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47 入れ替わりです!

「おじょ…ミカ、それを取ってください」


「はい、お嬢様」


ミカとセフィアの立場が入れ替わった初日。

現在、2人は自室で作業をしている。


作業、と言っても、セフィアがミカの勉強をしているという謎の作業なのだが。


ミカの普段の授業にも常にそばに居るセフィアは、ミカの勉強にもついていける。

だが、ミカ自身がやらなければ意味が無いのではないだろうかという意思と、ミカの命令を無視する訳には行かないという葛藤に苛まれていた。


その一方で、ミカは。


(メイドって、なんだか楽しいわね)


楽しくなっていた。













「お嬢様、ミルクティーでございます」


「ええ、ありがとう」


ミカとセフィアが入れ替わって1ヶ月。

他の生徒も慣れつつあるが、1番慣れていたのはこの2人であった。


セフィアに関しては、ミカに命令は全くしない。

だが、ミカが何でもやるのだ。


同室のジェシカは、この2人はいつ元に戻るのかと考えているのだが、戻す具体的なプランは全く浮かんでいないので、放置している。


そして今は、授業と授業と間。中休みと言う時間で、2人は休憩している。


セフィアが未だにぎこちない動作でミルクティーを一口飲み、机に置く。


ミカは、セフィアの斜め後ろで待機中だ。


最早周りの生徒達も慣れているが、最初は酷いものだった。


『ミカ様、何が起きたんですか!?』

『なぜミカ様がメイドに!?』

『私のメイドにもなってくれませんか!?』


最後のはともかく、大体はもっともな質問だ。

だが、ミカはこれを真顔で無視。


ミカの頭の中でのメイドは、セフィアのようなもの。

ミカは、セフィアが他の生徒と話している姿を見たことが無かったので、とりあえず無視している状況だった。


今では、受け答えはするようにしている。

セフィアに怒られたからだ。


セフィアがミルクティーを飲み終わり、ミカがカップを回収すると、授業のチャイムが鳴る。


「それではお嬢様、私はこれを片付けて参ります」


「わかりました」


ミカはカップを片手に、その場から離れる。


セフィアはその背を見続け、見えなくなったところで、ため息を1つ吐く。


「……お嬢様、いつまでやるつもりなのでしょう…?」


セフィアとしては、本来の、メイドとしての自分に戻りたいのだが、主人であるミカの命令には逆らえない。


セフィアは、今着ているミカの服を摘む。


「……お嬢様の服を着られる、というのは、とても幸せなのですが」


セフィアも、満更ではないようだった。













ミカは、カップを両手に持ちながら、調理室へと向かっていた。


セフィアがいつもどこで後処理をしているのかは不明だが、ミカの思いつく場所はここしか無かった。


扉を開けて中に入ると、既にそこには先客がいた。


「…セリナ」


「ん、ミカ」


ミカが名前を口にすると、青髪を揺らして、セリナもミカの名前を口にする。


その口周りには、白い何かがついている。


「…それ、クリーム?」


「そう。美味しそうなのがあったから食べてた」


セリナがそう言いながら、奥を見るので、ミカもその視線を追って奥を見る。

そこには、並べられたスイーツがあった。


(というか、これって寮の晩御飯のデザートなんじゃないの?)


ミカはそう考えるが、後のことは、今は考えるべきではないだろう。

どうせ、もう食べているのだ。


ミカはポケットからハンカチを取り出し、セリナの口周りを拭く。


「セリナ、ここにあるのは食べちゃいけないのよ」


「そうなの?」


ミカがそう言うと、セリナは目を丸くして驚く。


(そもそも、置いてあるものを勝手に食べるなんて、普通ならしないと思うのだけれど)


同じような状況でも、日本であれば食べても死にはしないだろう。

怒られはするかもしれないが。


だが、この世界はそうはいかない。

ここが初等学院だと言っても、無差別に殺すテロリストみたいな集団もいるのだ。


置いてあるデザートなんて、毒が入っている可能性の方が高い。


ミカがそう考えていると、セリナが残念そうな顔をして言った。


「じゃあ、ここにあるのも…?」


「…そうね、ダメよ」


「……」


ミカの言うことには従うのか、反省したような雰囲気で黙るセリナ。

だが、顔が物足りないという顔をしていた。


ミカは、その顔を見て、どうしたものかと悩んでいた。


(私が作ってもいいんだけど、それだとセフィアの傍にいられなくなっちゃうのよね)


そう。今のミカは、セフィアのメイドである。


ミカはかなり悩んだ後、打開策を思いつく。


「ねえ、セリナ。私が作ってあげようか?」


「ほんと?」


ミカがそう言うと、セリナがミカに抱きついて言う。

ミカとセリナは、髪と目の色がそれぞれ逆なので、傍から見れば姉妹のような光景である。


ミカはセリナの肩を掴んで体を離し、条件を付ける。


「ただ、セリナ1人じゃないんだけど。いいかな?」


「構わない」


ミカの押し返しに抗うかのように、セリナはミカに近づこうとする。

お互い強化魔法を使わずに全力で戦っていた。


「ちょ、ちょっと…セリナ?」


「なに」


「近いと思うんだけど…」


「最近会えてなかった。寂しかった」


「えっ!?」


セリナからそんなセリフが出るとは思わず、ミカはつい力を抜いてしまう。

そして、セリナがそのままミカの体にタックル地味た抱擁をしてくる。


「はぐっ」


「授業にも最近でてなかったから、会う機会もなかなかなかった」


「……」


そういえば、とミカは思う。


セフィアと立場を入れ替える前から、セリナは授業中にも見かけなかった。


何故だろう、とミカが思うのは当然なのだが、今はいいか、とミカは流した。


「それじゃ、作るから一旦離れてくれる?」


「ん」


そして、ミカはセリナを連れて調理室の奥。キッチンへと向かった。


一方、セフィアは。


「あー、君の主人はどこに行ったんだ? まさか、自分の服を着せておけば代わりミノになるとでも思ったのか?」


「ええと…私が今は主人にさせられているというか…」


授業にミカが出席せず、メイドのセフィアだけがいるので、担任に普通に怒られていた。


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