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18 勝利です!

目標は今年中に100投稿、です!

カンッ。


鞘が地面に落ちる。

その瞬間、バティスタがミカに向けて突進してくる。


「…!」


(そのスピードは6歳の女の子相手にするスピードじゃないでしょ!?)


ミカは、アーリアによって鍛えられた肉体を

更に強化魔法で強くした状態なので、難なく回避する。

しかし、横に飛んでかわしたミカを、バティスタは追う。


バティスタは、持っている剣を横薙ぎに払う。

それを、ミカがレイピアで受け止める。

強化魔法の恩恵で、ミカにその衝撃は来ないが、逆にバティスタの手は痺れていた。


「まるで、鉄か何かを叩いたようだよ…!」


「私は鉄じゃありません!」


ミカの突っ込みはどこかズレているような気がするが、まだお嬢様メッキは剥がれていないので、気にすることは無い。


「……」


そんなズレたミカを、セフィアは愛しているのだが。


ミカが反撃とばかりに、レイピアを突き出す。


「ぬおっ…!?」


レイピアの刺突を、なんとか剣の腹で受けた…というよりは、受けさせられたバティスタは、6歳の女の子が出せる突きの威力を軽々超えるミカの突きに目を見張った。


「おいおい…その威力はおかしくねぇか…?」


「……」


バティスタの顔は、アーリアの顔しか見てこなかったミカにとって、少し怖い。

そんな顔の男から出される低い声は、ミカを怖がらせるには十分だった。

ただ、それは内心の話で。


「返事は無し、か…まあ、そりゃそうだな…」


「……」


ミカは、レイピアをどう構えたらいいか分からないので、体の前に構えている。


(これ、どうしたら決着つくのかな)


そして、ミカが考えた方法は2つ。


1つは、単純にバティスタを倒してしまうこと。

もう1つは、やられたフリをすること。


(ただ、どっちも難しいのよね)


バティスタは、じりじりと間合いをはかっているように横へ移動していく。


バティスタとて、歴戦の猛者だろう。

であれば、だ。

強化魔法で無理矢理戦っているミカでは倒せない可能性もある。

しかし、やられたフリをするのも問題がある。


(私が…演技がヘタだからさ!)


「どうした? 来ないのか?」


バティスタが、見え見えの挑発をする。

これでは、こちらが焦っているということをわざわざ相手に教えているようなものだ。

しかし、それほどミカが異質だと言うことだろう。


「……学院長、これ、勝敗はどう付けるんです?」


「そんなもの、どちらかが戦闘不能になるまでだ」


「……」


脳筋か、とツッコミたかったが、それではお嬢様口調が崩れてしまう。


レイピアを握り直したミカは、セフィアに告げる。


「今から1分数えて!」


「かしこまりました」


ミカがそう言い、セフィアは正確に1分を数えていく。


「…なんの真似かね?」


「もちろん、1分という制限時間を設けたのです。あまり長引いても、見ている側が退屈してしまうかもしれないでしょう?」


これでは、どちらが先生なのか。


バティスタは少し微笑むと、すぐに鬼神のような顔になる。


「よかろう。全力で相手させて頂く…!」


心做しか、バティスタの体から紅いオーラが出ているように見える。

それを見たミカは、『アクイバレント・エクスチェンジ』に加え、『筋力上昇』も加える。

これで、ミカが今覚えている身体強化系の魔法は全て使った。


「『銀髪青眼』の力…見せてもらおう!」


(ん? 青眼?)


バティスタがそう言いながら、突進してくるのだが、ミカの意識は別の方へ向いてしまう。


(青眼って、私今は青眼じゃないはずなんだけど…)


バティスタは突進の勢いのまま袈裟斬りを放つが、ミカはそれを目で捉えていない。

ミカが捉えているのは、今日の朝、自身の服装をチェックしていた時。


(……あぁっ! 確かに青眼だった!!)


そして、底上げされている身体能力で、後出しで袈裟斬りに対応する。

小手先の技術は、圧倒的な力の差には全く発揮されないということらしい。


「せいっ!」


ミカがバティスタの剣をレイピアで弾き飛ばし、首筋に素早く添える。

バティスタは目を閉じると、やがて笑顔でミカに礼を言った。


「ありがとう。ミカ・ヴァルナ君。君のおかげで、私のしたいことが出来そうだ」


「…?」


バティスタに戦意がないことが分かると、ミカはレイピアを鞘に戻す。

しかし、未だにバティスタの言ったことがわからずにいると、バティスタは映像を発信しているのであろう場所に向かって言った。


「諸君。これが、我が国の未来だ。諸君らにも、こうなれるだけの力が備わっている。故に、磨け」


それだけ言うと、バティスタはミカの方へ歩み寄ってきた。


「ミカ・ヴァルナ君。君のその眼は、元から青なのかい?」


「いえ…元々は銀、だったような気がします…」


ミカがそう答えると、「ふむ、そうか」とだけ言い、バティスタはその場を去っていった。


そして、ミカの背後から称賛の言葉が送られる。

セフィアだ。


「おめでとうございます、お嬢様」


「うん、ありがとう。それより、私の眼って最初から青だった?」


「私と初めてお会いしたあそこでは、青色でした」


「……うん、そっか」


そして、ミカとセフィアは教室へと戻っていく。







(異変があったとしたら、あの時よね)


あの時とは、ミカの適正審査を行った時だ。

結局何が向いているのかは不明だが、『アナライシス』の魔法を使ったまま気を失ったことは覚えている。


(というか、魔法を使ったまま気を失ったら、外見はそのままって、大丈夫なのかしら)


実際に、あの時何が起こったのか、ミカは詳しく覚えていないというのが、本当のところだ。


「…まあ、あんまり気にすることないわね」


ここ2ヶ月は、何も起こっていないのだ。

ミカはそう考えると、赤の教室の扉を開けた。

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