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30 ケガを治そうと思うんです!

ミカが目を覚ましてから1週間がたった。


ミカがひたすらリハビリに励んだ1週間だったが、その間にもアーリアは帰ってこなかった。

ただの一度たりともだ。


これにはさすがに不安になったミカだが、どれだけジェイナに聞いてもはぐらかされるだけだった。


「人の心配より、お嬢様はお嬢様の心配をした方が」


セフィアにもそう言われる始末。


(それもそうかもしれないわね…)


ジェイナが笑顔ではぐらかすのなら、無事だということにもなる。

であれば、ミカは他人の心配などしている場合ではないだろう。


そんなわけで、ミカは自室にこもって魔法を作ろうとしている。


(前に使った魔法…『イクス・マグナ・レイ』だったかしら)


あれをもう一度使いたいという気持ちがあるミカだが、それと同時に、今度は右腕すら動かなくなったらどうしようという恐怖もあるミカだった。


机には、ミカが乱雑に書いたメモが置いてある。


(回復ってイメージは、私は簡単に出来る。けど、それをしようとした時、どれだけ魔力が必要なのかがわからなのよね…)


問題は、治そうとしているのが自分であるといあ点だった。


ミカの左腕が動かない理由が魔力によるものならば、これ以上過度な魔力の使用は控えたいところ。

しかし、肝心の治す魔法を作る時、どれだけの魔力が必要かわからず、ミカは尻込みしている。


(仮に私以外の誰かにやってもらうとしても、魔力が足りるか…あ、いいこと思いついた)


ミカが思いついたいい事とは。


それは、『魔力を他人から受け渡しする』魔法だ。


(これで、私以外の魔力を使えれば、私のリスクは考えずにすむ…けど、問題はその私以外の人よね…)


ミカの魔力量で問題になるのなら、ミカ以外では問題外だろう。


ミカはどうしたものかと、ペンを机に置く。


「ふぅ…やっぱり、試してみるべきなのかなぁ…」


「お嬢様、お困りですか?」


ミカが悩んでいると、セフィアがホットミルクを持ってきた。


ミカはそれを「ありがとう」と言い受け取ると、頷いた。


「そうなのよね。……この左腕を治すには、リスクが伴う、というか」


「なるほど……それは、私がなんとかすることは出来ないのでしょうか?」


すると、至極真面目な顔でセフィアがそんなことを言ってきた。

しかし、ミカはあの方法を進んで言う訳にはいかない。

他の方法を考えたいのだ。


「う〜ん……あることにはあるんだけど…でも、私が嫌って言うか…」


と、ミカが柔らかく大丈夫と伝えようとすると、セフィアは表情を変えず、ミカを真っ直ぐに見て、口を開いた。


「お嬢様……私は、お嬢様の力になりたいのです」


ミカがセフィアの方を見ると、その顔は覚悟を決めた顔だった。


「……ありがとう。セフィア。でも、これだけはわかって。私は私のために誰かを犠牲になんてするぐらいなら、死を選ぶから」


「はい、お嬢様」


ミカがそう言うと、セフィアは笑顔を浮かべた。

最初からそう言うと、分かっていたようだ。


(やれやれ…セフィアには何でも見通されてそうね)


しかし、セフィアの協力を得たところで、ミカはまだ魔力譲渡の魔法を確立していない。


やることは、沢山ありそうだった。


「それじゃ、早速手伝ってくれる?」


ミカはそう言いながら、手を差し出す。

まだ自分の力では立てないのだ。


セフィアはそれを見て、笑顔で手を取る。


「もちろんです、お嬢様」


2人の絆は、もしかしたら家族よりも強固かもしれない。









その日の夜。

夕食を食べ終えたミカは、セフィアの手を借りて部屋のベッドに寝転がっていた。


「ねえ、セフィア」


「はい、お嬢様」


「私…学園に戻ろうと思うの」


「それは…新魔法を作るという目的を早く達成できそうだから、でしょうか?」


「さっすが。その通りよ」


正直いって、ジェイナの部屋にある魔法の本は全て読んでしまった。

過去には、魔法の宝庫、なんて評価をしたが、実際には浅く広くだった。


ミカが求めている知識は高度な魔法なので、ジェイナが持っている本には無かったのである。


「ですが、お母様が許可してくださるか…」


「……まあ、そこはなんとかするしかないわね」


ミカはむくりと起き上がり、セフィアはミカの服を脱がしていく。

阿吽の呼吸だ。


そして、寝間着姿になったミカは再びベッドに倒れ込む。


(……もしダメだって言われたら、リスクを承知で魔法を使ってみよう)


8割は、魔力譲渡も回復魔法も構築できている。

ここに来て、日本での論理的な思考が役に立っているようだった。

だが、要になるのはイメージだ。


ミカは、イメージしながら眠りについた。











次の日。

朝食を食べたミカは、ジェイナに言うべきことを伝えた。


「お母様。私、学院に戻りたいと思います」


ミカがそういった時、ジェイナの目が細められる。

それだけで、ミカは心臓を締め付けられる気持ちになる。

母親とは、また別の意味で強者だった。


「……それは、しっかりとした考えがあるから、なのよね?」


「はい、お母様」


「……」


ミカが即答し、ジェイナは目を閉じた。


それから数秒がたち、ジェイナは目を開く。

そして、笑顔で言った。


「わかったわ。行ってらっしゃい」


「お母様…! ありがとう!」


ジェイナがミカの願いをあっさり承諾したのは、2つ理由がある。


1つは、ミカが重要な場面で考え無しに行動したことが無いから。


もう1つは…ミカが学院に行けば分かるだろう。


ミカは、セフィアの手を借りながら急いで戻り、準備を始める。


と言っても、片腕で持てる範囲のものだが。


「あ、忘れてた」


ミカは『コンバート』があることを思い出した。

これを使って、ダメそうなら『筋力上昇』をかければいい。

そう考えたミカだが、一瞬躊躇う。


「……ええい!」


ミカはそう言いながら、服や剣を『コンバート』していく。


一瞬の躊躇は、魔力に対して過敏になっているからである。


「セフィア」


「はい、お嬢様」


セフィアは、ミカに言われて…というより、アイコンタクトで馬車を呼びに行く。

馬車は、家に備え付けられている装置を起動させるだけで、そのうち来る。


タクシーより便利だ、とミカは思う。


それから数時間後。


馬車が到着した。


「それではお母様、行ってきます!」


「はい、行ってらっしゃい」


ミカとセフィアは馬車の中に乗り込み、馬車は動いていく。


ジェイナは馬車が見えなくなるまで見続け、小さく零す。


「…また、寂しくなるわね」


家には、ジェイナが1人でいることになった。


何かモンスターをテイムするか、お金は余っているから人を雇うか悩むジェイナだった。


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