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22 模擬戦、からの模擬戦です!

予定通り4本更新できそうです!

約束の休日。


「それでは、行きましょうか」


「はい、ジェシカ先輩」


ミカが既に抑えている練習場に向かって、2人は歩き出した。

セフィアはミカにとあることを頼まれ、ここにはいない。


そして、2人が中に足を入れると、歓声が上がった。


「ミカ様〜!」

「ジェシカ、頑張って〜!」

「ミカ様〜!」


あまりに大きな歓声だったので、ミカは驚くが、ジェシカに驚いた様子はない。


「ジェシカ先輩、これ、先輩が呼んだんですか…?」


「ええ。私たちの模擬戦は、他の人にも勉強になるかと思いまして」


「なるほど…」


言わずもがな、素直なミカはそれを正直に信じてしまう。

そんなミカを見ていたジェシカは、少しミカを心配そうに見つめ、練習場の中心へと向かっていく。


「それじゃあ、始めましょう」


「……わかりました」


そして、ジェシカがレイピアを抜く。

それに対して、ミカは何かを悩んでいる様子だ。


ジェシカは怪訝そうな顔で言う。


「ねえ、あなた武器は?」


「あ、忘れてました」


人があまりにも多くて、武器を持つことを忘れていたようだ。


ミカは、右手を横に突きだし、『コンバート』していたレイピアを取り出す。


「……やはり、それをそんなにスムーズに出来るのはあなただけですわね」


「……?」


『コンバート』し終わったミカは、鞘からレイピアを抜き、鞘を腰に差す。

前にバティスタとやりあった時は、どうしたものかと悩んだ挙句に持ったままやっていたのだが、そもそもベルトに差しておけばいいということに気がついた。


「それでは、参りますわよ!」


そう言いながら、ジェシカが突進してくる。

その間にも、ジェシカの口は動く。


「『アクセラレート』!」


「!」


ジェシカの動きが、一瞬で加速する。

しかし、ミカとてただ過ごしていた訳では無い。

今では、ある程度の範囲なら反応できるようになっていた。


これは、『アクセラレート』を使えるセリナの存在が大きい。


金属と金属がぶつかる甲高い音が鳴り響く。


『アクセラレート』の効果は絶大だ。

使う人によれば、その速さは音を超える可能性すらある。

しかし、そのリスクもまた大きい。

『アクセラレート』の効果が切れた数秒。ほんの数秒だが、激しく動けなくなる。

それに加えて、数十秒再度使用不可能になる。

持続時間も、魔力量によって変化するとはいえ厳しい。


ミカが容易に防ぐとは思っていなかったジェシカは、思わず動きを止めてしまう。


その瞬間。


「『アクセラレート』!」


ミカが『アクセラレート』を唱える。


加速したミカをジェシカは目で捉えることは不可能だった。

前に出したままのレイピアを上に弾かれ、首元に添えられる。


勝負は、決まった。


一際大きく歓声が上がる。


負けを認めたのか、ジェシカは力を抜き、ミカに握手を求める。


「私の完敗ですわね」


「ありがとうございました、ジェシカ先輩」


(というか、こんな姿を見せちゃった以上、わざと負けるとか無理くさくない?)


この勝負、実は5分もかかっていない。

観客から見たら、楽に勝ったと思われているだろう。


「……」


ジェシカは、弾き飛ばされたレイピアを拾い、そのレイピアをじっと見つめたあと、鞘に戻した。


そして、観客に向けて言う。


「さあ、私に勝ったミカ・ヴァルナに挑む者はおりませんこと!?」


「!?」


その言葉にミカは体を大きく揺らして驚く。

そもそも、そんな予定は無かったはずだ。


ミカが『どうしたんです?』と言った顔で見ていると、ジェシカがウインクしてきた。

恐らく、『良い経験になりますわよ』ということだろう。


(……まあ、ここで負けておけば、体力が無いって言い訳にもなるか)


自分の身に起きたことが起きたことで、言い訳を作るのが上手くなっていたミカであった。


そこで、見に来ていた1人、男子が立ち上がる。


「俺がやろう」


見るからに強そうな、体つきのいい男子だ。

まだミカとそう年も離れていないはずなのに、どれだけ鍛えたのだろうか。


「では、お願いしますわね」


そう言って、ジェシカはその場から離れていく。


さて、困ったことになった。


「……」


「俺の名前はゴルドー……まぁ、名前だけで十分だろ」


「私はミカ・ヴァルナです」


「ああ、よろしく頼むぜ」


そしてゴルドーは、一緒に出てきた男、恐らく従者である者から大剣を受け取る。


(……ひぇ…さっきのジェシカ先輩の攻撃を受けられたのは、女子の力だったからで、この人のをまともに受けたら吹き飛ばされそう…)


と、そこまで考えたところで、名案を思いつく。


(ここで吹き飛ばされて負けることで、いい感じに演出出来るんじゃ?)


そう考えたミカは、『アクセラレート』を使わずに戦おうと決める。


ミカの中で一番弱い強化魔法の『筋力上昇』でも、それを唱えてしまえばゴルドーは簡単に倒してしまうだろう。


「さあ、行くぜ!」


そう言いながら、ゴルドーは突進してくる。


(どうしてこの世界の人達は、戦う時必ず最初は突っ込むのかしら)


「はっ!」


しかし、ミカとてただ黙ってやられる訳では無い。

バティスタやジェシカの時ではしなかった、先手を放つ。

これにより、ミカが焦っているという印象を誰かが察してくれれば幸いだ。


「ん? 様子がおかしい」


観客の声が聞こえてくる。


「様子がおかしいって、どういう風にだ?」


2人とも男子の声だ。

何を話しているのか気になったミカは、ゴルドーに牽制をし近づけないようにしながら、会話に集中した。


「ミカ・ヴァルナの動きが、先ほどよりもタイミングが早くなっているような気がする」


「そう言われてみれば確かに……」


「決着を急いでいる…?」


「でも、なんでそんなことを…まさか、体力の限界が近い?」


(よし、いい感じね!)


ミカは内心ほくそ笑んだ。

ここまで思い通りに思い込んでくれるとは思っていなかったのだ。


先程の2人の男子の会話は、周りで聞いていた人が噂をし、さらに広がっていく。


(そう、私はまだ6歳の女の子!)


6歳の女の子がレイピアを振り回す時点でおかしいのだが、そこはこの世界では普通なようだった。

日本と違い、子供成長速度が早いのだ。


故に、この学院の4年生にもなれば、女子とは体格の差が出てくる。


(そろそろ、負けるタイミングね)


「やっ!」


「ぬぅっ…」


ミカが、かなり早いタイミングで突きを放つ。

もう少し遅く放てば、ゴルドーに直撃しているが、ミカが早く打つことで、辛うじて防御出来ているのだ。


ゴルドーは、自分が防御しているのではなく、防御させられていることに気がついていた。


しかし、彼とてこの学院の4年生。最上級生だ。

そのプライドにかけて、ミカ・ヴァルナに一矢酬いる。そう考えていた。


そこに舞い込んだ、絶好のチャンス。

ミカが大振りな突きを放ったのだ。


「!」


ゴルドーは、これが最後のチャンスだと見て、その突きを受け流し、大剣の腹でミカ・ヴァルナを吹き飛ばす。


「ごふっ…!」


肺から空気が抜ける、確実に入った声が聞こえた。


(思ったより痛い…!)


それもそのはず。

今のミカは何の強化魔法もかかっていない、ただの女子の体なのだ。

いくらアーリアに鍛えられたと言っても、何年も鍛えられた訳では無い。


吹き飛ばされたまま地面に転がっていると、ジェシカの声が響いた。


「そこまで!」


そこで再び、辺りは騒がしくなる。


「ミカ様が! ミカ様が!」

「医療班を、医療班を早く!」

「やっぱり、体力の限界だったのか」

「ジェシカに勝った時は余裕そうだったが、あれは演技だったのか…」


そして、そんな歓声を聞いていたミカは苦痛に顔を歪めながら内心笑っていた。


(ふふふ、完璧! いだだだ……)


恐らく、骨にヒビが入っているだろう。

痛む腹を抑えながらなんとか立ち上がると、ゴルドーが駆け寄ってきた。


「すまない、少し本気でやりすぎたようだ…」


「い、いえ、だいじ…っ!」


当たった場所が場所なので、息をならまだしも、言葉を発するのは痛みを伴うようだった。


そこに、所謂担架を持ってきた男子4人が走ってきた。


「ミカ・ヴァルナ、これに乗ってくれ!」

「君の部屋まで安全に届けて見せよう!」

「心配入らない! 僕達はプロだ!」

「医療班とはまさしく、僕達のことさ!」


(………)


フラグのようなものを匂わせつつきた男子4人だったが、今はそれどころではなかった。


「じゃあ…お言葉に甘えて…」


「私が担架に乗せよう」


ゴルドーの手を借りて担架に乗り、ミカは自分の部屋へと戻った。







自室のベッドに寝かされたミカは、セフィアに看病されていた。


「ね…セフィア」


「お嬢様、あまり喋っては。傷に障ります」


「…1つだけ。傷が治る魔法とか無いの?」


「治るのを促進する魔法ならありますが、すぐに効果が出るようなものはありません」


「……そっか」


この部屋に運ばれてきた時、セフィアは落ち着いた様子で、『では、ベッドに寝かせてください。後のことは私にお任せを』と、医療班の4人に告げた。


普段のセフィアなら、ミカをベッドに寝かせて応急処置を施し後、ゴルドーを殺しに行くだろう。

しかし、そうはせず、ミカの近くにいる。

それは、ミカが頼んだことが関係していた。


「まさか、お嬢様が薬を頼むとは思いませんでしたが、お嬢様自身のためとは…」


「あはは……」


事前に頼まれていたこととは、薬を買うことだったのだ。

決して、ミカが自分の為にお願いした訳ではなく、万が一、相手、もしくは自分が怪我した時のためだ。


この世界は、日本と違って医療環境が十分に整っているとは思えなかったのだ。


(そもそも、あの医療班も素人くさかったし…)


所詮は子供の範囲だろう。

運ぶのは優しかったのだが。


そして、ミカは思う。


(こんな痛みを経験するぐらいなら、戦いたくなんてないなぁ…)


ラノベの主人公は、痛みを経験しても戦場に立ったりするのだが、ミカはどうやら無理なようだ。


とはいえ、それは強化魔法を使わない話である。


ミカが強化魔法を普段通りに使っていれば、ゴルドーの大剣はミカに当たった瞬間折れていただろう。


(強化魔法を使えばやりすぎ。かといって使わなければ重症。これは…)


早急に剣の扱いを学ばなければ、と思うミカであった。

『アクセラレート』に頼る戦いをするというのは、相手を舐めていた(ジェシカの場合)か、それを主軸に置いている(セリナの場合)か、それとも、それしか知らない(ミカの場合)かですね。

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