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23 過保護です!

すみません、区切りをつけるために今回は少し短めです!

「う…まだ痛い…」


「まだ痛むのでしたら、無理をなさらずとも…」


「いや、そろそろ行かなきゃね」


ゴルドーとの模擬戦から1週間と1日。

ミカの腹の骨は完治とは言えないが、ある程度治ってはいた。

それまで、この1週間ずっと寝たきりだったミカは授業にも出られず、また、その後のミカ自身の評価もどうなっているのか知らなかった。


唯一情報を仕入れることの出来る相手であるジェシカは、『それはご自分の目で確かめるといいですわね』としか言わない。


(私の思った通りになってればいいんだけど…)


と、ミカは心配しているのだ。


実際、あの場で聞いていた会話から、『ミカ・ヴァルナは全力でジェシカと戦っており、そのあとのゴルドーとの戦いは無理をしていた』となっていることは明白だった。


ミカは、痛む部分を抑えながら、教室に入る。


「おはようございます」


「ミカ様!」

「お怪我はもういいのですか?」

「ミカ様、これはあの有名な『ボンゴレ』から取り寄せた薬ですわ、ぜひお使いください!」

「ミカ様、なぜ無茶をなさったのですか!」

「元々体が弱いというのに!」


「……ん?」


前半はよかった。

ミカの思い通りに勘違いをしてくれ、なぜか薬まで受け取ってしまった。

しかし、後半がおかしい。


(私の体が弱いって話、どこから聞いたのかな?)


ミカが不思議に思って、どこから聞いたのか聞くと、予想外の答えが飛んできた。


「ミカ様が休み始めた日に、学園長が来たのですわ。親から聞いた話だと仰っていました」


「……そっか」


ということは、アーリアとジェイナとバティスタのせいということになる。


ミカの目論見としては、『天才だが体力が無い』という状態に落ち着きたかったのに、『天才で強いが、体が弱い』ということになってしまった。


(………まあいっか)


それでミカが考えていることがマイナスになるわけではない。

そう考えていたのだが。


「セフィア、次の時間はなんだったかしら?」


「次は訓練でございます」


セフィアに確認をすると、次は訓練だと言う。

ミカは立ち上がり、訓練場の場所に向かおうとすると、ミカの前に何科が置かれた。


車椅子だ。


「……これは?」


「ミカ様、どうぞおすわり下さい」


「私たちが押しましょう!」


なんと、クラスの全員が、過保護になっていた。


この時は、セフィアが『それならば、私が押しますので、皆様はご自身の準備をなさってください』と言ってくれたおかげで事なきを得たのだが、そのあとも大変だった。


続いてやってきた問題の時間は

給食の時間。


この学院では、昼の時間に給食が配布されるのだ。


今日のメニューは何かと、心の中で楽しみにしていたミカは、給食を受け取ろうと、列に並ぶ。

すると、そこに並んでいた生徒全員が、横に割れたのだ。


(わー…モーゼの気分。って、違う違う。何これ?)


ミカが戸惑っていると、ミカの前にいた女子が言う。


「ミカ様、どうぞ」


「…どうぞ?」


「ミカ様、取ってきましたわ!」


そして、前から別の女子が歩いてくる。


その女子がお盆に乗せている今日のご飯は、カレーだ。

この時ミカが感動するべきは、『カレーがこっちの世界にあるなんて!』なのだろうが、この時だけは違った。


(金髪ドリル!)


そう、給食を持ってこちらに来たのは金髪ドリルの少女だったのだ。

赤い目に、端正な顔立ち。それに加えて金髪ドリル。

もはや、ミカには文句のつけようがないくらいだった。


そして、その意識は給食へと向かう。


(あ、カレーってこっちの世界にあるのね)


カレーは金髪ドリルに負けたようだった。


その金髪ドリルの少女の名前は、へスティア。

神話の女神ではなく、こちらの世界ではただの名前ようだった。

ちなみに、この世界にも、女神はきちんといる。


「さ、ミカ様!」


その金髪ドリル美少女、へスティアが、持っているカレーをミカに差し出す。


その行動にいまいち理解が出来ないミカは、それを受け取らずにいた。


「それは、へスティアの分でしょ。私はちゃんと並んで食べたいんだから、いらないよ」


「……ミカ様…」


それを聞いたへスティアは、涙ぐんだかと思うと、周りに設置してあるイスに走っていった。


(……どうしたんだろう?)


へスティアの行動の意味が最後まで分からずに、へスティアから視線を外して前を向くと、前にいた人全員が泣いていた。


「なんで!?」


「お嬢様、とりあえず今は、先に受け取ってしまいましょう」


「え、ええ、そうね…」


セフィアの助言に従い、とりあえずカレーを受け取り、席に座るミカ。


食事は基本的にセフィアと、たまにセリナを交えてとる。


そして、ジェイナ直伝の、お嬢様の食べ方でカレーを食べるミカ。

陽射しを薄く受けながら優雅に食べるその姿は、後に『女神の食事』と呼ばれるようになる。


当の本人がそれを知るのは、やはり、かなり後の事だった。

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