74 あの時見たことのある顔です!
はい、お久しぶりです()
イベントはイベントの投稿をしようと思っていたのですが、気づいたら節分終わってました。
なので、バレンタインを明日、投稿しようと思います
「お嬢様、お知り合いですか?」
ミカの表情から察したセフィアが、ミカに訪ねるが、ミカは首を横に振った。
「いいえ。知らないわ」
(例え知り合いだとしても、関わりたくない人には変わらないでしょうね。さっさと逃げたいけど、魔力が足りないわ)
ミカが逃げようと考えている中、その男は面倒くさそうに首に手をやりながら、片目を閉じながらミカを見た。
「おや…そこの方は?」
「ああ、俺の娘だが…さっき負けたところだ」
実際には、セリナの介入があったので、卑怯だと言われればその通りなのだが、アーリアは、どうやら負けを認めているようだった。
男は、アーリアが抑えている手を見て、納得したように頷いた。
「それでは、あの方は僕が相手をしましょう」
「……すまんな、アキラ」
(アキラって…名前の割には、ヒョロい体ね。モブキャラ代表みたいな感じかしら)
などと、ミカが油断しながらアキラと呼ばれた男を見ていると、セリナが剣を持って飛びかかった。
それを見たアキラは一瞬驚いた表情を見せたが、ミカがギリギリ見えるスピードでセリナに回し蹴りを放ち、セリナは地面を転がる。
「セリナッ!」
ミカは、剣に残されていた僅かな魔力を使い、セリナの元へと『ショートワープ』する。
それにより、剣には魔力は本当に無くなってしまったが、今は関係ない。
ミカは、セリナの元へ飛び、傍に膝をつく。
「セリナ、大丈夫ッ!?」
「うぁ…」
ミカが呼びかけるも、セリナは苦痛に顔を歪め、立てないようだった。
それを見た瞬間、ミカは怒りでアキラに飛びかかろうとするが、セフィアの大声がそれを留める。
「お嬢様!」
「っ…!」
すんでのところで堪えたミカは、セリナを背負い、セフィアとカナがそこに合流する。
「お嬢様…」
「セフィア、カナ。急いでここを離れるわ。私に触れて」
(魔力が持つか不安だけど…そこは、少しだけセフィアとカナのを借りましょう)
アキラが微笑でこちらを見ている中、セフィアとカナがミカに触れる。その中で、『マジック・アサインメント』を、ミカは静かに使い、2人から少しずつ受け取る。
「なんです…その色は?」
ミカがセフィアとカナから受け取ることで、微量の魔力を移動させているとはいえ、ミカの体が青に、セフィアとカナが緑に発光していることにアキラが気がつく。
(ちっ…これまでね)
アキラが気がついたことで、これ以上していると妨害を受ける可能性を考えたミカは、すぐに『テレポート』の準備に入る。
イメージするのは、組合だ。あそこが一番安全だろう。
(多少の騒ぎは覚悟しなきゃいけないけど、それだけで済むなら…というか、ぱっと思いつくのがそこしかない!)
家以外で思いつくのが組合しか思いつかなかったミカは、全員が繋がっていることを確認し、アキラを見る。
アキラは、警戒して少し腰を落としているようだった。
「…何をしようというのです?」
「いいえ、これ以上は何も無いわ」
アキラが、『ミカが逃げる』ことを警戒しているのではなく、『ミカが何かを仕掛けようとしている』ことを警戒していることが分かったミカは、即座に魔法を唱える。
「『テレポート』!」
その瞬間、ミカの見ている視界は一気に切り替わり、人気のない組合になる。
(ん…? 人気のない?)
と、そこでミカは組合のおかしさに気がつく。
普段なら、人はかなりの数がいるはずなのだが。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「いや…なんだか、人が少ないなって思ってね」
と、そこまでミカが呟いた瞬間、ミカの視界がぐらりと揺れる。
ミカはフラフラと数歩歩き、頭を振る。
「くっ…」
「お嬢様、私たちの魔力をお使いください。今のままでは…」
「気持ちだけ貰っておくわ」
セフィアが、ミカに魔力を移すことを提案するが、ミカはそれを笑顔で断る。
ミカは、人気のないギルドから出て、近くにあった宿に入り込む。
宿の手続きはセフィアに任せ、ミカは先に部屋へと入り、ベッドに横になった。
「つっかれたぁ〜…」
「お疲れ様です、お嬢様」
ベッドに倒れ込んだミカに、いつの間に準備したのか、カナがホットミルクを差し出す。
(……あれ、さっきまで私と一緒にいたわよね)
不思議に思いつつも、ミカはそれを受け取り、ベッドから体を起こす。
ちなみに、セリナはミカの隣で死んだように眠っている。
そして、手続きを終えたセフィアが戻り、先程起きたことを話すことに。
「それで、お嬢様。結果的にはお父様に勝利したことになりますが」
「…あれを勝ったと言うならそうだけど…アキラって呼ばれてた人が問題よね」
客観的に言えば、複数人で1人を殴った、とも言えなくもない結果だが、アーリアも危険な道具を使ったので、しょうがないとも言えるだろう。
人体に密接に関係している魔力を打ち消すというのは、体の機能を低下させることに繋がる。
体の構造上、魔力に依存した体になっている人に使えば、死ぬことだって有り得るだう。
その点では、運が良かったミカだった。
そこで、カナが口を開く。
「ですが、お嬢様が本気を出せば、倒せるのでは?」
(セフィアから色々と聞いてるんだっけ…? まあ、隠すことでもないからいいんだけど)
ミカは、カナの一言で、腕を組んで唸り出す。
(確かに、魔力が回復したら、倒せるかもしれないけど…そもそも、私は戦いたくて過ごしてるわけじゃないんだけど)
ミカが魔法を学びたいと言った理由も、誰かの役に立ちたいからで、決して殺すためではない。
「私は、誰かを力でねじ伏せるために魔法や剣の扱いを学んだわけじゃないから…無駄な戦いはしないわよ」
(それに、明らかにアキラって人とやるとなると、殺し合いになるだろうし…ダジャレみたいね。明らかとアキラ)
ミカがそう言うと、セフィアとカナが分かっている、と言わんばかりに頷いて言う。
「それではお嬢様、この宿は今日の分しか支払っておりませんが、どういたしましょう?」
「お嬢様は、この後のご予定は決まっておりますでしょうか?」
ミカは、2人にそう言われ、セリナにちらりと横目で見てから言う。
「まずは、ここから離れましょう。明日の朝にここを出るわ。…それと、手紙とペンを用意してくれるかしら」
ミカがなぜそれらを要求するのか。その理由を知っている2人は、笑顔で言う。
「はい。かしこまりました」
セフィアはベッドの準備を始め、カナは部屋から出ていく。恐らくミカに言われたものを取りに行ったのだろう。
セリナは…。
「セリナ…いつまで寝て、あれ、起きてたの?」
ミカがセリナの顔を見ると、セリナは横になりながらうっすらと目を開けていた。
ミカの言葉に頷くと、セリナは体を起こし、ミカを見て言う。
「ミカは、辛くない…?」
「へ…?」
ミカがセリナのその言葉の意味を理解する前に、セリナは喋っていく。
「ミカ、お父さんと戦って、苦しくない…?」
「…」
そこで、ミカは気がつく。
この子は、自分のことを心配しているのだと。
「……平気よ。セリナこそ、無理してない?」
「ん、平気」
ミカはセリナの頭を撫でながら、いくら見た目が成長していて、よく喋れるとはいえ、精神面はまだ小学生低学年ということを理解する。
(体は成長しても…ってことなのかしら)
セフィアやカナが特殊なことをされているせいで、大人びているのもあるが、日本での見た目がまだ影響しているミカだった。
そこで、カナが部屋に戻り、紙とペンをミカに渡す。
「申し訳ありません、お嬢様。紙があまり見つからず、3枚ほどしか…」
「あら、そうなの」
ミカの感覚では、紙はすぐに手に入るものだと考えていたようだが、それは日本での話だ。
(なるほど、よくある設定よね)
ミカは、受け取った紙を机の上に置き、すらすらと書き始める。
書くことは、決まっていたようだ。
「お嬢様、お食事の準備が出来ました」
ミカが描き始めて間もなく、カナが夕食の準備が終わったことを報告する。
「ええ、わかったわ」
それを聞き、ミカは一旦書くのをやめ、部屋を出ていく。
その場に取り残されたセリナは、むくりと起き上がり、机の上に置きっ放しにしてあった手紙を見て、少し頬を緩めた。