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08:名前なんてわかりません!

嬉しいかな悲しいかな。

目が覚める頃には私は初期ボディになっていた。

つまり、ボディなしってことだけど。


まったくあの男の考えていることがわからない。

そのうち自分の体をいじくりまわすんじゃないかなって思ってる。

あー、怖い。

想像できるってほーんと怖い。


ああ、しばらくはああいう色はごめんです。

自分では見えないけれど紫色っぽいらしい私の初期ボディ。

うん、いい色じゃないか。肉感なくて。

普通は青白いらしいけどそれでもいいよ。

普通じゃなくたって全然いい。

だってここで一応保護してくれてるわけですし?

肉が欲しいなんてわがまま言わない。

...本当は欲しいけど。

自由に歩ける足と色々扱える手が欲しい。

あ、それぞれ単体じゃダメだよ、当たり前でしょう。

あの不格好な切断面はもう忘れられないわ...。

ダメだ、ダメだ。

考えたらダメだよね!さあ忘れましょう。


...って忘れられたらどんなに楽なことか!!!


別の事を考えようにもこの狭い籠の中のではその対象もほとんどないわけで。

結局同じ事を考えてしまう。

もうやだ。

ジェルどこ行った?

まあこねくりまわす手はないんですけどね!!!

確かにあれは投げたくなる気持ちわかるかもしれない。

きっと今の私と同じ精神状態なんだろうね。

多分、絶対。


なんて考えてたら視界の端にジェルが居た。

震えてる。

...声に出してたかしら。

というか言葉通じるの?


まあ問題ないよ、だって私ここから出られないし。


とか思っていたらいつの間にかジェルはどこかへ消え去った。

怖がらせたかなぁ、申し訳ないや!(棒読み)。

私もやってみたかったなぁ!スパーキング!

あ、これダメかな?ハイ、すんません。(棒読み)



骨が今のところ1番良かったよ。

短い間だったけど全身パーツがあるっていいね。

歩き回れる足が欲しい...。


...フリじゃないよ。

足だけとか嫌だからね。

それを眺めるための鏡も要らないからね。

足が好きだとしても単体は嫌だろ?

え?そうでも無い?


...うわぁ。


なんて勝手に変態さんと話してる風に仕立てて勝手にドン引きしてみた。

それくらいしかやることが無いんだ仕方がない。


えー、だって異世界転生ってもっと忙しい物じゃないのー?

次から次に襲いかかる難問にチートで勝つんでしょ?

...めんどくさいから今のままの方がマシか。

私そう言う主人公気質じゃないんで。

むしろ主人公気質とか無理なんで。

主人公よりモブが好きなんで。

え?聞いてない?だろうね。


さて、脱線しまくったけれど今回の議題はあれなんだよ。

骨ボディの話。

ほら、インテリアよろしく置かれているあの身体。

よく見てみるとさ着いてるんだよ。


腕が。


え?なにそのアップデート。

嫌なんだけど。

なんで両腕だけ生々しいのさ。

他は骨だぜ?

切断面見せるんじゃねぇよ。

筋肉の切断面なんて見たかないんだよ。

ハムで十分です。

あ、豚肉でお願いします。

個人的に鶏ハムもいいけどちょっとパサつくよね。

鴨ハムはいいぞ。


なんてすぐに脱線したくなる今日この頃。

私これ何か知ってるよ。

現実逃避って言うんだって。


はあ...いやだ、あんなもの視界に入れたくないのに入ってくる...。

目を閉じればいいでしょ?って思うじゃん?

閉じれねぇんだな!目なんてないし!

塞ぐ手もなければ向ける背もない。

あー不便。

生活の対価は不自由だったかー。

...まともな生活してない気がするけれど。


だってほら、ふっと意識が落ちて眠ったら身体がアップデートされてたりダウングレードされてたり。

よくわからないけど眠くなるんだよね。

食事も排泄も必要ないからその辺もなくていいんだよね。

安全は守られているのかな、多分。

貴重な被検体ですし?

...自分で言うと悲しくなるな。


仮に外が剣と魔法のファンタジーなら私多分瞬殺だよね。

サバイバル方面には強いだろうけど弱いと思うよ。

種族:魂、個体名:なし、Lv0とかだと思う。


魂は種族じゃないな。


ってそろそろつっこんでくれる気がするんだけどなぁ。

チラッと籠の外を見たら...居た。


「つっこんで欲しかったのか。」


そりゃそうだ。

一人問答は寂しいからね。

と言葉にはしないでじっと見つめ返す。

...多分。


「個体名はジェイケイとやらだと思っていたのだが。」


「あ、それ違う、なんて言うの...えっと、職業?」


そうか、職業か...と呟きながらメモをとる男。

個体名だと思われていたのか。

でも覚えていないんだよなあ、私の名前。

うーん、ちょっと切ないね。


「Lv0はあながち間違いではないだろう。」


感傷に浸る私にトドメを刺したのはそんな言葉でした。

...もういいふて寝してやる。




鴨ハムって美味しい。

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