12 勝手に契約して人探しです!
少し...いえ、かなり遅くなってしまいました。
この後しっかり3本目を更新します。
ミカの適性審査から数日後。ミカは、見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚ました。
「.....」
ミカは、ここであの有名なセリフを言ってもいいものかと少しだけ悩んだ。
何を悩むことがあるというのか。ここでそのセリフを言ったところで、結果はただ言いきったという満足感があるだけだというのに。
結局言うことにしたのか、ミカは少し息を吸ってから、渾身のキメ顔で言った。
「.....知らない天井だ」
ミカの渾身のキメ顔が、決まった。
「おふざけはこのぐらいにして、ここはどこなんだろう」
ミカは記憶を遡ってみるが、適性審査が自分の番になってから記憶がない。
(いや、あるぞ、1つだけ)
ミカに残された最後の記憶。それは、誰かもわからない、そんな人の助けを呼ぶ声。
誰なのかは、ミカにはわからない。しかし、今すぐ助けにいかなくてはと思わされる、そんな声。
「.....なんとかしなきゃ」
あの時聞えた声は、決して聞き間違いではないと信じているミカは、どう助けようかと考え始めた。
「だめね、私に使える魔法が少なすぎる」
ミカが現在、人と探知する系統の魔法は『サーチ』だけだ。
それ以外は自身の強化と、分析だけ。
あまりにも少ない手札に少しがっかりしながら、ミカは『コンバート』させていた本を取り出す。
「この中に、何か探知系の魔法が載っているかもしれない」
ミカは次々とページをめくっていく。日本でラノベを読み漁っていた経験が今生きているようだ。ある程度早く読んでも、大体何が書いてあるかは把握できる。
そして、ついに見つけたミカは、喜んだのもつかの間、頭を抱えることになる。
「風属性...『ディテクション』...」
『ディテクション』。探知の魔法だ。
『サーチ』とは違い、手がかりがあれば、探している人物のいる方向がわかるというもの。距離も感覚でわかるので、人探しにはうってつけだ。
しかし、これを使うには1つ問題がある。
そう、契約が必要なのだ。
「でも、精霊と直接話すなんて不可能に近いんじゃ...」
そういいながら読み進めたミカは、奇跡的にとある魔法を見つける。
「『スキャン』...これだ!」
『スキャン』は、精霊を見るための魔法で、他をスキャンするのには使えない。
これ幸いと、ミカはすぐに『スキャン』を唱える。
「『スキャン』...ふわぁ、いっぱいいるんだなぁ...」
魔法を発動したミカの目には、人間をそのまま小さくして羽をはやしたような存在がたくさんいたのだ。
さっそく、『アナライシス』を使用して、どの精霊がどの属性なのかを判断し、風属性の精霊に声をかける。
「ね、ねえ、そこの精霊さん。私と契約してほしいんだけど!」
『あら、私と契約したいの、青眼さん』
「へ?......今はどうでもいいや、とにかく契約させて!」
『わかったわ。...『コントラクト』。はい、終わりよ」
「え、終わり?」
妖精がミカのことを『青眼さん』といったが、ミカは時急いでいたのでそれを後回しにした。
しかし、その妖精は契約をすぐに終わらせたのである。
時間が少しかかると予想していたミカは、肩すかしをくらったような気分だ。
ミカが、疑うように精霊に聞く。
「えっと、今ので終わり?」
『ええ、そうよ。本当ならもう少し時間がかかるんだけど、今は急いでるんでしょ?』
だったら早いに越したことはないわと、妖精は言う。
それは、今のミカにとってありがたい話であった。
ベッドから飛び降りながら、妖精にお礼を告げるミカ。
「ありがとう、妖精さん。私行くね!」
『ええ、また会いましょ、青眼さん』
そして、ミカは部屋を出ていく。
走りながら使用する魔法は、風属性魔法『ディテクション』。
手がかりは、頭の中で今も残っている。助けを求めている声。
「待っててね、今すぐいくから!」
そしてミカは、誰にも何も言わずに、その場を走り去った。
「こっちか」
『ディテクション』を使用して、声をてがかりに人探しを初めて数十分。着実と近づいている感覚があるミカだった。
感覚に任せて足を進めていくミカだが、進んでいくと、廃墟のような家についた。
恐らく、長年放置されていたのであろう家。しかし、ミカの『ディテクション』がここを示しているのだった。
「......入りたくないけど、入らなきゃだめだよね」
理性が拒んでいるが、ミカの中の、助けたいという正義感がそれを上回ったようで、廃墟のドアを押して、ミカは中へ入っていく。
「おじゃましまーす...」
できるだけ静かに移動するミカ。
中に霊の類がいた場合、それを徐霊する方法なんぞ、ミカは持ち合わせていない。エンカウントした場合、逃げるしか選択肢は無いのだ。
足を進めていくと、ある部屋の前で、ミカの『ディテクション』の反応が一段と強くなった。
この部屋にいるのだろうと、ミカがドアに目を向けると、そこには『セフィア』と書かれたドアがあった。
「セフィア...この子が、私を呼んでいたのかな...」
そうであるならば、さっさと連れ出してこんなところからおさらばしたいミカ。
人並みに怖いものは怖いミカであった。
意を決して中に入ると、そこには、ベッドが1つ、机が1つ、椅子が1つ。
そして、明らかにそこに何かが入っているであろう大きいクローゼットが1つ。
ミカの『ディテクション』は、そのクローゼットから反応を示している。
最悪だ、とミカは思った。
「バイオ○ザードとかで、クローゼットの中にゾンビがいるなんてシーンがあったからなぁ...助けを呼んだのは無意識で、そこに人がいるって思って開けたら、そこにはゾンビみたいな落ちはマジで勘弁してほしい...」
ホラーが苦手なミカは、苦手なりに克服しようとホラービデオを見たことがあったのだが、この時は完全に裏目に出ているようだった。
しかし、恐怖をまたもや正義感が押し切り、クローゼットのドアを開け...ようとして、ミカは自身に『筋力上昇』をかける。
「これで本当にゾンビだったら後悔してもしきれないし...」
そして、意を決してクローゼットの戸を開く。その中には....。
「……...」
「....女の子!」
黄色の髪でロングの、女の子が入っていた。