チートの報い
「ジャンっ、ケンっ、ポン!」
給食の時間。
それは休んだ田中って子の給食を巡っての争いの場。
ロールパンは大食いたちに譲った。
しかし、デザートのプリンは譲れない!
そんな思いを胸に秘めた小西という少年は順番を待っていた。
このクラスには希望者が複数いる時はジャンケンで勝敗を決するというローカルルールが存在した。
大体他のクラスも同じなため、わざわざローカルと付けなくとも良いと思うのだが。
そしてロールパンの権利を獲得した大食いの奴が去ったあと、デザートの番が来た。
大食いは早く欲しくて、つい目先の物に跳び付いてしまう。ローカルルールにより一度じゃんけんに参加した者は他には手を出せない。だからこそ狙い目なのだ。
「それでは次! プリンが欲しい人は?」
「はいッ!」「ハイ!」
小西少年の他にも手を上げる者がいた。「ちっ、小林め~」と唸る小西少年。
狙いが被り、当初の不戦勝で手に入れる目論見が破れる。
因みにロールパン争奪戦に破れた大食いたちが悔しそうにデザート争奪戦の参加者を睨んでいた。
そんなことはいいとして、この日のために小西少年は兄ちゃんから伝授された奥義でもって「勝ってやるッ!」といき込んでいた。
そしてジャンケンの試合が始まった。
「ジャンっ、ケンっ、ポン!」
小林はグー。
小西少年はグーチョキパー。
「……」
「よっしゃー、おれの勝ちだー」
「ちょっと待ってくれない?」
「負けた言い訳か?」
「何故、それで勝ちなの?」
「これはグーとチョキとパーがそれぞれこことこことここにあるだろ。だからこのパーの部分でおれが勝ったんだ」
「ふ~ん。じゃあ、このチョキの部分はあんたの負けでグーは相子だから一勝一敗一分けじゃないの?」
「え? ええ?」
小林の論理に頭がパニックになる小西少年。
「どれが強いか教えてくれたら、そうするよ」
「い、いや。でも……」
兄ちゃんが教えてくれた裏技がっ、と頭が真っ白になりながらも小林の言うことも納得できてしまう素直な小西少年。
「あと十数える間に決めてね」
「あ、えっと……」
「ひとーつ、ふたーつ、みっつ、よっつ……」
期限が決められ、なおさら焦る小西少年はどうすればいいか考える、が無情にも時は過ぎる。
「5、6789、10。はいお終い。私の不戦勝」
「な!? ずるいぞ!」
「どの口が言うのよッ! 先にずるして勝とうとしたくせにッ! 反則でプリン没収でもいいんだよ」
「ぐっ……」
小西少年は小林の正論に打ち負かされました。