64 嫌な予感しかしないプレゼントです!
予約投稿って便利ですね!
忘れずに投稿できます…今までどうして利用してこなかったのでしょう?
投稿する時間もある程度同じに出来ますし、本当に便利です。
結局、その日のうちにカナと再び会うことはなく、ジェイナもいないまま、夕食の時間となった。
セフィアが準備を済ませ、ミカが1人で食べる。
これでは、いつもと変わらなかった。
(というか、もう学院行かなくてもいいかどうか聞いてみようかしら)
これからは冒険者として生きるのもいいかもしれない、とミカは考え始めていた。
実際、ミカの魔法があれば金を稼ぐことは簡単だ。
最初は名をあげるのに苦労をするが、その後は高額な依頼を何度もこなしていく。
それだけだ。
ミカが食べ終わったことを確認すると、セフィアは食器を片付けていく。
それを見ていたミカは、ぼんやりと、これからのことを考えていた。
まだ12月に入っていないので、新年にはなっていない。
であれば、学院長に相談するのは今しかないだろう。
ミカは、何となく重たい腰を上げ、学院に『テレポート』した。
(……この部屋にも、来ることは無くなるのかしら)
ミカが飛んできたのは、いつもの寮の自室。
ベッドが乱れているのを見つけたミカは、セフィアに直してもらおうとして、気がつく。
「……セフィア、置いてきちゃったわね」
これは早いうちに用事を済ませなければとミカは思い、すぐさま部屋を飛び出す。
現在の時刻は夜8時過ぎ。
大体の生徒は部屋に入って自習なり休憩なりをしている時間帯だ。
ミカは自身に『筋力上昇』と『アクイバレント・エクスチェンジ』を付与し、一気に駆け抜ける。
廊下が陥没しないような力で走るため、見られた場合はミカの姿が見える可能性もあるが、この際は仕方が無いだろう。
そして、ミカは学院長室にたどり着く。
何気に、ここに来たのは初めてだ。
「……」
扉をノックすると、数拍おいて中から返事が来る。
「どうぞ」
「…失礼します」
ミカは、この後学院長に無理矢理卒業を認めさせ、自宅に帰宅したのだった。
「ただいま」
「お嬢様、おかえりなさいませ」
ミカは用事を済ませるとすぐに『テレポート』で帰宅したのだが、飛んだ先の部屋は特に何も変化はない。
セフィアは最初から部屋にいたようで、ミカの帰宅を驚きもせずに迎える。
「あの、セフィア。私がいない間何も無かった?」
「いえ、何もありませんでしたよ」
セフィアがそう言うのなら、そうなのだろうと納得したミカ。
とそこで、部屋の中にとある物が置いてあることが分かる。
「これは?」
ベッドの上に置いてあった、袋に包まれた細長い物体。
ミカはこれに既視感を覚えていたのだが、セフィアには一応聞いたようだった。
セフィアは、たんたんと答える。
「お父様が、お嬢様にプレゼントだそうです。どうやら、お嬢様がレイピアをサナさんに渡したことを、独自の情報網で知ったのでしょう」
なんということだ、とミカはその場に突っ伏す。
あの剣で十分だったミカは、これ以上武器が増えても使わないと思いながら、セフィアがまだ何かを言いたそうだったので、先を促す。
「それと、レイピアがお嬢様についていけなくなったと考えているようでしたので、恐らくですが、中に入っているものは伝説級の代物かと」
「ガッデム!」
そんなものを貰ってどうするというのか。
確かに、ミカにしてはちょうどいいタイミングだ。
まだ7歳なのだし、セフィアがいるとはいえ、不安もある。
だが、それとこれとは話が別だ。
グッドタイミングとはいえ、別なのだ。
ミカは重たい気持ちで袋を開けようとして、やめる。
「そういえば、カナは?」
「お母様にメイドの極意を教わっております」
「ああ、なるほど…」
ということは、明日朝起きたらカナは完璧なメイドになっているのだろう。
ミカは、時間というルールに縛られていないジェイナを恐ろしいと感じながら、再び袋に目を向ける。
「はぁ…開けなきゃダメ?」
「お父様が働いて、そして得たものですから、それを開けずに放置するというのはいかがなものかと」
「そうよねぇ」
プレゼントを渡しても、開けられずに放置されたことは、ミカも経験がある。
あんな気持ちをアーリアにさせるわけにはいかないと思ったミカは、袋を開けることを決意する。
「さて、何が入っているのかしらね」
ミカは、袋を開けながら、上機嫌に言う。
いや、上機嫌そうに見える態度で言っている。
そうでもしなければ、ため息しか出てこなさそうな気がしたのだ。
ミカが袋を開け、入っていたのは、日本人であれば、というより、元の世界の人ならばほとんどの人が知っている武器。
「……日本刀、ね」
「ニホントウ、ですか?」
ミカがそう呟くと、セフィアは知らないような反応を示す。
ああそうか、とミカは気がつく。
(そもそも、日本刀って海外の人ですら、当時は知らなかったんだし。いや、知ってたのかしら。でもまあ、その斬れ味はかなりのものだって言うし、これもそうだと思った方がよさそうね)
事前にセフィアの説明を受けていても、日本刀を目にしたミカは、この刀がよく斬れるということを見ただけで確信した。
鞘から抜き放ち、刀身を見る。
(……やっぱり、しまっておくのが一番よね)
鞘にしまい、ミカは日本刀を『コンバート』する。
それを見たセフィアは、ミカが就寝することを察する。
「それではお嬢様、体を流しましょう」
「ええ、お願い」
そしてミカは、セフィアに全てを任せてシャワーを浴び終わり、体を綺麗にした所で、ベッドに体を投げ出す。
「なんだか、色々あったわね」
「はい。そういえば、なのですが。お嬢様はサナさんに自宅の場所を教えてないのでは? 学院の寮にしても、いつまでもそこにいるわけではありませんし」
「あ、そうだった。……それに、セフィアには言っておかなければならないこともあったわね」
「?」
ミカはそう言うと、上体を起こし、セフィアの方を向く。
「私、学院を卒業することになったの」
「……お嬢様。まだ卒業するには年月があると思いますが」
「それは特例で、ね。これからはダンジョンとか、依頼をこなしていくわ」
「依頼、となると、冒険者ですか?」
「ええ、そう」
ミカはそこまでセフィアと話をし、一旦終わりだと示すようにベッドの中に潜り込む。
「続きは、カナがいる時にでもしましょう」
「そうですね。それでは、失礼致します」
セフィアもメイド服を脱ぎ、綺麗に折りたたんだところで、ミカと同じベッドに入る。
ベッドに入ってきたセフィアに抱きつき、ミカは瞼を閉じる。
そして、不安げにセフィアを上目遣いで見つめて言う。
「セフィア、寝不足になったりしていない?」
「いえ、そんなことはございません」
「そう…それならいいのだけれど」
いざとなれば、『スキャン』で妖精達の様子を見て、その人の状態を探ることも出来る。
ミカは、とりあえずはセフィアの言葉を信じることにして、眠りに落ちた。