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03:眠っているのか?

また、ひとり考え込んでいたと気づく。

ふと彼女の方を見てみればどうやら休眠状態のようで。


「...眠った、のか?」


相も変わらず綺麗な紫色ではあるものの

先程愚痴を言っていた時よりも少し淡い色合いを見せている。


イレギュラーすぎるその魂を眺めながらふと【異世界からの放浪者】という言葉が頭をよぎった。


無いとは言いきれない。

特に、我が国では。

我らが女帝がそうなのではないかと言われているのだから。

女帝が公言したわけではないからあくまでそういう噂止まりではあるが信憑性は高いとのことである。


ある時ぽつりと現れたという女帝陛下。

彼女に害意のある存在は入れないという謎の地に人が済むようになり、やがてディムガロンと言う国となった。

驚くべきはその寿命の長さである。

最も寿命が短い人間族、その次に長い獣人族は置いておいて。

それよりも遥かに寿命が長い精霊族、翼人族、魔族であっても彼女の()()には届かない。

それ故に彼女は悠久女帝と呼ばれる。


曰く、安寧の土地を神霊との契約で得た代償で死ねないだとか。

曰く、外なる世界から来た影響で寿命という概念がないだとか。


言い伝えにもならない噂レベルの話ばかりがまとわりつくそんな存在。


国が平和であるのは女帝のおかげであるのは間違いないから存在を確認できた訳でもない神霊よりもよっぽど崇拝される対象である。


元より寿命が長く欲求が知識欲全振りなどと揶揄される我々魔族にとっては政や戦などに興味があるわけもないので実にありがたい君主である。


...また脱線していた。

これは悪い癖だとわかっているが考え出すと止まらない。

これから暫くは喋る同居人(魂だが)がいるのだから少し改善した方がいいのかもしれない。


彼女が居たのは失われし国アンゲルスの【世界の穴】の傍。

女帝なら何かしら知っているかもしれないがそんな答えをいきなり見に行くような行動は面白みに欠ける。

死霊術という学問において珍しく新しいことを知ることができる機会をそんな無駄に終わらせたくはなかった。


何よりこの綺麗な魂は綺麗なだけでなく実に面白い。

喋る、愚痴る、眠る。

どれひとつ普通ではない。

本人は発言と心の声を分けているつもりなのだろうが発声器官のない状態でどう喋っていると思っているのだろうか。

()()()()()であるというのに。

これを言えば口を噤んでしまうかもしれないから黙っておくと決める。

魂に口などないがな。


そうだ、暫くは口など作るまい。

そう思いながら手の中のものを捏ねる。

足が欲しいという要望は聞いてしまったからいずれ作るとして。

考え出したら思いの外楽しくなってきたのかもしれない。

ココ最近は面白みに欠けていたがこれはいい拾い物をした。

せっかくだから暫くはむき出しのままで観察するか...それとも入れ物にとりあえず入れてみるか。

そんなこれからを考えると自然と顔は笑っていた。

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