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43 質問したと思ったら模擬戦の申込です!

「疲れたわね…」


「お疲れ様です、お嬢様」


ミカは、部屋に帰ってくるなり、ベッドに倒れふした。


4属性使えるということが先生にバレ、進路をどうするのか、何ならここで教師として働かないかと誘われ、逃げたら追われた。


それからミカは走り続け、強化魔法で無理やり引き離して、3時間が経過していた。


そこに、ジェシカが帰ってくる。


「あら、ミカさんは今日は早いのですわね」


「ええ…まあ、そうですね」


ミカの元気の無い返事に、ジェシカは不思議そうな顔をしながら、勉強机の椅子に座る。


散々勉強しただろうに部屋でもするのか、とミカは思ったところで、以前聞きそびれていたことを思い出した。


「あの、ジェシカ先輩。少し聞きたいことがあるんですけど」


「私にお答えできることであればなんでもお答えいたしますわ」


ミカがそこまで言うと、ジェシカが勢い良く振り返る。


その勢いに少し驚きながら、ミカは話を続ける。


「あ、ありがとうございます。先日言っていた『あれ』のことなんですけど…」


「……ああ、そういえば説明していませんでしたわね」


と、そこまで言ってセフィアは立ち上がる。


腰に手を当てて、堂々としたポーズを取っているジェシカは絵になるのだが、ミカとしては今欲しいのはそんはものじゃない。


そして、ジェシカは口を開く。


「もちろん、旅行ですわ!」


「……旅行?」


ミカにとっての旅行とは、観光に行ったりして気力を回復させるようなものなのだが、それと同じなのだろうか。


ジェシカは続けて説明する。


「そうですわ。2年目になると、色んな相手と模擬戦ができる旅行を開催するのですわ」


「……」


それは旅行とは言わないのでは、とミカは言う気にはなれなかった。

ジェシカが、楽しかった、というような顔をしていたためである。


旅とは一体、とミカはよく分からなくなってしまった。


「模擬戦はもう散々やったので、私はもういいですかね…」


「あら、聞いていませんの? 聖武祭は、悪魔が出るという事件があったので、もうありませんわよ?」


「……いや、それでもなんですけど…」


聖武祭が中止だ、という話は確かに初めて聞く。

だが、ミカは模擬戦がしたい訳では無い。


セフィアの方を見ると、その情報は確かなようで、頷き返してくる。


「あの時はお嬢様が対処したおかげで被害が出ずにすみましたが、お嬢様がいなければ多大な被害が出ていました。本来なら国王から表彰を頂いてもいい話なのですが」


「そ、そう。よく分かったわ」


セフィアにこれ以上喋らせると不敬罪とかになりそうだったので、ミカが慌てて遮る。


ミカは、『コンバート』させていた剣を出す。

未だに黒いままの剣を見つめて、ミカは呟く。


「……(戦うなんて普通に)辛いのに」


「!!」


「!!」


ミカが呟いた言葉の意味は、元々日本人だから、という意味である。平和な国で過ごしていた高校生に、いきなり剣を渡したら喜んで戦う相手を求めるかと言うと、それは違う。


だが、2人は違う意味に捉えたようだった。


以前、バティスタが伝えていた、ミカの病弱設定。

あれは、今はどこにいるのか知らないアーリアが伝えたものだが、その話はここにいる生徒のほとんどが知っていた。


何故か、1年目であるはずの生徒まで。


無論、例外なくそのことを信じ切っているジェシカは、申し訳なさそうに目を伏せる。


「……お察しすることができず、申し訳ありませんわ。私、何か他に楽しいことを探しますわね!」


「え? あ、ありがとう、ございます」


突然ジェシカの態度が変わったので、ミカは困惑しつつ礼を言う。

そのままセフィアを見ると、セフィアは複雑そうな顔をしていた。


セフィアは、ジェシカとはまた違った考えを持っていた。


そもそも、セフィアはミカが強いということを知っている。

なので、セフィアが捉えた意味は、心が辛い、という意味だった。


まさに、すれ違いの3人であった______。













その日の夜。

自室で本を読んでいたミカは、ジェシカから新聞を渡された。


(というより、新聞なんてあったのね)


こちらの世界で初めて新聞を見たミカは、セフィアと一緒に記事の内容を見る。


すると、そこには、ミカがすごく見慣れた人の顔が写っていた。


というか、これは____


「お嬢様、ですね」


「言わないでよぉ…」


そう。何故か、ミカが載っていたのである。

見出しは、『天才美少女現る! 7歳にして全属性マスター』だ。


全属性の魔法をマスターした訳では無い、とミカは否定しようとして、本当にツッコむところが別のところにあることに気がつく。


「あの、ジェシカ先輩。なんで私がこれに載ってるんです…?」


「もちろん、先生方にバレたからですわね」


「………」


ミカは、本気でハゲにさせる魔法を作ろうかと考え始めた。


そして、その新聞をジェシカに返し、ミカはベッドの上の枕に顔を埋める。


(とりあえず、あれは忘れましょう。今は新しい魔法を考えないと)


ミカが考えている新しい魔法。

2つ目は、『飛行魔法』だ。


授業中にやった、『体を浮かせる魔法』ならできないことは無い。

だが、それは言うなれば『浮遊魔法』で、飛ぶとはまた違う。


そこで、ミカはまるで猫型ロボットよろしく空を自由に飛びたいと考えたわけだ。


魔法名は『フライ』。

ミカの意識と深く繋げ、自身を左右に動かしやすくしている。


ただ、これは今までの魔法よりも集中力を必要とした。


(前に試した時は、ちょっとでも集中力が途切れると魔法が消えちゃうのよね)


魔法が暴走して、ミカの意識に異常が起こるよりはマシだろう。

とはいえ、ミカは行き詰まりを感じていた。


家で全く進まなかった理由は、雪のせいというのもあるが、行き詰まりになっていたということもある。


(他の考えてる魔法を…いや、先にこれを完成させちゃおう)


中途半端にしておくのは、ミカ自身が許さなかったようだった。













「ミカさん、私と模擬戦をしませんこと?」


「へ?」


戦闘狂からしたら旅行だねなんて話をして(いない)、それから2週間後。

自室でいつも通り魔法を頭の中で構成させていたミカは、ジェシカからそんなことを言われた。


「私、聖武祭でミカさんとやりたかったのに、やれませんでしたから」


「……わかりました、やりましょう」


「それでは、明日の放課後に」


ミカは、意外にもあっさりと了承し、ジェシカは既に場所は抑えていると言わんばかりに日時を指定してきた。


ミカがあっさりと了承したのは、単純に断っても面倒そうだったからだ。

であれば、適当に相手して、ちょうどいい所で負ければいいだろう。

そう考えていたのである。


そうとは知らないジェシカは、ミカが断らないことにすっかり気分を良くし、シャワーを浴びに行く。


セフィアは、そんな2人を見て微笑んでいるだけだ。


ミカは、ジェシカとの模擬戦に向けて、より詳しいシナリオを考える。


(負ける、というのは少しおかしいかしら。ジェシカ先輩が負けた相手に勝ったのに、とか言われるかしら)


それに加え、ミカは一度ジェシカに勝利している。しかも危なげなく。


であれば、当初考えていた、負けるという方法は取れない。


今更ながら、模擬戦を受けたことを後悔し始めたミカだった。


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