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45 なるほど納得です!

そろそろ伏線の回収に入らなければ、とか思いつつ、伏線をさらに張っていくなんてことに陥らないように気をつけます!



ジェシカを部屋へと運び終わったミカは、ジェシカの長時間『アクセラレート』を使い続けた理由を知った。


ジェシカをベッドに寝かせると同時に、腕から何か、金属の音がしたのだ。


(……?)


ミカは、何だろうとジェシカの腕をよく見ると、金属製のブレスレットがついていた。


全体的に金色で装飾されていて、所々に赤と青の宝石がついている。


ミカはそれをジェシカの腕から外し、じっくりと見る。


(これ…綺麗だけど、なんか訳ありっぽそうね…)


と、そこまで考えて、ミカは慌ててそれをベッドに置く。

訳ありかもしれない、と考えたところで、これが貴族の家のものでは無いのかと考えてしまったのだ。


不用意に触って壊した場合、弁償を請求されるのは間違いなくミカだろう。


それを恐れたミカは慌てて離したのだ。


それを、後ろから見ていたセフィアが呟く。


「お嬢様、それはマジックアイテムと呼ばれているものです」


「マジックアイテム?」


マジックアイテムとは。

その名の通りの意味で、魔力を通せば、魔法を唱えずとも発動する代物である。

発動スピードは、普通に発動するとは段違いに早く、また、魔力を扱える人なら誰でも容易に発動できる。


ただし、それには威力の制限がある。

威力の制限もなくなれば、ミカが持った場合勝てる人はいなくなってしまう。


そして、リスクもある。


「マジックアイテムには強化魔法系統のものが多いのですが、魔力を注ぎ込むほど効果は持続します」


「……ってことは」


「はい。お嬢様以上に加速していたのは、それが原因かと思われます」


セフィアはどこから見ていたのか、とミカは尋ねたかったが、ミカも模擬戦に集中していたので、気づいていなかっただけなのかもしれない、とも考えた。


セフィアは、話を続ける。


「お嬢様も、以前魔力の過剰なほどの消費で倒れてしまった経験がありますでしょうが、それと同じようなリスクがあります」


「なるほど…」


魔力の過剰消費は、気を失うだけでは済まない可能性もある。

軽度なものなら一時的に気を失うだけで済むが、それ以上に使うと、体のどこかに異常が発生せる場合もある。


ミカが、その場合だ。


ミカは、ケガをしていた左腕に異常が発生したが、ケガをしていない人間の場合は、どこに出るのかわからない。

最悪、脳に異常が出る可能性もある。


そう考えると、ジェシカは危なかったのではないだろうか。


(『フライ』を躊躇わずに使って、なおかつ成功してよかった…)


と、そこでジェシカが目を覚ます。


「……ここは…」


「私たちの部屋です、先輩」


「ミカさん…負けましたのね、私」


ジェシカはそう言うと、天井を見つめる。

その目は、どこか後悔しているような目だった。


ミカは、ジェシカのすぐ側に置いた(投げ捨てたとも言う)ブレスレットを指す。


「ジェシカ先輩、これ……」


「……気づいちゃいましたのね。それは私の家にあったマジックアイテムですわ」


(よかったー! 下手に触って壊したらもう学院になんか通ってる暇なく仕事しなきゃいけなくなっちゃう!)


ミカは内心ほっとするが、ジェシカの表情は暗くなるばかりだ。


一体どうしたのだろうかとミカが思っていると、ジェシカが天井へと向けていた目をマジックアイテムへと移し、続ける。


「一度使うと、1ヶ月の使用が不可能となるアイテム。使う時の魔力量の限界はないため、家で厳重に保管されていたものですわ。

そんなものを使っても、勝てないなんて…私は愚かですわね…」


ジェシカは、体を起こして、瞳を閉じる。


それに対してミカは、何も言えない。

ミカには、何も言う資格が無い。


(私は、ずるをしているようなもの、だから)


そして、ミカは何も言わずに、セフィアと目を一瞬合わせて、部屋から出ていく。


アイコンタクトの意味は、『しばらく出る』だ。


セフィアにジェシカの世話を頼んだのである。


それを察したセフィアは、ミカが通り過ぎると同時に礼をし、ジェシカの元へと歩いていく。


「…? ミカさんについて行かなくてよろしいんですの?」


ミカがどこかに行くというのに、セフィアがジェシカの元へと来たのが意外だったのだろう。

ジェシカは顔を上げて言う。


セフィアは、微笑を浮かべながら言う。


「お嬢様の、ご配慮です」


セフィアがそう言うと、ジェシカはその意図を理解したように笑みを零す。


そして、自身の体を包み込むように、丸くなって言う。


「あの子も優しいですわね…」


そして、静かに泣き出した。


ジェシカは、単純に悔しかったのだ。

最初の模擬戦は、ジェシカの『アクセラレート』を完全に見切られ、それ以上の『アクセラレート』を返されて負けた。


2回目は、魔法の面で言うなら、マジックアイテムで魔法の差を埋めるだけではなく、性能だけ見れば、超えていた。

だが、そこでも、地力で負けた。


ジェシカが努力している間に、ミカも努力していた。


ジェシカは痛感した。

ジェシカが1歩進んだとしても、ミカは2歩も3歩も進む。


通常のやり方では。努力の仕方では、勝つどころか、ミカと同じ土俵にすら立てない。


ジェシカは、覚悟を決めた。













セフィアにジェシカの世話を任せ、外に出てきたミカは、今日が休みの日だということを思い出していた。


(そもそも、今日って体を休める日なのよね。なんで動いてるのかしら)


何故か、と言われれば、ジェシカからの模擬戦を安請け合いしたミカのせいでもあるのだが、ミカはそうとは思わず、廊下を歩いている。


時刻は既に午後の6時を回っているのだろう。

外は夕焼けが広がっていた。


そういえば、とミカは思う。


(日本で見た夕焼け、綺麗だったなぁ)


ミカが見た夕焼けは、海の中に落ちていくかのような太陽の姿だった。

昔、連れ回された記憶がある。


だが。


「…? 誰に連れ回されたんだっけ?」


昔はよく、そういった観光名所に連れていかれたような気がするのだが、それが誰なのかが思い出せないミカ。


とても、大事な気がするのだが。


(……まあいっか)


どうせ両親だろう、とミカは思い、そろそろ泣き止んでいるであろうジェシカの元へと戻ることにした。

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