04:ドロドロとか拒否します!
ふと気が付けば私のおうち…なんてことはなかった。
相変わらずの暗い部屋の籠の中。
何が悲しくて囚われているんだか。
…まぁ放り出されたら出されたで何もできないのだが。
まだ敵意のない場所で飼い殺される方がましかと結論付けた。
自堕落に暮らすぞ~なんて意味のない決意をする。
寝る、動く、喋るくらいしかできることないけどね。
娯楽…頼めば何か出してくれそうな…。
いやいや、やっぱりやめておこう。
斜め上の発想をされそうだから。
考えながらぐるぐる回る。
ん?これ結構スピード出るくない?
ふはははは!私は風になるんじゃぁ!
…なんて。
脳がないから知能も落ちたのかしら。
目を回すこともないしそのうちバターになるんじゃないかな!?
どろっどろの、ほら、視界の端にさっきから映ってる…。
「なにこれ気持ち悪っ!」
いつの間にか回るのをやめてその物体Xを睨みつける。
赤紫色のドロドロした…なにこれ、ヘドロ?
光沢のないスライム状の…異臭はしないけど…いやほんとナニコレ。
じぃっと眺めていると急に動き出して。
「こっっわ!!!」
ぎょろっと目玉が現れた。
ひとつだけ。
やけにきれいな色をしてるのがムカつく。
綺麗な翡翠の目なのにヘドロのだなんて信じられる?
気持ち悪いわ怖いわ何なのこれ。
幸い檻の中には入れないっぽいから観察できるんだけどさ。
…代わりに私も出れないんだけどね!
嫌だよう…っ気持ち悪いよう…近づけないでよう…。
うっ、泣きそう。涙腺どころか目もないんですけど。
「そんなに気に食わないか。」
いつの間にかあの男が戻ってきていた。
まさか傍にこいつ置いたのお前か?
「ああ、私が置いた。」
なんでこんな気持ち悪いの女の子の傍に置くんだよおお!
泣くぞ?普通の子は泣くぞ?
「…そうか、愛玩生物なんだがなぁ…。」
そう言いながら謎の生物?をこねる男…。
え?そんなにこねるの?
中身は??中身…ねぇ!!!
「目玉どこに行ったのよ!!!」
そう叫べばこねられるのをやめられた物体…生物…?がまたぎょろりと目玉を見せた。
「あんだけ潰されてなんでその目玉は無事なのよ!」
「確かに考えたことはなかったなそれは。」
考えたことがない…。
あれだけこねておいて…。
恐ろしい奴だわ…。
「これは元々そういうものだ。
こねられるだけの愛玩動物のジェルだ。」
「そんなペットあるかぁ!?」
やだよかわいそうだよこねられるだけの生物とか。
「こねることを推奨されているが時折壁に投げつける輩も存在する。」
やめたげてよおおお!かわいそうになってきたよ。
「ちなみに仮の肉体としてジェルっぽいものを作ろうとしていたところなのだが…。」
「絶対いや。」
ごめん、かわいそうとは思うけどそれになりたくない。
いや散々気持ち悪いとか言ってたけど…うん、やっぱ無理。
「…そうか、ジェルはやめておくか。」
丈夫なんだがなぁ…とつぶやく男にはっきりと拒否の姿勢を見せる。
こいつのセンスに任せたらロクなものできないぞと内心焦る。
嫌だようもっとかわいいのがいいよう。
なんて思ってたらジェルと目が合った。
そんな綺麗な目で私を見ないで!!!
そうだよね君だってそう生まれたかったわけじゃないもんね。
「ちなみにジェルは長期間こねるのをやめるとストレスで死ぬ。」
「なんでだよ。」
てっきりよくあるファンタジー的なスライムの位置にいるかと思ったが違うようだ。
なんだよこねないと死ぬ生き物って。
敵じゃないのかよ。
「スライム...もしや形状はジェルとよく似てるが目玉を持たず酸や魔法を飛ばし物をとかして吸収するアレの事か?」
「そうそうそれよそれ。別物なのね。」
少しは異世界生物(?)を知るべきなのかもしれない。
目玉がないなら私はそっちをこねたいし。
「アレはとても触れんぞ。
ゲルと言って幼体ならまあそんなに強くは無いが...知能はまるでないから見境なく動く物を襲うからな。」
「えげつない!!!初心者に優しくない世界!!!」
私の発言を理解できないと首を傾げる男は
「間違いなく初心者向けのモンスターではないからな。」
と言い放った。
え、初心者用モンスターじゃないの?
理解が及ばない世界もあるんだなって私は少し大人になった。




