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75(EX)私の中ではバレンタインデー、です!

(EX)とは、ifの物語として考えていただければ幸いです。


ifの中では、ミカの家には両親、そしてセフィアとカナが暮らしていることになっています。


今のところ、これからの(EX)の話に家族以外のメンバーが出る予定はありません。

「ばれんたいんでぇ、ですか?」


「そうよ」


2月10日。

ミカは、自宅から馬車を走らせ、セフィアと共に街へと出ていた。

ミカには、母であるジェイナの相手をさせているので、2人のみでの外出だ。

父のアーリアは夕方には帰ってくると聞いていたので、早いうちに戻らなければいけない。


そして、目的は、カカオ、もしくはそれに似た物を入手すること。


(本当なら、セフィアかカナに買ってきてもらおうと思ってたんだけど、知らないかもしれないし、それに代わるものの判断がつかないかもしれないのよね)


そんなわけで、ミカは色々な店を物色して回っているのだが…。


「むぅ…ないわね」


「お嬢様の言う『カカオ』…というものがどのようなものなのか、よく分かりませんが、確かに聞いたような形状のものはありませんね」


「そうね…」


そして、ミカはついに叫び出す。


「粉☆バナナ」


「お嬢様?」


「なんでもないわ。それにしても、困ったわね…」


ミカは、歩きながら顎に手を当てて考える。


そもそも、初めから無理があったのだ。


「私が覚えてるのは、色とか形とかだけ。カカオをもし仮に見つけられても、それをどうするかも知らないんじゃ…」


「それでは、意味が無いのでは」


「……うるさいわね」


ミカは、セフィアの的確なツッコミに目を逸らしながら、続ける。


「セフィア、チョコってしってる?」


「ちょこっと、のちょこでしょうか」


「違うわよ。…まぁ、その様子だと知らなさそうね…どうしましょ」


ついに、ミカは道のど真ん中で立ち止まって考え始めた。

それを見たセフィアは、ミカの肩を掴みながら、道の端に寄せる。


ミカは、家からここまで来た馬車を待機させている方向を見た。


「まだ時間的には余裕があるけど…これ以上いてもねぇ…さすがに見切り発車過ぎたかしら」


「ですね。お嬢様から聞いたものに類似しているものならば、自宅にありますが」


「……あるなら先に言いなさいよ」


そんな流れで、ミカとセフィアは馬車へと戻り、家へと帰って行った。













「お帰りなさい、2人とも。何を買ったの?」


「何も買っていません…お母様」


「あ、あれ?」


家に戻り、玄関の扉を開けたミカを迎えたのはジェイナ。

この異世界の中でもかなり美人の部類に入る彼女が笑顔を浮かべて、ミカに聞くが、その血を受け継ぐミカはげっそりとして、何も、と答えた。


そのまま部屋に戻ったミカを見送ったジェイナは、セフィアに理由を聞いた。


「私のミスです。私が知り得ている情報を先にお嬢様に言わず…」


「……まぁ、これであの子も学んだわよ。先にあるものを見てから買い物に行くものだってね」


そもそもそれは日本でも同じようなものなのだが、美香だった頃のミカは、大人ではなくまだ学生だった。

買い物は自身でしたことはあまり無く、そもそも出かけることもなかった。













「さて……どうしたものかしら」


セフィアに案内され、自宅の食料が置いてある場所に着くと、そこには大量の物資が置かれていた。


いくら成長が早い体とはいえ、大人であるアーリアでも、縦に2人分はあるだろう。


「そして、私が似ていると言ったものは、ここの奥に…」


「ああ…そう…」


セフィアがそう言いながら奥に進むのを、どこか光を失ったような目で見るミカ。

一体どこから、この物資を手に入れたのだろう。


(まさか、国から!? 国からなの!?)


と、ミカが脳内であーだこーだと考えている間に、セフィアが奥から戻ってくる。


「こちらが、私の言っていたものなのですが…」


そう言いながら、セフィアは手に持っていた籠をミカの前に出す。

ミカは顔を覗き込み、匂いを嗅ぐと、目をカッ、と開いた。


「この匂い…まさしくチョコ!」


だが、ミカが嗅いだ匂いは、日本のコンビニで売っている明〇だとかのチョコレートによく似ていた。

この世界でも、この加工方法は確立されているのだろうか。


ミカが不思議に思っていると、セフィアが説明をし始める。


「こちらは最近作られたばかりのもので、新人の食の研究家が作り上げたようです。名前は『チェコ』だとか」


「それは国…いや、もう何も言うまい」


ミカが国、と言ったところで、セフィアが首を傾げる。

それを見たミカは、そこでなんでもないと言い、チョコもとい、チェコを手に取る。


(間違いなく、これを作ったのは日本人…チョコを作ったものの、元の世界にバレるのが怖くて名前を中途半端に変えたのかしら。逆に堂々と出した方が良かったんじゃ)


ともあれ、これでミカの目的は達成できそうなことは確かだ。


ミカは、チェコをセフィアが持っている籠に戻すと、セフィアと共に調理室に戻ってきた。


「それじゃあ、適当に作りましょうか」


「はい、お嬢様」


例によって、ミカの考えていることを汲み取ることができるセフィアは、次にミカが何をしたいのかを理解し、作業自体はスムーズに行われた。


ただ、チェコをどう溶かすのか、溶かしたところで、型はなど、色々と問題はあったのだが。













数時間後。


「完成よ!」


「お疲れ様です、お嬢様」


ミカの目の前には、綺麗なハートマークのチョコもとい、チェコが4つ並んでいた。


それを見たセフィアが、不思議そうな顔でミカに聞く。


「お嬢様、こちら、なぜ4つ作ったのですか?」


セフィアやカナが、ミカの考えていることを汲み取れるとは言っても、それは常時そうしている訳では無い。

メイドとは、主のプライベートにメイドの独断で踏み込んではいけないのだ。


ミカは、セフィアの質問に笑顔で答える。


「もちろん、お父様とお母様。それに、セフィアとカナの分よ」


「私たちの、ですか?」


ミカのその言葉に、セフィアは目を丸くする。

それも当然である。

主がメイドに贈り物をするなど、聞いたことが全くない訳では無いが、珍しいことには変わらなかったからだ。


しかし、セフィアはすぐに笑顔を浮かべ、ミカに礼を言う。


「ありがとうございます、お嬢様」


「あ、でも、味はあんまり期待しないでね?」


そしてその日の夜。

夜ご飯の後にミカは、魔法で冷やしておいたハートマークのチェコを4人に渡し、全員が、ミカに笑顔で礼を言った。


そしてミカは。


「ちなみに、今日はバレンタインデーって言って、今きらちょうど1ヶ月後の3月14日は、その時のお返しをしなきゃいけないから、期待していますね!」


笑顔でそう言い、部屋へと戻って行った。


ジェイナは、どうしようかとニコニコしながら考え、アーリアは本気で悩んでいるようだった。

その時口にしていた、『次は体を守る…鎧なてどうだろう』というのを聞いたセフィアは、後でミカに伝えようと思ったのだった。


カナはと言えば、まずチェコを貰ったことに感動して涙を流し、必ず最高のものを返すことを誓っていた。


三者三様な反応を見たセフィアは、ミカから貰った、丁寧に包装されたチェコを見ながら、笑を零して呟いた。


「お嬢様から貰ったものを返そうと思ったら、一生で返しきれないかもしれませんね」


はい、遅れました()

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