49 誕生日プレゼントです!
10月20日。
今日この日は、ミカの誕生日だ。
いつも通りセフィアに起こされ、授業に出る準備をする。
結局、近衛兵長になっているというアーリアに会いには行ったのだが、門前払いをくらったのだ。
ミカは、ただ自分の父に会いに来ただけなのに、と怒っていたが、当然な話である。
そもそも、アーリアはこの国では1番の武人なのだ。
しかも、役職は近衛兵長。誰でも会える訳では無い。
それが例え、ミカという実の娘でも、例外では無いのだ。
悶々としながら、どうしたものかと考えながら教室に入ると、突然、小さな爆発音が複数鳴り響いた。
ミカが驚き顔を上げると、そこにはクラスの全員が、ミカの周りに立っていた。
そして、その手には。
「……クラッカー?」
(なんでクラッカー? 今日なにかあったっけ)
誕生日を忘れているミカだが、すぐなセフィアが後ろからこっそり言う。
「お嬢様の誕生日でございます」
「あっ」
そして、ミカが気づいたすぐ後に、クラスの全員が声を揃えて言う。
『ミカ様、誕生日おめでとうございます!』
「……あ、ありがとう」
ミカがクラスの中を見渡すと、壁には装飾が施され、ミカの机には箱が大量に置かれている。
昨年よりもパワーアップしているなあ、とミカは呑気なことを考えた。
その日の放課後。
ミカは自室のベッドの上で寝転んでいた。
「……今日は疲れたわね…」
「皆さん、お嬢様のことがお好きですからね」
「いや、好かれるのは嬉しいんだけど、好かれすぎじゃない?」
結局、ミカは、別の建物にいるはずの他学年からもプレゼントを大量に貰うことになり、部屋は箱だらけだ。
『コンバート』するという手もあったのだが、皆がミカのために用意してくれたのだ、と考えると、ミカは『コンバート』出来ずにいた。
ミカが、どうしたものかと考えていると、ジェシカが戻ってきた。
「ただいま戻りましたわ…って、なんですのこれ」
ジェシカは、大量に積み重ねられた箱を見て、やはり驚いているようだ。
箱と箱の間からミカが顔を出す。
「私がもらったプレゼントです、先輩」
「ああ、そういうことですの。…こんなにあったら、私のは必要ないかもしれませんわね」
「? 先輩?」
ジェシカが呟いた最後の方は、ミカはよく聞こえていなかったようだった。
ジェシカが笑って誤魔化すと、そのまま自分の椅子に座った。
「ともかく、お嬢様、これは早いうちに片付けなければなりませんよ」
「そうよね…」
ミカには、やることが沢山ある。
暇だ暇だと言っているのは、学院から出る機会が無いだけで、外に出ればやることはあるのだ。
まず初めに、『30』と書かれた鍵。
それから、近衛兵長であるアーリアに会いにいく。
魔法の開発。
「……とりあえず、開けていきましょうか」
「そうですね」
ミカが、箱に手をかけて、セフィアに言う。
「セフィア、手伝ってくれたりとかは」
「お嬢様が貰ったものですので、お嬢様が開けた方がよろしいかと」
「ですよね」
「これ、いつ使うのかしら」
ミカが箱を開け、色々な道具が飛び出してくる中、唯一わからない道具が出てきた。
茶色い木箱…のようだが、取っ手がない。
振ってみれば何かしらが入っているような音がするのだが。
「お嬢様、そちらは化粧用具てございます」
「化粧?」
(私まだ子どもなんだけど?)
セフィアから教えられた木箱の正体に、すっかり興味を無くしたミカは、化粧用具を『コンバート』させておく。
あっても、今は必要ないだろうという判断をしたようだ。
ミカはその後もプレゼント箱を開けていったが、大体の物が『コンバート』行きだった。
そして、ミカの手元に残った数少ないうちの1つ。
赤色の結晶が、1番不明なものだった。
ミカがセフィアに聞いても、『すみません、勉強不足のようで、わかりません…』と返され、ジェシカに聞いても、『私もわかりませんわね…』とのこと。
大きさはミカの顔ほどの大きさだ。
透明度はかなり高く、結晶越しにセフィアの顔が見える程だ。
ミカは手の中で結晶を転がし、呟く。
「これ、魔力結晶とかそんな感じなのかしら…」
「魔力結晶、ですか?」
「聞いたことがある程度ですわね…これが本当にそうなのであれば、実際に見るのは初めてですわね」
その日は、ずっと3人で『これは一体なんだ?』という推察を行ったが、結局は推察の域を出ず、これを送ってくれた生徒もわからず、ミカたち3人はどうしたものかと頭を抱えて、寝た。
次の日の朝。
この日は授業は無く、ミカは近衛兵長であるアーリアの元へと再度行こうと考えていたのだが、その前に解決したいものが出来てしまった。
謎の結晶体だ。
ミカは、ベッドの上で寝転がり、結晶を手の上で転がし、見つめる。
(不用意に魔力を込めたりなんかしたら、爆発とかしたりするかもしれない。
その時は強化魔法をかければ、私は無事だけど、周りが無事じゃない。どうしたらいいのかしらね)
そして、ミカは結晶を『コンバート』しようとして、止める。
以前、ミカが使っていた剣を長時間『コンバート』させていたら、黒くなったことがあったので、それと同じような状況になっても困るのだ。
ミカは、せめて何なのか書いてくれたら、と思わずにはいられなかった。