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79(EX) まさかの事件です!〈後編〉

かなり日にちが開いてしまいました。

申し訳ないです。


ある程度リアルのほうも落ち着いたので、更新頻度は上がると思いますので、よろしくお願いします!

(さて、と)


カナの元へと戻ってきたミカは、再び祈るふりをしながら、横目でちらりとカナを見る。

そのカナは、一心不乱に祈りを捧げていた。


それを見たミカは、どうしたものかと考え始めた。


(解呪みたいな魔法はまだ知らないし、かといって単純に殴ると声をあげちゃうかも)


となると、カナの口をふさぎながら、太ももをつねるというのが、一番良い方法なのではないだろうか、とミカは閃く。

あまり時間をかけるわけにもいかないので、何かをぶつぶつとつぶやいているカナの口をふさぎ、ミカはカナの太ももを普通に痛い程度につねった。


「んっ...」


「...」


ミカがつねると、カナは頬を染めてびくりと体を震わせた。

頬を染めたその顔は、確かに痛がってはいるのだが、どこかうれしそうでもあった。


ミカはドン引きであった。


「はっ、ここは...?」


「...」


その直後、カナは正気を取り戻したが、ミカはカナを直視できなくなってしまった。

そして、こう思った。

一体どこからこうなってしまったのだろう、と。


「ま、まあそれはいいとして...カナ、さっさとここから出るわよ」


「は、はい」


この問題はセフィアに丸投げすることにしたミカは、ここで得た情報は宿に戻って、4人で考える方が良いと判断した。

カナはそれにしっかりと従い、ミカの服に触れる。


(ほんと、どこからこうなっちゃったのかしら...)


そう考えながら、ミカは泊まっていた宿を思い浮かべるのだが、ミカの考えていることが分かってしまうメイドのカナは、少しだけ頬を赤く染めていた。










「ここにいるのだろう!」


「おりません!」


宿へ戻ってきたミカたちを出迎えたのは、ドアを必死に抑えているセフィアと、それを無理やり開けようとしているのであろう衛兵の声だった。

鍛えているはずの衛兵がなぜドアを開けることができないのかは不明だが、セリナも珍しく手伝っているので、そこに理由があるのだろう。


このままセフィアやセリナに声をかけるのはなんだかよくない気がしたミカは、カナにこれからのことを小声で相談する。


「さて、ここで話すわけにもいかないし、どこか落ち着いた場所に『テレポート』しましょうか」


「そうですね、その方が良いと思います。ですが、落ち着いた場所となるとどこになるのでしょう?」


ミカの意見に賛成ではあるカナだが、では実際に落ち着いた場所とはどこなのだろうかという疑問が出てきたようだ。

それを問われたミカは、自分で発案したにも関わらず、特に名案は出てこないようだった。


「...実家、とか」


最終的に絞り出したのが、元もと住んでいた家だが、自分自身で口に出したにも関わらず、ミカは困った顔をした。


恐らくだが、ミカが実家、ジェイナの家に帰ることは、ジェイナは歓迎するだろう。

しかし、ミカは家を出たばかり。出たばかりなのに、すぐに帰るのはどうなのだろう、とミカは考えているようだ。

カナやセフィアはそんなことを考えないので、ミカがどうして困っているのかは理解できないようだが。


うーん、うーん、と唸っていたミカだが、やがて決心したのか、ジェイナの家へ向かうことを決めたようだ。

その顔を見て、行くことを決めたのが分かったカナは、すぐにセフィアに伝える。


「わかりました。ですが、私はここを離れられそうにありません。申し訳ありませんが、セリナさん。私の服をつかんでいただけますか?」


「ん」


ミカではなく、セリナの名前を口に出したのは、衛兵にミカがいることを悟られないためだ。

とはいえ、ばれたとしてもここからはすぐにいなくなるので、あまり関係はないのだが。


ミカ以外の3人はすでに何かしらでつながっており、移動する準備は万端だ。

一方、ミカは、置いてあるミカたちの道具をすべて『コンバート』している最中だ。

意外と小物が多く、一帯を収納できるわけではないので、いちいち『コンバート』しなくてはならない。


「...よし、これで最後!」


ようやく全ての私物等を『コンバート』し終えたミカは、カナと手を繋ぐ。

そして、全員何かしらでつながっていることを確認し、『テレポート』で実家に戻った。


その瞬間、扉を抑えていたセフィアがいなくなったことで、一気にその扉が開け放たれる。

それと同時に、衛兵の男も転がり込んでくる。


「いたた...いきなり力を抜くな、せめて何か一言...ん?」


衛兵は転んだ痛みに顔をしかめながらあたりを見渡したが、そこには誰もいない。

衛兵の顔が一気に青ざめていく。


自分がさっきまで話していたのは、開けようとしていた扉を抑えていたのは、いったい誰だったのか。

そもそも、ここに泊まっていたはずのミカたちに、本当に自分は会っていたのか。

全て、夢だったのではないか、と。


「...帰って寝るか」


結局、衛兵は、一度帰ることにしたようだ。

ここ最近で多発している事件のことで疲れているのだと結論づけて。










「帰ってきたわね」


「はい。そうでございますね」


ミカたち『テレポート』したのは、ミカの部屋だ。

恐らく、ミカが帰ってきたのは、外にいるジェイナも気づいているだろう。


「まあでも、別に言う必要ないし、いろいろと状況をあなたたちに説明したら、移動しましょうか」


「お嬢様がそれでよいのであれば」


「ん」


ミカはとりあえず自分のベッドに腰かけ、セフィアは紅茶を準備するため、部屋を出る。

この時点でジェイナにばれるのではないか、と予想するものなのだろうが、ミカは気づいておらず、また、セフィアとカナも、ミカが座れば何か飲み物を準備するのが当たり前となっていたため、何も言わなかった。

ただ1人、セリナだけが、大丈夫なのかと口を開きかけるが。


「...すやぁ」


ミカの隣に座って、ミカの肩に頭を預けて寝始めてしまった。

彼女の中での優先順位的には、睡眠が勝っているらしい。


肩に乗ってきたセリナを優しく撫でるミカは、この後ジェイナが部屋に突入するなどとは思っていなかったのである。











「それで、結局見つかってこうしてお母様と一緒に夜ご飯を食べているわけだけど」


「それでそれで、何か面白い話とかなかったの?」


部屋に突撃してきたジェイナはミカが話を挟む暇もなく一方的にまくしたて、そのまま夕食を一緒に食べる約束まで取り付けた。

今この場には、ジェイナとミカしかいない。

残りの3人は、ミカの部屋で待機している。

ミカとしては、全員で食事を楽しみたいのだが、ジェイナとしては、久しぶりの親子水入らずで食事をしたいのだろう。


(まあ、わからなくもないけどさ...セフィアたちも、メイドである自分たちは一緒には食事できません、とか言い出すし)


唯一、メイドでも何でもないただの友達であるセリナもいるが、彼女は食欲と睡眠欲さえ満たせれば後は基本どうでもいいようだ。

そこに何となく思うことはあるが、だからと言って何をすればいいのかなどは何も思い浮かばないのだが。


「面白い話...特にはなかったような」


「そんなぁ! 素敵な人との出会いとかは?」


「...う、う~ん、どうかなぁ?」


ジェイナの少女的思考に若干押されながら、ミカは当り障りない会話をしていく。

久しぶりの家族との会話が当り障りのない内容、というのも変な話だが。


(しょうがないじゃない。意識しちゃうと、普段どんな話をしてたのかなんてわかんないんだし)


しかし、ミカのそんな悩みを知らないジェイナは、次から次へと話題を引っ張り出していく。

話をしているジェイナの顔は、本当に楽しそうだった。

なぜそんなに楽しそうなのか。それはわからないミカだったが、その顔を見ていたら、こっちまで楽しくなるような、そんな気持ちになっていた。

恐らく、アーリアはこういうところにひかれて、一緒になったのだろう。


そして、ミカはなんとなく、言いたくなったことを口にした。


「...ね、お母様」


「うん? なあに?」


「...ありがとう」


その感謝の言葉に、どんな意味が込められていたのか。

ミカ自身にもよくわかっていないが、悪い気分ではなかった。


「...ええ。どういたしまして」


ミカの感謝の言葉に、一瞬目を丸くしたジェイナだったが、すぐに優しい笑顔を浮かべて、言う。

だが次の瞬間、その笑顔の顔は一瞬で崩れ去り、今度は涙を流し始め、ミカに抱き着いた。


「わっ、お母様?」


「さみしい」


「...」


ミカは、いったいどうしたものかと考えていたが、そこで、少し酒の匂いがすることに気がつく。


どうやら、ジェイナは酔っていたようだった。


(いったい、いつの間に飲んでいたのやら)


ミカは、おいおいと泣き出したジェイナを慰めながら、明日のことについて考えを巡らせていた。












「お嬢様、お酒を飲まれたのですか?」


「いや、私まだ未成年...って、そういうのないんだっけ」


ジェイナを寝室に寝かせ、リビングを片付け、ある程度ひと段落するとミカは自室へと戻っていた。

そんなミカを出迎えたセフィアは、おかえりなさいませ、といった直後に、遠回しにお酒臭いといった。


そんなセフィアの後ろから、カナが顔を出す。


「おかえりなさいませ、お嬢様。この後はどうなされますか?」


「そうね...とりあえず、お風呂に入って、すっきりしたいわね」


「かしこまりました。お湯はすでに溜まっておりますので、こちらへどうぞ」


カナはそう言い、脱衣所へ向かう。セフィアはタオルと着替えを持ち、そのあとに続く。

こうして改めて見ると、、役割がちゃんとあるのだなぁ、とミカは感心していた。


ちなみに、セリナの役割は体内時計。間食に関しては普通に駄々をこねることもあるが、昼食や夕食に関しては、その時間になると報告する。

セリナの体の中では、どれだけ動こうが、どれだけ黙っていようが、同じ分だけカロリーが消費されるので、狂いはないそうだ。


人間なのだろうか、とミカはたまに思うことがあった。












そして、ミカは風呂に入りながら、セフィアとカナの2人に説明をしていた。

もちろん、2人にもお風呂には入ってもらっている。


かなり拒否されたが、ミカが半ば強引に入れたのであった。


「なるほど、そういった背景があったのですね」


「ということは、私も...」


「だけど、私は平気だった。それがどうしてなのかは、いまいちわからなかったんだけどね...」


あの時、とりあえず助けることしか考えておらず、同時に、他の人を調べるなどとは考えていなかった。


カナが両手でお湯を掬いながら口を開いた。


「でも、お嬢様の魔法なら調べられたのでは?」


どうやら、カナ、それにセフィアも、同じようなことを考えていたらしい。

今までなら、私を何でもできる人だと思ってる?と言えたのだが、今回ばかりはそれができたかもしれないのだ。

ミカは、反論できずに渋い顔でうなずくしかできなかった。


「まあ、あの町にはもう立ち寄らないのだし、気にすることはないでしょ。衛兵に詳しく話そうとも思わないし」


ミカは優しいが、決してラノベの出てくるような主人公のように、立ち寄った村を解決して旅をする気はない。


セフィアは、顔を真っ赤にしながら、ミカに続けて言う。


「私たちは、お嬢様についていきます。たとえ、世界の果てでもでございます」


セフィアの言葉に、カナも大きくうなずく。

その言葉を嬉しく思うと同時に、ミカは立ち上がる。

それに合わせて、セフィアとカナも立ち上がり、先に出る。


「それじゃ、明日の朝に出発しましょうか」


ミカの一言に2人はうなずき、その日は就寝した。


寝る場所に関してだが、セフィアとカナは、セフィアのベッドで、ミカとセリナはミカのベッドで寝た。

その時なのだが、セリナは抱き着き癖みたいなのがあるのか、ミカは夜中に抱き枕状態にされ、夜中は悪夢を見たという。



次回は普通に本編を更新します。

しばらく〈EX〉は書かないかと...

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