31 学院に戻るんです!
学院に到着したミカ達は、そのまま寮へと向かった。
時刻は既に12時を過ぎている。
(今さら教室に出るのも、なんだか面倒だし…それに、やることもあることだし)
まずは、魔力譲渡の魔法、『マジック・アサインメント』を、魔法として確立する。
ただ、これが何魔法に属するのかは不明だ。
(そんなこと言ったら、私の『イクス・マグナ・レイ』もなんなのかわからないし)
とりあえず、オリジナル魔法とかにしておけばいいだろう。
もし仮に他人に聞かれても、『企業秘密です』で押し通せる。
ミカは、早速、セフィアの手を取る。
「セフィア、少し実験するわよ」
「はい、お嬢様」
そして、ミカは『マジック・アサインメント』を発動する。
今回は、ミカがセフィアに譲渡する形だ。
ミカの体が緑に光り、セフィアは青に光る。
セフィアは驚きに目を見張った。
「……お嬢様、何かが、流れ込んできます…!」
「それが魔力よ」
魔力を打ち出す、ということを、悪魔との戦いで感覚でわかったミカは、魔力を捉えることが出来るようになっていた。
そして、この『マジック・アサインメント』を使えば、他の人も魔力を感知することが出来る。
「それじゃあ、今度は逆行くわよ」
「はい」
そして、ミカは今度は逆向きに発動する。
セフィアから流れてくる魔力は、暖かいものだった。
ふと、ミカがセフィアの方を見ると、セフィアは魔力をミカに移しているのにどこ吹く風だ。
「お嬢様、今なにかしていますか?」
「……何かが吸い取られるような感覚はない?」
「いえ、ありません」
と、セフィアが答えた時、セフィアからの魔力が途切れた。
ミカは魔法が途中で切れたのかと思ったが、特にその様子はない。
セフィアも、魔力が無くなって倒れたりしている訳では無い。
「……?」
「……」
(一体、どういうこと…?)
ミカの左腕の仮説の発展上で、人間が過剰な魔力消費を使うと、気を失うとなっていたのだが、これでは間違っていることになる。
しかし、セフィアとの『マジック・アサインメント』で、ミカはいい方法を思いついた。
「セフィア、いい方法を思いついたわ」
「さすがです、お嬢様」
そして、ミカはセフィアの手を借りつつ、再び学院から出ていく。
学院から少し離れた場所。
近場の山の頂上にて。
「はぁ…はぁ…」
「お嬢様、無理はなさらずに…」
ミカは、死にそうになりながら頂上を目指していた。
ミカの思いついたいい事とは、この地から魔力を貰うこと。
多少なら、問題は無いと判断したようだった。
それで、なぜ山の頂上へと来ているかと言うと。
「さて……『アナライシス』」
ミカは『アナライシス』を発動させ、この頂上越しに地上を分析し、どこが1番魔力が濃いか探しているのだ。
とはいえ、ある程度魔力を確保出来そうなら、ここでも構わない。
(……まあ、ここでも十分ね)
そして、ミカは『アナライシス』を解除。
代わりに、『マジック・アサインメント』を発動する。
大地が緑に光り、ミカが青色に光る。
すると、ミカの体に膨大な魔力が流れ込んできた。
(……こりゃすごいや)
そして、そのまま回復魔法を唱える。
回復魔法のスペルは。
「『リペア』!」
ミカ的には『ヒール』でもいいかと思ったのだが、外傷は無いので、『左腕が動かないという欠損を治す』という意味を込めて、今回は『リペア』になった。
ミカが唱えた瞬間、ミカに入り込んできていた魔力がどんどん減っていく。
「うわっ…」
「お嬢様!?」
ミカ自身の魔力は減っていないが、大量の魔力移動で目眩を起こすミカ。
後ろに倒れそうになったミカ、セフィアがしっかりと支える。
すると、ミカの左腕が緑色に光り出した。
「……!」
「お嬢様、これは…!」
2人が驚いてみていると、その光は段々と収まり、やがて消えていった。
気づけば、『リペア』を使った際の魔力の移動も起こっていない。
『マジック・アサインメント』も切れているようだ。
(というか、これぐらいなら意外と私の魔力でも出来たかも…でも、一気に吸われる感覚はダメかもしれないわね)
そして、ミカは左腕が動くかどうかを確かめるが、動かない。
悪くはなっていないが、良くもなっていないという感じだ。
「……?」
「お嬢様、左腕の様子はどうでしょうか?」
セフィアが、真面目な顔で問いかける。
(そこまで真剣にならなくても…って思うけど、ありがたいって思いもするのよね)
「まあ、明日になったら変化が起きてるとか、そんな感じかもしれないわね。もしダメでも、何回でも唱えるわ」
そう言いながら、セフィアの手を借りながら立ち上がり、2人は寮へと戻って行った。
寮に戻った2人が最初に会ったのは、ジェシカだった。
「ミカさん!」
「わっ…ジェシカ先輩?」
ジェシカは、ミカを見るなり抱きついてきて、またセフィアがミカを支える。
(私って久しぶりにあった人に抱きつかれる呪いでもかけられてるのかしら…)
ミカはそう思っているが、これには理由もある。
ジェシカが目に涙をためて、ミカから離れて言う。
「ミカさん、心配したんですのよ! 私たちをその身を呈して守ったが、莫大な力の代償で倒れたと聞いた時は!」
「……」
事実ではある。
しかし、幾分か誇張されているような気もしないでもない。
ミカの複雑な思いも知らず、ジェシカは話を続ける。
「この学校の生徒どころか、教師までもがソワソワしていますわ、今でも!」
「……」
それは私のせいなのだろうか、とミカは一瞬思ったが、心配してくれていると思えば、悪い気はしない。
それどころか、少し恥ずかしい。
「とにかく、何があったのか部屋で聞かせてくださいまし!」
「は、はい、わかりました」
そして、3人は部屋へと向かっていく。
その間に、ミカと歩いているジェシカを見た生徒が、他の生徒へと情報を流し、この学院全体を覆っていたソワソワは、一瞬で霧散し、また別のソワソワが覆った。
ミカに会って、『ありがとう』と伝えたい人もいれば、『すまない』と伝えたい人もいる。
ミカに助けられた人は
沢山いるのだ。