40 ワープです!
誤字報告またまたありがとうございます!
私も頑張って気をつけているんですが、気づかないうちに誤字してるんですね…
見つけたら、御手数ですがご報告お願いします!
翌朝。
夜中考え抜き、ひとまずジェイナの言葉を置いておくことにしたミカは、実用段階へと移り始めている新魔法の作成に取り組むことにした。
(ルールを崩すな、って言われたばかりなんだけどね)
作りかけのものは全て作ってから、とミカは考えたようだが、ミカの作りかけの魔法は全部で5つある。
それのどれもが、誰かを助けるために必要になるかもしれない、というミカの思いから来たものである。
まず1つ目は、転移魔法だ。
(多分だけど、この世界の人間は『一瞬で長距離を移動する』っていうイメージが出来ないはず。だったら、見ただけじゃ真似出来ないわよね)
見ただけで真似できるのはこの世界ではミカだけなのだが、自分の才能をよく分かっていないミカは、自分が出来るなら他人にも出来るかもしれないと考えている。
そんなことは無い、と、セフィアの顔に書いてあるのだが、ミカは気づかない。
魔法名は『テレポート』で固定だろう。
後は、どう実験するかだ。
(そもそも、『テレポート』って言葉の意味を理解して、更にどういう仕組みなのかも理解しなきゃ新しい魔法は正しく発動しないってことは分かったのよね)
そして、ミカは寝転がっていたベッドから離れて立ち上がる。
目を閉じ、セフィアの隣に移動している自分をイメージする…。
「『テレポート』!」
目をカッと開き、魔法を唱えるミカ。
すると、ミカの視界が一瞬で切り替わる。
「……」
「…お、お嬢様が消え…!? あ、お、お嬢様…」
ミカの視界に映っているのは、先程まで自分が立っていたであろう場所。
隣にはセフィアがいるので、魔法は成功した、のだろう。
ただ、少し違う気がするミカだった。
(これじゃ、『長距離転移』じゃなくて『短距離転移』じゃない。言うなれば『ショートワープ』かしら)
と、ここまで考えて、ミカは1つ思いつく。
「『ショートワープ』」
ミカが唱えると、ミカは一瞬で、ベッドの上に移動する。
次々とミカの場所が変わるので、セフィアは目で探すのが大変そうだった。
ミカは、顎に手を当てて考える。
(これ、魔法名唱える意味、ちょっと違うのかしら…?)
この世界の人間が習う魔法名の意味とは、その魔法名を唱えることで魔法が連動して発動する、というものだ。
だが、ミカはこう考えた。
そも、魔法というのは精霊に呼びかける専用の言語のようなもので、精霊は人間のイメージを読み取っているのではないかと。
そして、イメージが無ければ、簡単な魔法であれば、他の人が唱えた経験からその魔法を発動させている。
先程の実験で、ミカはそう考えた。
(ただ、そうなるといよいよ、お母様が言っていた『ルール』に触れるような…)
と、そこまで考えて頭を振る。
(お母様の言ったことはとりあえず置いといて! 今は魔法を作れたことを喜ぶべきね)
そして、ミカは次の実験へと移る。
イメージするのは、以前1回入ったことのあるバティスタの部屋だ。
「『テレポート』!」
そして、一瞬で視界が切り替わる。
目の前には、椅子に座り、忙しそうに書類を見つめているバティスタ。
バティスタはこちらに目を向けず、口を開く。
「ああ、お茶ならそこに置いといてくれ」
「……?」
お茶は今、ミカは持っていない。
なので、一旦帰って、セフィアのお茶を持ってくることに。
今度は、『ショートワープ』を唱えるミカ。
だが、変化は無い。
やはり、ミカの想像、イメージ通り、距離には制限があるようだ。
精霊が英語を理解しているのかは分からないが。
今度はしっかりと『テレポート』し、セフィアの前に現れる。
突然現れたミカを驚いて見た後、セフィアは気持ちを切り替え、口を開く。
「どうかしましたか、お嬢様」
「ちょっとお茶を用意してくれない?」
「少々お待ちください」
そして、数分でセフィアがお茶を持ってくる。
「どうぞ」
「ありがと」
セフィアからお茶を受け取り、ミカは『テレポート』する。
行先は、もちろんバティスタの部屋だ。
移動したミカは、バティスタの机の上にお茶を置く。
「ああ、ありがとう……ん、美味いな。君がいれたの…か……」
「いいえ、私のメイドであるセフィアがいれましたが」
「………」
バティスタは、ミカがお茶を置くと、置いたミカを見ずに一口飲み、驚いたように顔を上げた。
まさか、置いたのがミカだとは夢にも思わなかったのだろう。
バティスタは、お茶を持ったまま固まってしまった。
(まあ、私がいたらおかしいわよね)
とはいえ、ミカも理由は察しているので、すぐさま退散することにする。
「それでは、私はこれで失礼します。そのコップは…まあ、学院に来た時にでも」
「あ、ああ…」
それだね言うと、ミカは『テレポート』で帰宅する。
もう慣れたのか、ベッドの横に突然現れたミカを見て、動じずにセフィアが話しかける。
「お嬢様、どちらに?」
「ちょっと学院までね」
普段なら数時間かけて移動しなければいけない距離なのだが、『テレポート』なら一瞬だ。
ただ、行ったことがある場所に限るようだが。
(でも、便利な魔法よね)
『ショートワープ』に関しては、戦闘でかなり有利になるだろう。
ただ、ミカが魔法を作った時困るのが、魔力消費量が毎回分からないという点だ。
ミカの自宅から学院までというかなりの距離を移動したのに、魔力の消費は感じられない。
「………」
『ショートワープ』の使用は出来るだけ控えよう、とミカは思ってしまった。
『アクセラレート』の上位互換のようなものという捉え方も出来てしまうのだ。
(誰かが見て真似したら嫌だし……)
ダンジョン内だけ使おう、とミカは決めた。
こうして、ミカが考えている新魔法のうち1つが、完成した。
思わぬ副産物も作りながら。