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70 達成です!

異常にお腹が痛いので、腹痛の話を作るかもしれません(謎)

「とりあえずセリナ、これで私たちの分のご飯を買ってきなさい」


「わかった」


セリナにお金を持たせた(セフィア経由)ミカは、ミカとメイド2人の3人分の朝ごはんを買ってくることを命じた。


セリナがとたとたと走っていくのを見届けると、セフィアが心配そうに声をかけた。


「お嬢様、本当に大丈夫なのでしょうか。いくらお金はその分しか渡していないとはいえ…」


「あの子なら、その場で食べ始めるかもしれない。言いたいことはわかるわ。でも、今のセリナはそうならないと思うのよ」


「それはどうしてでしょう?」


ミカとセフィアが話している中、カナは宿で飼われていたのであろう犬と戯れている。


セフィアの質問にミカはドヤ顔で返す。


「もちろん、お腹がいっぱいだからよ!」


「……なるほど、先ほど3人分の朝食を平らげていますからね」


セフィアは、ミカの言葉に納得したように頷く。

その反応を見たミカは満足そうに頷き、続ける。


「いくらあの子でも、そんなに入らないはず。だから、安心してもいい…というか、信頼はしてあげないとね」


しかし、ミカがそう言ってから30分が経過しても、セリナが戻ってくることはなかった。


ミカが、どうしたのだろうか、と思っていると、不安そうな表情のカナがミカに尋ねた。


「あの、お嬢様、いくらなんでもかかりすぎじゃないですか?」


「そうよね……何かあったのかもしれないわね。見に行きましょうか」


そして、3人は出店を見て回ったのだが、どこにもセリナの姿は見えなかった。


(これ、本格的に何かに巻き込まれた?)


「セフィア、依頼の時間まであとどれくらい?」


「朝の8時には行かなければなりませんので、あと1時間と少しでしょうか」


「……あまり悠長にはしていられないわね」


ミカは自身に『筋力上昇』を施し、2人に言う。


「ちょっと探してくるから、2人は歩いて探してみて。見つけたら…そうね、この宿の屋根に上っていてちょうだい」


「わかりました」


「屋根ですね、わかりました!」


そして、ミカは単独でセリナを探し始めた。


人に見られないように、裏の道を通り、屋根の上に出る。


(……見える場所にはいない。セリナの持ち物でもあれば良かったんだけど、ないからあの魔法は使えない…)


セフィアを探し出した風属性魔法『ディテクション』は使えない。

となれば、地道に探し出すしかないのだが、ミカ1人では時間が足りない。


「ここは…聞き込みね」


ミカは屋根から降り、裏道から人混みに合流し聞き込みを始めた。













「ああ、そんな感じの子ならさっきそこで座ってたわよ」


「ありがとうございます」


ミカはぺこりと頭を下げ、言われた方向に走り出す。

考えてみれば、異世界でも青髪の少女は珍しいようなので、目撃証言は多いのはすぐに分かる事だった。

それに加え、セリナに隠密行動なんて出来そうにない。


(まあ、『アクセラレート』を使えば話は別かしら)


そして、言われた場所へとミカは向かう。


出店が連なっている所から横に入り、数回曲がって進んだところに、周辺の人からは穴場と言われている休憩スポットがある。

話によれば、そこで何かをむしゃむしゃと食べていたようだが。


と、ミカが歩いていると、青髪を揺らしながらベンチに座っている、セリナの背中が見えた。


「……いた」


「!」


ミカがそう呟くと、セリナの肩がびくりと震え、ゆっくりと後ろを振り向く。


そして、ミカとセリナの目が合うと、セリナは歪な笑みを浮かべた。


「お、おいしかった…」


「……そう。それはよかったわね♪」


ミカがわざとらしく声を高くして言うと、ついにセリナは泣き出してしまった。


この後、メイドの2人と合流し、セリナはミカにガッツリと叱られたのは言うまでもない。












「それじゃあ、依頼を始めましょうか」


「そうですね。幸い、ここからそう遠くない場所なので、時間には間に合いそうです」


気持ちを切り替え、ミカとセフィアはすぐに移動を開始する。

その後ろでは、頭を抑えながらセリナが歩き、カナが可哀想な目でセリナを見ている。


結局、ミカとセフィア、カナの3人は朝食を食べることは出来ず、空腹のまま依頼をこなすことになった。

唯一お腹が膨れているのはセリナなので、彼女には働いてもらおうと考えるミカだった。


「あなたが依頼した方でしょうか?」


「えっと、探し物の依頼ですよね…?」


集合場所は、噴水がある広場。

だが、周りには人が誰もいない。


そのおかげで依頼者がすぐにわかって良いのだが、どこか違和感を覚えるミカだった。


依頼した人は、ショートの黄色かがった髪の主婦。

見た目の年齢は40代で、服装も裕福そうではないが、貧しいイメージは受けない。


「それで、探し物とは」


「はい。実は、夫からもらったアクセサリーを…」


セフィアが対応する中、ミカとセリナ、カナの3人は、どう探すのかを相談中だ。


「ねえ、ホントにどうするの?」


「お嬢様、何か案があったのでは?」


「そんなのないわよ」


「とにかく探す…」


「セリナの案は気が遠くなりそうね…」


全く妙案が浮かばないまま、話を終えたセフィアが戻ってくる。


「お嬢様、今回探す物は、あの方の夫からもらったアクセサリーです。形は星の形をしており、色は黄色。大きさは手のひらに収まる程度で、素材は金属に近いとのことです」


「なるほど…」


と、ミカは策があるかのように返事をするが、実際はノープランだ。

頭の中は空っぽで、とりあえず聞き込みしておけば何とかなると考えている。


セフィアの説明を聞いていたセリナが何かを言い出したそうな顔をしていたが、それに気づかなかったミカは出発の号令をかける。


「さあ、行くわよ!」


「はい。期日は明日いっぱいまでです」


「はや!」













「まあ、そう簡単には行かないわよね」


「お嬢様、こちらには無さそうです」


ミカ達4人は、道の端に落ちているかもしれないということから、聞き込みをしつつ、細かく見ながら歩いているため、落とした範囲が分かっているとはいえ、かなり労力を必要としていた。


落とした範囲は、依頼主が『この辺り』と言っていたので、一応信頼していいだろう。


ミカは肩を落としながら、セフィアの報告を聞き流す。


「セリナ様、どうかなされましたか?」


「…なんでも」


そんなミカに話しかけたそうにしているセリナだが、カナが声をかけるとすぐにそっぽを向く。

そのセリナのポケットの中には、手のひらサイズの_____。


「ミカ」


「ん、セリナ?」


セリナは意を決して、ミカに話しかけると、手に持っていたそれをミカに渡した。


なんだろうとミカが見てみると、それは手のひらサイズに収まるアクセサリー。

形は星で、色は黄色。材質は金属っぽい_____。


「って、これ探し物じゃないの!?」


「…拾った」


そして、ミカはセリナに抱きつく。


「ありがとうセリナ! お手柄よ!」


「…ん」


実は、探し物の内容を聞いた時には持っていたので、最初から持っていたことになり、ミカ達の探した時間は無駄なのだが、ミカに抱きしめられ褒められたセリナは、得意げな表情だった。


「おめでとうございます、お嬢様!」


「お疲れ様です、お嬢様」


何となくセリナの表情から察しているカナとセフィアは、それぞれ口にする。


こうして、何とかその日のうちに依頼を達成出来た4人は、報酬を受け取り、宿に戻った。


「家を買った方がいいんじゃない?」


宿に戻ったミカの第一声は、家の購入の提案だ。


ミカはベッドの縁に腰掛け、セリナはベッドに寝ている。

カナとセフィアはミカの正面に来るように立ち、ミカの提案に答える。


「確かに、ここを拠点とするならば家はあった方がいいでしょうけれど、ここに住むのですか?」


「……なるほど、言われてみればそうね」


ミカは、とりあえず生きていくための方法を見つけることを最優先として過ごしていたが、冒険者で生活していくのならば、ある程度の実力があれば見つかったも同然と考えた。


となれば、次の目標は、勝元美香がこちらに来ているのならば、その身体の確保だ。


(私の個人的な目的だけど…2人はともかく、セリナがついてくるかしら)


とはいえ、ここまで来たなら、この場で解散とはならないだろう。

学院に送り返すか、連れていくかだ。


(というか、初等学院には行ったけど、それでいいのかしら…)


「とりあえず、ここには住まないわ」


「わかりました。では、次はどちらに進みましょう」


「そうね…」


カナにそう聞かれ、ミカは顎に手を当て考え出す。


(もし仮に、私の体に私の精神が残っているとしたら、どこに行けばいいか分からなくなったら北に行くはず)


「そうね、とりあえず北を目指しましょう」


「わかりました」


ミカの提案に、理由は聞かずに頷く2人。

メイドである彼女たちは、ミカが指示したことに疑問を持たないようだった。


ミカがちらりとセリナを見ると、既に寝息を立てている姿が見えた。


「はやい…まだ夜ご飯食べてないでしょうに」


「昼ごはんもまだです」


カナがそう言ったところで、ミカのお腹が空腹を訴える。


ミカは恥ずかしそうに頬をかきながら、顔を赤くして言った。


「とりあえず…ご飯食べに行こっか?」

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