44 先輩と2度目の模擬戦です!
すみません、日をまたいでしまいました!
今日の夕方から3本更新します!
模擬戦当日。
ミカは、結局勝つことにしていた。
(勝つのが当たり前、なんて思ってらいないけど、負けるつもりもない)
ジェシカに指定された場所は、最初に模擬戦を行った場所と同じだ。
ただ、あの時と違うのは、ギャラリーがいないという所だろうか。
(…今回は呼んでいないのね)
ミカの考えていることが分かっている訳では無いのだろうが、ジェシカが見通したかのように答える。
「もちろん、呼んでなどいませんわ。前回はミカさんの名前を知らせるためですもの」
「そんな意図が……」
ミカとしては、初耳である。
そして、訓練場の中央に立っていたジェシカは、そこから少し歩いて、ミカに向き直る。
そこは、模擬戦をする時の立ち位置だ。
それを見たミカは、同じように、逆の場所に立つ。
ミカの今回の武器はレイピアだ。
「それでは、参りますわよ」
「はい、どうぞ」
そう言いながら、ミカは2種類の強化魔法を発動。
『アクイバレント・エクスチェンジ』は色が出るので、それを見たジェシカが、口を開いた。
「『マジック・パニッシャー』」
ジェシカが人差し指を突き出し唱える。
その指先が淡く光ったと思った瞬間、ミカの『アクイバレント・エクスチェンジ』を解除された。
「……!?」
『筋力上昇』は解除されていないが、ミカにとっては予想外のことであった。
ミカの動きが固まったのを見逃さないジェシカは、すぐさま肉薄し、剣を振るう。
「ぐっ…!?」
悪い体制で受け止めたミカは、ダメージはなくとも、踏ん張れずに足が地面から浮いてしまう。
何も、『筋力上昇』は体重が増加する訳では無い。
ミカの足が浮いたのを確認すると、ジェシカは、剣を振った方向とは逆に回転し、その勢いのまま剣を振るう。
勢いに乗ったジェシカの剣を、防ぎはしたものの、ミカは勢いを殺すことが出来ずに横に吹き飛ぶ。
「……っ」
数秒転がり、ミカは体制を立て直す。
いくらミカとジェシカの体に体格差があると言っても、これほどまでの力の差は、明らかにジェシカも『筋力上昇』を使っているのだろう。
であれば、ミカのアドバンテージは、魔法に込める魔力量の差しなない。
獲物を扱う技術はジェシカの方が上であるし、ましてやミカはレイピアだ。
ジェシカは好機と判断したのか、魔法を呟いて突進してくる。
「『アクセラレート』」
ミカの方へ駆け出したジェシカの姿が、一瞬で加速する。
だが、目で追えないわけではない。
ジェシカが振る高速の剣を、辛うじて目で捉えたミカは、無理やりレイピアで受ける。
そして、ミカの『アクセラレート』を使用する。
(ジェシカ先輩なら、ここでタイムリミット!)
『アクセラレート』の効果は絶大だが、それ故にあるタイムリミット。
ミカは、それを狙ったのだが、ミカの考えは今回は浅かった。
ミカが高速化し、ジェシカの横腹目掛けて振るったレイピアを、同じように高速移動するジェシカが避けたのだ。
「!?」
「私も、成長していますのよ!」
そして、そのままミカとジェシカは高速戦闘へと移行する。
ミカよりも早く『アクセラレート』を発動したはずなのに、未だに高速移動し続けるジェシカ。
ミカは、焦り始めていた。
(私が込めた魔力量からして、長くは持たない…ジェシカ先輩が込めた量によっては、負ける…!)
『アクセラレート』の重ねがけは出来ない。
ミカは、何かないかと考え続けた結果、ある魔法を使おうと決めた。
それは、未だ完成とは言えない、風属性の魔法。
「もらいましたわ!」
そして、ミカの『アクセラレート』が切れ、未だに高速移動をしているジェシカが迫り来るその時、ミカは呟いた。
「『フライ』!」
ジェシカが振るった剣が、空を斬る。
既にそこには、ミカはいない。
『アクセラレート』を纏ったジェシカですらその姿を捉えることはできず、魔法の効果が切れる。
思わず舌打ちをしそうになったジェシカだったが、ミカの居場所を探すのが先決だと判断したのか、辺りを見ている。
だが、どこにもミカはいない。
それも当然であろう。
「ジェシカ先輩、これで終わらせます」
ミカは、ジェシカの上にいたのだから。
ジェシカは、空を飛んでいるミカを見て、呆然とする。
だがしかし、すぐに気を取り直し、剣を構える。
ジェシカの取っておきは先程の『アクセラレート』だったが、ミカにも取っておきはあったのだ。
だが、それは諸刃の剣でもある。
(さあ、やるわよ、私…!)
全神経を集中させ、ミカは、ジェシカへと高速で突っ込んだ。
「なっ!」
まさか、空中からジェシカに向かってくるとは思わなかったのか、ミカの体当たりをジェシカは避けられずに受け止めてしまう。
そのままミカはジェシカを押し、壁に激突する。
「がはっ!?」
いくら強化魔法を付けていたとしても、同じように強化魔法をつけていミカに押され、壁に挟まれるとなると、ダメージは普通に通る。
そして、ミカは左手でジェシカを抑えつつ、レイピアを投げ捨てた右手を振りかぶる。
そしてその拳をジェシカの鳩尾に叩き込む。
「ぐ…ふっ…」
強化魔法を貫通した攻撃に、ジェシカはそのまま意識を失う。
ミカは、ジェシカを受け止め、地面に着地する。
なんとか、集中力は持ったようだ。
(危なかった…もうちょっとで負けていたかもしれない)
『マジック・パニッシャー』。
あの魔法は、ミカにとって天敵となるかもしれない。
ただ、何でもかんでも解除する訳では無いはずだ。
であれば、対処のしようがあるというもの。
「……私も、強くならなきゃ」
ミカは、ジェシカを抱えつつ、自室へと向かった。