26 セフィアの思わぬ技です!
何とか今日中に上げられました!
明日も予定通り3本上げられたら上げますが、難しいかもしれません…!
その時は2本上げます!
「お嬢様、そのケガで出るのですか?」
「もちろん。…まあ、ダメそうだったら降参するよ」
現在、ミカとセフィアは、選手用の控え室で手当をしている。
セフィアの手当は的確で、先程までの痛みが嘘のようだった。
しかし、ミカには驚く点が1つあった。
(まさか、お父様とお母様が見に来ているなんて…)
ミカが横薙ぎを腕で防ぎ、その後の攻撃で一撃で倒したミカを見た時は、アーリアは喜んでいたと言う。
しかし、その後も動かずにその場に立っているミカを見て、おかしいと思ったアーリアは、ミカのどこがおかしいのか観察してしまった。
その結果、骨が折れているとわかったアーリアは選手用の控え室まで乗り込んでくる事態にまで発展した。
警備員にしっかり抑えられていたので、しばらくここにいれば大丈夫だろう。
正直言って、ミカは例え父親でも、セフィア以外の人と話す元気すら無かったのだ。
「申し訳ありません、お嬢様。せめて私の部屋にさえいければ、もう少しましな治療が出来ましたのに…」
「いいって…次の試合が終わるまでに持ってきてくれればいいよ」
セフィアが治療道具を持ってこれなかった理由は、第二回戦はまさかのミカスタートだった。
この時ばかりは心の中で『バティスタの馬鹿野郎!』と叫んだミカだった。
ミカは、自身を奮い立たせて、その場から立ち上がる。
「よしっ! それじゃあ、行ってくる」
「はい、お嬢様。……無理はなさらずに」
「うん」
まるで戦争に行くような会話だ、とミカは思ったが、成績が関わっているので、あながち間違いではない人もいる。
そして、対峙した選手は、それに当てはまる人だった。
気合いを入れるためなのか、頭は坊主の男子だった。
(え、そんな風習この世界にもあるの?)
「絶対に勝つ!」
「……」
既に気迫で負けているように見えるが、ミカも、内心は相当気合いが入っている。
(絶対に、ケガしない!)
そのベクトルは、違ったようだが。
試合開始のコールが鳴り響く。
先程の失態は犯さないミカは、『筋力上昇』と『アクイバレント・エクスチェンジ』を同時に唱える。
そのミカの強度を知らない男子は、ミカがケガをしてだらんとなっている左腕に狙いを定めて、剣を振り下ろす。
しかし。
「!」
「見え見えなのよ」
『コンバート』させていた剣を右手で取り、男子が振り下ろした剣をはじき飛ばす。
ただの力技だが、6歳の女の子ができる技ではない。
武器を落としたことにより、勝敗はついた。
今回の聖武祭始まって以来、最速で試合は決まった。
「お嬢様!」
「あ、セフィア」
例によって控え室で待機していたミカは、セフィアが来るまで待っていた。
そして、セフィアは医療箱を片手に走って入ってきた。
「お嬢様、治療を開始します!」
「え? あ、うん。よろしくね」
そして、セフィアは目にも止まらぬ速さでミカのつけている包帯を解き、細い針を両手でブスブスと刺したと思うと、再び包帯を巻いた。
ちなみに、包帯はしっかりと新しくなっている。
庶民なら使い回しするのだが、ミカは貴族なので、衛生面優先だ。
しかし。
「セフィア、今のって…」
「針で直接骨を戻しました。先程触らせて頂いた時に、だいたい把握しましたので」
セフィアは色々と、人外の道を歩み始めているようだった。
「ちなみに、それってメイドの極意の中に」
「入っております」
訂正。
(人外なのはお母様だった)
とはいえ、セフィアの針治療(?)のおかげでだいぶ楽になったミカだった。
もう今では、腕を軽く回すことすら出来る。
とはいえ、無理は禁物だろう。
これ以上悪化したら、ミカとしてはいよいよ治癒魔法を作るしかなくなる。
「でも、次の試合までかなり時間があるし、しばらく寝ていようかな…」
「それでしたら、私は外で待機していらっしゃるお父様を、お母様の元へと送り届けてきましょう」
「あ、ありがとう…。あ、そうだ。『私は大丈夫』って伝えてもらっていい?」
「かしこまりました」
そう言って、セフィアは控え室を出て行った。
耳をすませば、何やら外で『おい、ミカは大丈夫なんだろうな!?』とアーリアの大声が聞こえてくる。
それきり何も聞こえなくなったので、セフィアがミカの伝言をしっかり伝えたのだろう。
「……ダメだ、疲労が溜まってるみたい…」
ミカは備え付きのベッドに横になり。
(私の部屋の横にあるベッドより硬い…)
などと心の中で文句を言いながら、しばしの休憩に入った。
「お嬢様、第二回戦が終了しました」
「……もう、なのね」
元々、第一回戦に出ていた選手数は64人。
それが第二回戦で32人になり、第三回戦は16人だ。
人が少なくなったということは、試合と試合の間の時間が短くなるということ。
休みたければ棄権するかわざと負けるかすればいいのだが、ここまで痛い思いをしたミカは、引くに引けなかった。
(こんな痛い思いをしたのよ。その代価は、優勝しかないでしょ)
後先を考えずに、ミカはただのイライラでそう決める。
それを察したセフィアは、後々可愛いミカを見られることを直感的に理解し、それを止めようとはしない。
ミカが困る姿も、また可愛いのだ。
「さあ、もうこうなったら優勝するわよ!」
「その意気です、お嬢様」
ミカは、痛くない右手を高く上げ、意志を確固たるものにする。
優勝まで、後、4試合。