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55 知らないうちにシャワーです!

年末年始の話は、2つに分けて投稿しようと思います!

「今帰ったわ」


「お帰りなさいませ、お嬢様。そちらは?」


「クマよ」


情報収集を終えたミカは、宿の部屋へと戻り、セフィアに結果を伝えていた。


ぬいぐるみに関しては、特に言及されていない。


「それでは、お嬢様は情報を集めに出かけれたのですか?」


「ええ、そうよ」


ここで、ぬいぐるみを買いに行かれたのですか、などと言わないあたりが、メイドである。

友達なら、それも許されるだろう。

だが、セフィアはミカのメイドである。


ミカは、ぬいぐるみをベッドの上に置き、これからどうするかを決める。


「とりあえず、今日はここで休むとして、明日からどこに行くかよね」


「まずは、お嬢様が得た情報と合わせて、1番情報が重なったところに向かいましょう。

それ以外は、後回しでよろしいかと」


ミカが悩んでいると、セフィアが提案をする。

ミカが悩む必要はないようだ。


セフィアの提案に賛成なミカは、頷いた後、ぬいぐるみを抱えてベッドに倒れ込む。


「それじゃ、また明日…」


「お嬢様、寝る前に支度をしましょう」


眠りにつこうとしていたミカの体を起こし、セフィアは着替えさせる。

本当はこの後、体の汗も流したいセフィアだったが、ミカが寝てしまっては、出来なくはないがとても疲れる。


と、そこまでセフィアは考えて、閃く。


ミカがシャワーを浴びながら寝るということは、セフィアが自由に出来るということ。

ミカが、普段は自分で洗うと言っている場所も、セフィアが洗うことが可能なのだ。


「………」


セフィアは、うとうとしているミカを背負い、ミカに言う。


「お嬢様、一度、寮のシャワー室に戻ることは可能でしょうか?」


「んー…『テレポー…ト』」


ミカが最後の気力(とついでに魔力)を振り絞り、寮のミカたちの部屋のシャワー室に『テレポート』する。


そこにはもちろん、ジェシカもいるので。


「なっ…突然いなくなったと思ったら、今までどこにいたんですの!?」


当然、ジェシカは今までどこにいたのかを問い詰めるのだが、ミカは眠っているので、反応はない。


そして、ミカに話しかけていると思っているセフィアは、無視してシャワー室に入る。


ミカとセフィアが転移してきて、反射的に立ち上がったジェシカは、ミカとセフィアがシャワー室に消えたことで、感情の行き場を失ってしまい、しばらくその場に立ち尽くしていた。













「お嬢様、シャワーをかけますよ」


「………」


セフィアが言い、シャワーをミカにかけるが、既にミカは眠っているので、返事はない。


そのまま、ミカの体をセフィア自身の体にもたれかけつつ、まずは髪の毛を洗う。


いつもよりも入念に洗っているセフィアだが、ミカが脱力している分、洗いづらそうではある。

だが、その顔はどこか嬉しそうなのは何故だろう。


髪を洗い終わったセフィアは、今度は体に移行する。


その目はどこか危なげだが、手つきはしっかりしている。


「ではお嬢様、失礼します」


「………」


眠っているミカは返事をしないが、セフィアは毎回、確認を取ることを欠かさない。

これも、メイドの基本だ。


そしてセフィアは、素早く、体の隅々まで洗う。

誰に見られている訳でもないが、仕事は迅速丁寧に。

セフィアが心がけていることだ。


「………」


「それでは、失礼します」


そして、シャワーで体の泡をしっかりと落とし、タオルで水分を拭き取る。

寝巻きも着せたところで、ミカが寝ている時のシャワーの仕事は終わりだ。

今回が初めてのケースだったが、セフィアの仕事は、完璧であった。


そして、セフィア自身の体をミカ以上に素早く洗い、タオルで水分を拭き取る。


そして、着替えのメイド服に着替え、ミカを背負いながら、シャワー室から出る。


ようやくミカとセフィアがシャワー室から出てきたので、ジェシカが再び立ち上がり、問い詰めようとする。


「ちょっと、2人とも今までどこに…!」


「お嬢様、宿に戻りますよ」


「んあ……『テ…レポー…ト』」


「ちょ、待ちなさい!」


ジェシカの『待った』も虚しく、ミカとセフィアはその場から消える。


ジェシカは再び、感情の行き場を失ってしまった。












宿に戻ってきたセフィアは、ミカをベッドに寝かせ、シーツを被せ、ミカの様子を見る。


その寝顔は安らかであることを確認し、セフィアは明日の準備を始める。


「これは…お嬢様が持つのでしょうか」


セフィアは、ミカが持ち忘れるようなものを事前に準備しておく必要があった。


ミカは、『コンバート』させることで、実際に持つ必要が無い。

無意識に『筋力上昇』を使っているので、重さも問題は無いようだ。

しかし、ミカ自身も今自分が何を持っているのか把握していない節があるので、その辺りはセフィアがカバーしなければならない。


とはいえ、セフィアはこれが苦だと思ったことはなく、逆にありがたく思っているぐらいだった。

仕えがいがあるという話でもあるし、ミカから感謝を言われるのが何よりも嬉しいのだ。


もちろん、『当然です』と毎回言っているのだが。


準備をある程度終えたセフィアは、ベッドに入る。


「…明日は、何時に起きるのでしょうか」


とりあえず、明日もいつも通りの時間にミカを起こそうと考えるセフィアだった。













「おはようございます、お嬢様」


「ん…おはよう、セフィア」


朝の8時。

セフィアはミカを起こし、ミカはすぐに起きる。


そこでミカは、自分の服が寝巻きに変わっているだけでなく、髪や体がいい匂いがすることに気がつく。


「セフィア、もしかして、洗ってくれた?」


「はい。昨日、私が洗わせていただきました」


「……」


ミカは、自分の顔が赤くなっていくことを自覚しながら、それでも感謝しないのは人としてあるまじき行為だとして、ミカはセフィアを見て礼を言う。


「ありがとう、セフィア」


「いえ、それが私の務めですから」


そして、セフィアはミカにレイを言われる。


ミカは、セフィアがいなければ生活できないくらいになっているが、セフィアもまた、ミカに自身の全てを委ねているので、そこは持ちつ持たれつの関係なのかもしれない。


ミカが気合いを入れるように、ベッドから降りて伸びをする。


「ん…んん〜…さ、準備をしたら出発しましょ!」


「はい、お嬢様」


今日の天気は快晴。

良い日になりそうだと、ミカは確信していた。

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