表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/92

59(EX)年末はおせちです!

(EX)は(if)の話として見ていただければ幸いです!


こんなことがあった、もしくはあったかもしれないと言った感じでしょうか。

12月31日。

日本では年末と言われる日だ。


この日は家族で集まって、ご馳走を食べ、日にちを跨いだら「あけましておめでとうございます」と挨拶をする。


ミカの家庭はそうだった。

もちろん、父親は抜きだったが。


それはともかく、そういったことを、ミカはこちらの世界でもやりたがった。


「おせち、ですか?」


「ええ。色んなご馳走が綺麗に並べられているお弁当、と言う感じかしら」


残念ながらミカの説明力では詳しく説明することは出来ないが、セフィアには伝わったようだった。


「なるほど、わかりました。それを作ればよろしいのですね」


「うん、お願いね」


毎度の事ながら、ミカがやりたいと言い出すのはかならず当日の朝だ。

だが、今回は準備しやすい。

家族もとい、ミカとセフィアのみで行うのだから。


行う場所は、ミカが見つけていた、学院で使われていない部屋。


もちろん、ジェシカを除け者にしているつもりはないが、最初は2人でしたいというのが、ミカの思うところだった。


「さて、それじゃあ私は色々準備をしようかしら」


そしてミカが準備するのは、使っていない部屋の準備だ。


掃除もしなければならないし、椅子や暖房も持ち込まなければならない。


暖房は魔力を入れれば暖かい空気を出す道具があるので、それを使用すればいいが、掃除機のようなものは無いのであった。


「さて。どうしたもんかしら」


『テレポート』でその使っていない部屋の前に飛んできたミカは、扉を開けて部屋の中を見る。


部屋の中は、使っていないだけあってホコリだらけだが、それ以外におかしなところは無い。

ガタがきているような部屋ではないので、風が入ってきたりはしないだろう。


ミカが中に入り、窓を開ける。

そして『ウインド』を唱え、ホコリを一気に窓から外に出す。


ミカの魔力は、『ウインド』を使うのであれば無限のようなものなので、ホコリを出し切るまでウインドを使う。


「こんなものかしらね…」


ホコリを出し切ったミカは、今度は『コンバート』していた椅子や机を出す。


暖房は軽いので、部屋の前に置いてあったものを持ってきて、設置する。

必要な魔力は、誕生日で貰ったマナタイトを使おうかと考えたが、それ専用のものがあるらしいので、それを学院から拝借していた。


「盗んでないわ。返すもの」


消費するものを返してどうするのか、とツッコムべきのジェシカは、実家へと帰省していた。


ある程度の準備を終えたところで、セフィアが部屋に入ってくる。


「さすがですお嬢様」


「あら、セフィア。早いわね、もう出来たの?」


ミカの問いに、セフィアがこくりと頷く。


「今回のものは準備が必要なものではありませんでしたので、豪華な食事を入れただけですので」


「………そう」


セフィアは簡単そうに言うが、それが簡単ではないことは誰もが理解している。

もちろん、ミカも例外ではない。


ミカがそのまま、魔力を流した暖房のスイッチを入れる。


「さて、準備は終わったから、あとは時間まで待ちましょうか」


「わかりました」














ミカとセフィアはいつも通り自室で過ごし、その日の午後の10時あたりになったところで、2人は『テレポート』する。


暖房を付けっぱなしにしていた部屋は、しっかりと暖かかった。


「それじゃ、始めましょうか」


「はい、お嬢様」


そして2人は、椅子に座って食事を始める。


今までの食事は、ミカが食べている間はその後ろで控えていたセフィアだが、この時だけはミカに強制されて正面に座らされている。


まずは、ミカがセフィアの作った異世界版おせちを口にする。

日本のおせちのようなラインナップではないが、ミカの好物ばかりが揃えられている。

セフィアの細やかな配慮だ。


それを理解したミカは、嬉しく思いながら、その中でも一番の好物である卵焼きを口に運ぶ。


この卵焼きは、ミカが以前教えたもので、少し砂糖を多めに作るものだ。


「んん〜! おいしい!」


ミカがそう言い、セフィアは内心安堵しながらミカに続いて料理を口に運ぶ。


飲み物は、炭酸によく似た飲み物を用意してある。


そして、2人がある程度食べ進めたところで、ミカが時計を見ようとして、時計が無いことに気がつく。


「セフィア、今何時かわかる?」


「11時35分、ですね」


「そう。ありがとう」


そして、ミカは窓を開けて、外を見る。


今日の夜は快晴で、星空が良く見える。

日本では都市部に住んでいたミカ。

そのせいで夜は星が全く見えず、星を見ようともしなかった。


だが、この異世界では、満天の星空が見える。


「……いい夜ね」


ミカがそうポツリと呟くと、セフィアが後ろに立ち、頷く。


2人で、心地よい風を受けながら、外を見つめ続けていると、時間が来たのか、セフィアが言う。


「お嬢様、お時間まであと10秒でございます」


「それなら、カウントしましょうか」


そして、部屋のスイッチを消し、月と星の明かりで照らされた中、ミカのカウントが響く。


「3、2、1…あけまして、おめでとう。セフィア」


「おめでとうございます、お嬢様」


2人は顔を合わせて、笑い合う。


ようやくしたいことが出来たミカは、これまでのことと、これからのことに思いを馳せ、セフィアを抱き寄せる。


「これからもよろしくね、セフィア」


「もちろんです、お嬢様」


セフィアもミカを優しく抱き返す。


2人はしばらくそのままでいた後、ミカから離れて部屋の明かりをつける。


そして椅子に座り、ご飯を食べ始める。


「こんなに美味しいのを残すなんてありえないじゃない。ほら、セフィアも食べましょう?」


「……ふふ。はい、お嬢様」


ミカはそう言うが、セフィアにはその本当に意図が伝わってしまったようで、ミカは頬を少し赤らめる。


こうして、ミカの年末は終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ