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16 学院に行きます!

予定通り4つ更新します!

「おはようございます、お嬢様」


「……ん、おはよう」


1月1日。

ミカの初等学院の入学式が行われる日だ。


ミカは、耳元から聞こえたセフィアの声で起きる。

セフィアの声はどんな目覚まし時計よりも気持ちよく起きられるだろう。


(それほど、セフィアの声って聞いてて落ち着くのよね)


そして、セフィアに着替えさせてもらう。

もはや、そのことに違和感を感じない程度には慣れてしまっていた。


ミカが着ている服は、昨日作り終わった制服だ。

ただ、この制服は正確には制服ではない。

制服とは校則で決められ、大人数で着るからこその制服であり、これではただの。


「コスプレ…かしら」


鏡の前でおかしなとこがないかチェックをするミカ。

とはいえ、日本にあったようなダサい制服ではない。

しっかりと可愛い制服なのだ。

これなら、変に見られないだろう。


そして、その制服を脱がしてもらう。

入学式には純白のドレスで出席するのだ。


「お嬢様、少し胸が大きくなりましたね。サイズがギリギリです」


「ホント? それならちょっと嬉しいかも」


「…?」


そして、日本とこの世界とで違う価値観として、胸の有無だ。


ミカは胸はある程度あった方がいいと考えているが、この世界の人間は日本のようにお金があるわけではない。

故に、サイズが変わるというのは一種の問題なのだ。


とはいえ、ヴァルナ家はお金には困っていないので、ジェイナも気にした様子はない。


「おはようございます、お母様、お父様」


「おはよう、ミカ」


「おう、おはよう」


いつもの通り挨拶を交わし、食卓へと向かうミカ。

そして、ミカが座る椅子を引き、朝食の準備を手際よくするセフィア。

もはや、ミカはセフィアがいなければ生活できない状態になっていってしまった。


そんなことになっているとは露知らず、2人は喜ぶ。


「セフィアも随分と様になっているなぁ」


「当然です、私が教えましたから」


そのせいで、ミカがダメ人間になりつつあるということを、2人はまだ知らない。


「ごちそうさまでした」


朝食を食べ終えたミカは、歯を磨いたりと準備を済ませ、家の外に出る。


そこには既に、正装姿のジェイナとアーリアが立っていた。


アーリアは黒主体のスーツ。

ジェイナはミカと同じような純白のドレスだ。


(なんとなく思ったんだけど、この2人がこの服で並んでると結婚式みたいね)


それには、ジェイナの服のヒラヒラさが全く足りないのだが、なんとなくそう見えてしまうのだ。


そして、馬車が家の前で止まる。


御者が降りて、礼をする。


「今回御者を務めさせていただきます、バーニアです。よろしくお願い致します」


服はバーニアもアーリアと同じような黒のスーツ。

しかし、髪が白髪で、いかにもベテランという空気を出している。


2人は、そんなバーニアを見て、笑顔で頷く。


それを見たセフィアは、ミカの手を取り馬車へ乗りやすいようにする。

気遣いがすごい。


「ありがとう、セフィア」


「いえ、私の役目ですので」


そう言いながら薄く微笑むセフィア。

セフィアはミカにお礼を言われることに快感を見出したようだった。


そんなことは全く知らないミカは、上機嫌で馬車に乗る。


進行方向に体を向ける位置に座り、その横にセフィア。

対面にジェイナが座り、セフィアの対面にはアーリアが座る。


ミカは、外を見て、学院がどんな場所なのかと期待をふくらませていた。


(すごく楽しみ!)


そして、どうやって友達を作ろうか考え始めた。








「すぅ…すぅ…」


「……」


移動開始から2時間。

適正審査をした協会の前を通り過ぎ、初等学院に行くにはまたあと1時間かかる。


考えていたミカは、自身でも気付かぬうちに眠ってしまっていた。


「ん……」


「……」


時々、艶っぽい吐息を漏らす度に、セフィアが一瞬顔をあからめるのだが、ジェイナとアーリアはそれを不思議そうに見つめるだけだ。







「あれが初等学院なのですね」


「懐かしいな…」


「私達もあそこに通ったのよ」


「そうなんですか?」


初等学院が見え始めた頃、馬車の中ではジェイナとアーリアの2人の話に花を咲かせていた。


ジェイナは懐かしそうに目を細める。


「あの頃のあなたは、荒々しかったわね…」


「……覚えてねぇな…」


しかし、アーリアは覚えてなさそうだ。

ミカはジェイナの話を聞きたそうにしているが、セフィアは興味無さそうだ。


「まあ、私たちの話はどうでもいいのよ。そのうち帰ってきた時にでも、教えてあげるわ」


「…帰ってきた時、ですか?」


「あら、言ってなかったかしら?」


そう。今からミカが行く初等学院は寮生活を採用している。

移動時間を短縮することで、効率良く時間を利用できるということで、創立当時から変わらない。


ただ、ミカは知らなかったようだ。


(それもそうだよね、登校するたびに3時間とか、かけてらんないって)


馬車が学院の入口に到着したのか、止まる。


「セフィア」


「はい、お母様」


ジェイナがセフィアに声をかけると、セフィアはドアを開き、下に待機する。


「それではお嬢様」


「ええ」


セフィアがミカの手を取り、ミカは降りていく。

他の生徒も来ている時間なので、ミカ達はとても目立っているのだが、それは奇異な目で見られている訳では無い。


「あの子、すごい可愛いな…」

「お姫様みたい…」

「…新入生なら、声掛けてみようかな」


そして、ミカは馬車の方を振り返り、2人に挨拶をする。


「それではお母様、お父様、行ってきます」


「ええ、行ってらっしゃい」


「試験で度肝を抜いてやれ!」


2人がそう言い残すと、馬車は移動していく。

2人は保護者なので、別の入口があるのだ。


そして、アーリアはミカにとって重大な言葉を残して行った。


「…試験?」


「はい、お嬢様」


試験。

日本の生徒が聞けば、『範囲なんだっけ』のような話になるだろう。

ただ、今のミカには範囲がどこかなんて全くわからない。


(……常識問題なら、なんとかなるかなぁ。文字は読めるんだし)


ミカはそう考えて一気に安心すると、セフィアと共に学院に向かって歩いていく。


服が服なので、他の人の目を集めるのだが、本人はどこ吹く風だ。


(みんな立ち止まって、話もしてないけど、何してるんだろ?)


この頃のセフィアは、ミカが考えていることなら大体わかるようになっていたので、この状況を正しく理解しているのは彼女だけだった。


(お嬢様、さすがです)


ただ、まともな思考ではない。


「お嬢様、あれがクラス表になります」


「ええ、わかったわ」


ここには他の人の目もある。

ミカのお嬢様口調を崩す訳にはいかない。


ただ。


(ずっとこれは面倒ね)


ミカは廊下に貼られているクラス表に目を通す。


ミカの所属するクラスは…。


(赤? 赤ってなに…あ、わかったかも)


以前ミカは、『アナライシス』を使って、水晶を見ていた時があった。

その時、属性と光の色がどれに一致するのかよくわかっていた。

ただ、その時にとある事故が起こって、ミカの体に異変が起きているのだが、本人はまだそのことに気がついていない。


ミカは学院の構造図が書かれている紙を見て、『赤』のクラスへと向かう。


(ところで、なんで赤なんだろう?)


そもそも、ミカは未だに風属性以外の属性と契約を果たしていないのだ。


ミカは不思議に思いながら、赤のドアを開く。


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