07:それは五体満足ではありません!
眠って歩き回って知らない文字とにらめっこして男と喋りまた眠る。
なんの変化もないだらけた日常を繰り返してた。
割とその生活は苦ではなくここでずっとだらけて人生終わるのかなぁなんて考えが頭をよぎった。
...いや、人生はもうとっくに終わってたわ。
でもまあそんな毎日続くと思ってた。
思ってたんだ。
その日目覚めた私は、また鳥籠の中だった。
「...なんで!?」
マイボディの骨が骨格標本よろしく部屋の隅に立たされている。
ああ、肉がないから気に食わなかったとかわがまま言ったけど慣れたらまあちゃんと機能してたよねマイボディ。
食事も排泄も必要ない楽なヤツだったよマイボディ。
あ、それは今も変わらないか。
それにしても久しぶりの魂状態は動きにくい。
マイボディが恋しい。
骨だけでもあるだけマシだったなぁ。
五体満足ってなんて幸せだったんだろう。
なんて愚痴る事しかできない私は哀れな籠の鳥。
...それにしても本当に動きにくいな、なんで?
足のないこの身をどうやって動かしてたっけと試行錯誤する。
...転けた、起き上がれない。
泣いちゃう。泣かないけど。
...って、え?転けた?
「地に足ついてないはずなのになんで転けるの!?」
視界はまっくら。
だって地面とこんにちはしてるから!
起き上がれない!?なんで?え?なんで?
と1人パニックになっていた。
「ふむ、自立に難あり、だな。」
ヤ ツ が 来 た !
「その口ぶり、絶対何かしたんでしょ!?」
くぅ、私にヤツを殴る手があればきっともう手を出している。
骨は折れそうで暴力には向かないけどせめて手があれば...!
「手ならあるじゃないか。」
...はい?
男は私を立ち上がらせると鏡を用意した。
いややけに凝ったオシャレな鏡だな、おい。
そこに映っていたのは...。
「これ、わたし?」
なんと美しい手でしょう。
色白なお肌はすべすべで爪までツヤッツヤ。
いや割と綺麗な手って好きだよ。
好きだけどさぁ。
「なんで手だけなんだよ!?」
なんで?なんで?
肘から先の手が自立してんの怖すぎる。
切断部分見たくない!
あれ、だいたいなんで見えてんの?
目どこだよ、前もなかったけど更に謎でしょこれ。
なんで会話出来てんの!?意味わかんないよねぇ!?
だいたい手だけじゃあってもあんたを殴れないでしょ!?
いや殴るとは限らないけどさあ!!!
なんでそう五体満足に1度近づいてから離れて行くんだ!
指が5本で五体ってか?
そんなかぞえ方はしないだろ!!
「手はどの道必要になるだろうと思ったのだが。」
「確かに大事だけどね!!」
違うんだ、ちょっと違うんだ。
「ほら、左手もあるぞ。」
手だけが身体から離れてそこにあってどうするんだ。
そうか、私は右手だったのか...なんて考えないからね普通に!
気分は頭を抱えて後ろに仰け反ってる感じかな!!
あ、やば、本当にまた倒れそう...で。
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
見えた、見えた、ちらっと見えた!!!
世の中には見ない方がいい物もあるんだなぁって思いました、まる。
しばらくおにくたべたくない。
...食事必要ないけど。
そうして意識を手放した。




