんばかりの不思議な格好の男と真剣な顔で話し込んでいる。

 薄情なことに、どうやら半身は助けてくれなさそうだった。


 その点においても、彼女たちは異常だった。片や人工的に生み出された断頭台、正義の柱ボワ・ド・ジュスティス。片やそれが変質して生まれた自浄作用、自滅因子(アポトーシス)

 片方の家庭に問題は数多く山積すれど、概ね本人たちは幸せだ。片方の家庭にも問題はそれなりに在るが、概ね不幸に思ったことはない。

 仮に踏み外すことがあったとして、そんなことを鷲宮家の人間のだれも望まないし、そんなことをすればまた殴り合いの喧嘩が勃発する。そうしてなんでも解決してきた。これからもそうするつもりだ。

 御鏡弥生も、一回目は無理やり踏み外された。二回目は鷲宮准と共謀して踏み外した。三回目はありえない。御鏡弥生と鷲宮准を知るすべての人間が、きっと踏み外させない。そして何よりも――彼女が許さない。そうしないで済むようにする。これからも。


「お話は終わりましたでしょうか? どうせですし平賀様方も左横に並んでください。あ、お嬢様方とご令息様は真ん中で。5秒後にシャッターが下りますので奥様、隣失礼いたします」


 そう、彼女は御鏡弥生に曰く、お人好しらしいから。


 そうして踏み外していながら踏み外しきることもなく人生を歩み続けるのだろう。二足の草鞋をそれぞれ交互に履いて。

 ある種の不幸なのかもしれない。でもそれでだって、幸せにはなっていいはずだ。これまでの分も、これからの分も。そんなことを宣っていい身分ではないことなど重々承知で。




 それにしてもだ――


「何でこんなことになってるんだ…………」

「良いんじゃない? この方が楽しい(・・・)じゃん」

「……俺こんな大人数で写真撮ったの、初めてだ」


 周囲からの迷惑そうな視線を意にも介さず、写真の中の全員、この時ばかりは幸せそうな顔をしていた。

 過去とは決別した。過去を思い出すことが必要なことであったならば、過去の柵から解脱する事もまた必要なことだった。

 両方をこなしてなお明日への扉に希望の日差しはないが、だが幸せであることに違いはない。正相関しない希望と幸せの二律背反こそ人生なのだろう。鷲宮准は笑顔の裏でこの幸せを噛み締めた。誰かがいて、友達がいて、家族がいて、絶対的に彼女たちは悪人なのかもしれないが、今この瞬間は幸せであっていいはずだと思えたから。

 鷲宮准も御鏡弥生も取り返しのつかない偉業――ともすれば時代が時代なら英雄とされるような偉業を成し遂げたが、そんな結末に満足していない。

 犠牲者の責任は負えないが、しかしその上で幸せになるべきなのだ。犠牲者をたんまりと出して置きながらのほほんと宣っていい様な台詞では断じてないが。だがそれでもと云い続けるしかない。

 だから傲慢でも笑おう。笑っていればいつか良い事の一つや二つはあるさ。無ければ作ればいい。今のこの瞬間のように。


――死ななくてよかった

 生きてくれてよかった


――喧嘩してよかった

 死ななくてよかった


――この世界を選んでよかった

 世界に絶望しなくてよかった


――罪と罰は、誰が用意してくれるんだろう

 幸せになるしかない。殺し尽くした分まで


――それでもこんな化け物を人間だと胸を張って云える友が羨ましい

 道を踏み外すと人間を辞めなきゃならないなら、私たちは人間で良い




――人間って、やっぱりいいな……

――私たちは人間だ。人間で沢山だ




 遠大な遠回りを続け乍ら、彼女たちは彼女たちで幸せの方程式を見つけた。

 それは御鏡弥生が最も嫌う中身の(トライ)伴わない総当たり(アンドエラー)型学習法に他ならないが、偶にはそうして良いこともあるものだと。

 お互いが何を考えているのか、腐れ縁(親友)だからなんとなくわかってしまう。そんな些細なことに幸せを覚えながら、御鏡弥生はこれまでの人生で初めて、心からの笑顔(・・・・・・)を浮かべた。


 だから、訣別した過去は要らないから、新しい未来へ進もう。その先が地獄であっても。




 彼女たちの人生は、高校生活の幕開けと共に新しく進み始めた。








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