20 寮の仲間と、聖武祭、です!
予定通り4本更新、出来たらします!
最低でも3本はあげます!
「さあ、みなさん、これから寮に移動しますよ」
担任の言葉に、ミカはそういえばと思い出す。
(寮生活なんだっけ。同じ部屋にいる人が気難しくなければいいけど)
「寮では、別学年の人と同じになることもあります。男性の皆さんとなることはないので、安心してくださいね」
そう言って、担任は教室から出ていく。
恐らく、ついてこいというやつだろう。
それを察した人がついて行き、その後ろにぞろぞろと歩いていく。
ミカは、その最後尾だ。
いや、その後ろにセフィアがいるので、最後尾はセフィアかもしれないが。
「ミカ、寮って?」
「学校にある家、みたいなものね。親無しで学校に住む認識で大丈夫よ」
たとえ生徒の意識が前を向いていて、セリナとセフィアしか見ていないとしても、優雅な立ち振る舞いは忘れないミカ。
(さすが私)
ミカが自分を褒め出すということは、調子に乗っているということ。
人間は、こういった時にミスをするのだが、果たして。
「ここが、君たちの寮だ。寮の部屋はそこの紙に貼ってあるから、見ておくこと」
担任はそう言い残して、その場から去っていった。
寮だけ、なぜ他の学年と交流させるのか。
授業のスピードは合わせなければいけないが、上級生交流の機会はなくしたくない。
そんな感じで作られた交流の場が、寮なのだ。
(私の部屋は…001。近いわね)
逆に1なんて縁起が良いのではと思いつつ、ミカは部屋へと向かっていく。
その場で自己紹介させるためか、同室の人の名前は書いてないようだった。
ミカが『001』と書かれた部屋の前まで来て、扉に手をかけたところで動きが止まる。
「セリナ、あなたの部屋はここじゃないでしょう?」
「……?」
確か、ミカが見た時セリナの部屋は069だったはずだ。
それをミカが伝えると、セリナは驚きに目を見張り、ミカから離れた。
「寮の部屋に行く時は、離れないといけない?」
「それ以外ならいいけど、そうね、寮の部屋は離れないといけないわね」
ミカがそう言うと、セリナは自身の寮の部屋へと向かった。
その背中を見て、ミカは改めて扉を開ける。
しかし、中には、誰もいないようだった。
(でも、生活感はあるのよね)
中には、ベッドが2つと、学習机が2つ。
クローゼットは共同なのか、少し大きめのが1つ。
入口の側に別の扉があるので、中にはトイレとシャワー室でもあるのだろう。
あとは、窓があるくらいだ。
ミカは、閉められている窓を開けて、外の様子を伺う。
この寮からは、ちょうどこの国を見下ろすことが出来る。
この初等学院は、国王が直々に運営しているだけあって、立地的にも立場的にも上に位置しているようだった。
外を見ながら物思いに耽っていると、後ろから扉が開く音がした。
しかし、その音は、先程ミカが開けた扉の音ではない。
(ということは、さっきの見てない扉かな)
そう思いながら振り返ると、そこには裸の女性がいた。
「……銀髪青眼…噂の新入生ですわね?」
「……」
とりあえず、服を着て欲しいと思うミカだった。
「ごめんなさい、まさかもう来るなんて思わなくて」
「いえ、私も何も言わずに入ってきてしまったので」
お互い勉強机の椅子を出し、向き合って座りながら自己紹介をしていた。
先程のは、女子同士だから気にしないで、と先輩は言うが、ミカは何となく恥ずかしがっていた。
「私の名前はジェシカ・オルムズですわ。よろしく、『銀髪青眼の天才美少女』さん?」
「いえ、あの、普通にミカでお願いします」
そんなこんなで、ミカはジェシカからある程度の部屋の近い方を教わり、その日を終えた。
学院に入学してから、1ヶ月がたった。
「〜♪」
ミカは、この1ヶ月で教科書に載っている魔法を全て習得し、天才美少女の名を欲しいままにしていた。
しかし、それはしたくてしているわけでなく。
「さすがはミカ。魔法全部使えるなんて!」
「なんで大声で言うの!?」
ミカが独り言で『覚える魔法が無いわね』と零すと、セリナがまさかの教室で大声で言い出したのだ。
すると、1週間に1回という約束で魔法を教えていた女子達は歓喜をあげ、ミカに詰め寄った。
とはいえ、ミカも過去にこの女子達の囲いは経験済みだ。
『アクセラレート』を唱えると、そこから瞬時に抜け出し、この学院の屋上へと出る。
今は、そこでセフィアとお茶会をしている最中だ。
授業については、学院長がこんなことを言っていた。
『君は体が弱い方だと聞いている。適正審査で倒れてしまったらしいな。
体調が優れないと判断したら、授業を出ずに休むことを許可しよう。他の先生にもそう伝えてある』
(……なんで私が病弱みたいな感じになってるのかは知らないけど、特に教わることもないし、ここにいましょう)
「お嬢様、お味はどうでしょうか?」
「いい感じよ、セフィア」
そんな感じで、ミカは学院生活を過ごしていく。
5月に入った。
外も暖かくなり(比較的)服も薄くなってきた(比較的)。
「さて、5月に入ったので、あのイベントが来ました」
(あのイベント?)
朝の授業前の時間。日本でいえばSHRの時間に、担任はそんなことを言い出した。
ミカが周りを見渡すと、全員がどこか気合いに入っている様子だ。
「……?」
「……」
全員ではなかった。
セリナも分かっていなさそうだった。
ミカは、後ろに立っているセフィアに声をかける。
「セフィア、なんの事か知ってる?」
「私の知っている限りでは、恐らく聖武祭かと」
(聖武祭?)
初めて聞く単語に、ミカは首を捻るばかりだ。
そんなミカの様子を少し眺めてから、セフィアは口を開く。
「お嬢様はご存知ないかと思われますが、この学院では毎年5月の終わりに、武術を競う大会を行うのです」
「へぇ……そうなのね」
ミカとセフィアがそう話している間にも、担任の話は続いている。
「学年級と、無学年級というものに出ることが出来る。名前から察することが出来ると思うが、自分の力がどこまで上級生に通用するのか知りたい人は、無学年級に出るといい」
「なるほど…」
無学年級は、自分より強い人と当たる可能性が高くなる。
「成績にも関係するからな。しっかりと考えるように」
「関わるんだ……」
とはいえ、ミカは色んなところで『銀髪青眼の天才美少女』と呼ばれているが、本当に取ってしまうつもりはない。
(そうね…2、3回目で負ければ十分ね)
バティスタとの模擬戦で、自分がどれほどの強さなのかわかったミカは、力を隠して生きることにしたのだ。
(強すぎる力は、争いを産むもの)