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第6章:明確な対決と不明な横槍ー003ー

 真琴(まこと)の言葉の意味をすぐに理解した(かえで)であった。


 刀を抜くべく腰へ手をやった女性に、コルトブローニング系の重火器を構えるゴスロリの少女。最後の青年は両手に糸玉を握りしめている。正面には戦斧を振るう代理人体がいた。


 魔女付きの楓と真琴は取り囲まれていた。


 楓は己れの迂闊さに苦笑を浮かべながら、いちおうといった調子で訊く。


「あたしら追ってきたことを、いつから気がついていたの」

「ホテルを出た時からよ。正確に言えば行く前から無事に帰すかどうか疑っていたから、あらかじめいくつかシミュレーションを立てて置いたの」


 答えた彩香(あやか)が酷薄な笑みを浮かべる。帰りの疲れた顔も途中でカフェに寄ったのも、計算のうちということだ。


「す、すごいです、彩香さん」


 素直に感嘆を挙げた円眞(えんま)に、こちらへは好意的な笑みを向けた彩香だ。


「こいつら、えんちゃんや雪南(せつな)に気を取られ過ぎたのよ。私らをナメすぎたってところかしらね」

「そうかもしれない。でもだからといって目的は変わらないわよ」


 言い終わった瞬間に楓が飛びかかってくる。普通の人間ではあり得ない跳躍力を以って、彩香の頭上へ至った。


 危ない! 円眞はどもらず叫んだ。両手に銀色の刃が光る。


 円眞は発現させた刃を翳した。

 彩香に、ではない。

 雪南へ、であった。


 雪南の首元に差し出された円眞の刃は跳弾の固い音を奏でた。


 円眞! と雪南は呼び叫ぶ。


「誰かが狙ってきているみたいだ」


 弾丸が飛んできた方向へ、円眞と雪南は目を向けた。ビルの屋上からライフルを構えた黒服の人物が見える。

 彩香に薙ぎ払われた楓ばかりでなく真琴まで、不意を突かれたような顔で狙撃した方向を確認している。二人もまた事態を飲み込めていなそうだ。


 雪南が「あいつら……」と小さく呟けば円眞の顔を見ずに言う。


「あいつらはワタシが引き受けるから、後は円眞たちに任せたぞ」


 ちょ、ちょっと、と円眞が呼び止めるも素通りだ。

 雪南は飛んでいってしまった。


 円眞としては雪南を追いたいところだが、目前の事態が許さない。

 再び頭上からきた襲撃者に対し彩香が袈裟懸けを決めていた。

 肩から腰元にそって、文字通り切り裂かれた楓だ。しかし二つに分かれた身体は、頭の付いている方が引き寄せて何事もなかったかのようにくっ付いていく。尋常でない復元力だった。


「噂は本当だったのね。魔女のお付きにはゾンビもどきのバケモノがいるって」


 彩香の指摘に、表情を変えない楓だ。


「そうよ。何の因果か、化物よ。でもこんなあたしでも流花がいたから、存在できた。だから流花を悲しませるモノは排除させてもらう」

「ついもらい泣きしそうになったけど、よくよく考えてみれば身勝手このうえないじゃない。あんたたちの都合で振り回されるほど、この街の住人は甘くないわ」

「言うことはもっともだわ。だから伝えておく。あたし咬まれたら、従僕だから。意味、わかるわね」


 言うことが本当ならば、彩香はゾンビにさせられてしまう。危険性を天秤をかけたら、円眞としては雪南を追っていけない。

 円眞は発現させた短剣の刃を伸長させた。逢魔ヶ刻(おうまがとき)のみに増長させられる能力だ。夕陽を照り返す刃は、楓へ向けて一直線に向かっていく。


 楓が後方へ避け飛んでいく隙に、円眞は彩香の下へ駆け寄った。


「あ、彩香さん。相手の言っていることが本当なら厄介だよ」

「そうね。でもえんちゃんが来てくれたから。ふたりでの攻撃なら活路は充分に見出せるでしょ」


 彩香が聞かれないよう円眞の耳元へ囁く。

 うなずく円眞の表情からは自信のほどが窺えた。


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