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11 適性審査です!

今日も予定通り3本上げます!

「わぁ...!」


ミカが驚いている間にも、馬車は街中に入っていく。

行き先がどこなのかはミカにはわからないが、映る景色はどれも新鮮で、憧れていたものだ。


(これが、中心街!)


そして、馬車は教会のような建物の前で止まる。

ここが、適性審査の場所だ。


「お母様、ここは...?」


「ここが、審査の場所なのよ」


「そうなんだ」


ジェイナが馬車から降り、それに続いてミカも降りる。

そして、2人で手を繋ぎ中に入る。

そのさまは、母子ではなく、姉妹のように見えた。








ミカは最初、教会でやるのだし、とても厳かな、神聖な空気でやるものだと思っていた。

それは、裏切られることになる。


「....」


「あら、意外に混んでいるのね」


中は、人、人、人である。

この時のミカは、『木が3つで森。人が3つでなんだろう?』と考えていた。それだけショックが大きかったようである。


ジェイナはそんなミカの手を引き、ミカと同じぐらいの年齢の子供たちがいる場所に連れてきた。

そこは列になっており、向こうには水晶の奥に老人が立っていた。

あの人が、適性審査を行い、色を判別して、何が向いているのか、逆に何が向いていないのかを判断しているのだ。


そして、その列についたジェイナは、ミカの手を離す。


「お、お母様?」


「ここからは、あなた1人で頑張りなさい」


「.......」


そういうと、ジェイナは保護者がいるであろう場所へと戻っていった。

このとき、ジェイナが着ている服がミカと同じような純白のワンピースだということに気が付き、周りの人が見とれていることで少し自慢げになるのだが、それは自分もだということに気が付いていない。

無論、ミカに見とれているのは同年代の子供たちだが。


「んー...よく見えないわね」


ミカは少し背伸びして、水晶がどう光っているのかを見ようとしたのだが、いくら背伸びしても見えそうにはなかった。


仕方なく、ミカは憶えた強化魔法を使用する。


使う魔法は、『アナライシス』。


「...『アナライシス』」


小声で唱えた瞬間、ミカの瞳は青色に光る。

もともと銀色の瞳なのだが、それまで瞳を注視していなかったため、『銀髪で青眼の少女』という名で噂になるのだが、この時のミカは知る由もない。


「何色に光っているのかまではわからないけど、どの属性なのかはわかるわね」


『アナライシス』の魔法は、解析の強化魔法だ。

『サーチ』のように、青眼になるという共通点があるが、効果が少し違う。

『アナライシス』は、自身が意識を向けた対象を解析し、情報を魔法使用者に届けるという魔法で、前に並んでいる人たちに意識を向けずに、水晶に意識を向けることで、今この場では何の属性が発動しているのかがわかるようになっている。


そのことで一気に上機嫌になったミカは、この魔法で時間つぶしをすることにした。その矢先だった。


(...ただ水晶の情報しかわからない。何色にも光っていない?)


これまで、同じ周期で情報が入ってきていたので、何かしらの異常を察知したミカは、ぴょんぴょんはねて前を見た。

そこでは、水晶に手をかざし、老人が何かを唱えているのに、水晶には何も変化がないという状況だった。


(なるほど、あれが、魔法が使えないという人なのね)


それでも、魔法が使えないということは、特に落胆するようなことではない。

魔法を使った職業に憧れがあるのならな話は別だが、魔法が使えるということは、職業の幅が広がっているのと同じなので、ミカのように魔法に憧れている人は極稀なのだ。


それを知っているのか、変化がなかった男の子は特に落ち込んだ様子は無く、親の元へと戻っていった。


「...まあ、魔法が必要ない職もあるわよね」


そのことを知らないミカは、少し可哀そうに思っているのであった。











ミカの前の人が水晶に手をかざす。

いよいよ、ミカの出番が近づいているのだ。


「......」


緊張のあまり、『アナライシス』を発動させっぱなしのミカは、そのまま、前の人が横にずれたので、水晶の前に出る。


老人が、少し驚きながら、声を出す。

その声は、老人なのに、威厳に満ちた声だった。


「お主、名は?」


「み、ミカ・ヴァルナです」


「.......よろしい」


ミカが名前を言った時、その老人はしばし考えている様子だったが、ミカの後ろ、保護者がいる方に視線を向けると、すぐに納得したような顔になり、ミカに水晶の上に手をかざすように催促する。


「それでは、ミカ・ヴァルナ。手を」


「はい」


ミカは、緊張して震える右手を、水晶の上にかざす。

口元を固く結んで水晶を見つめるミカを、後に老人は『凛々しかった』と語った。


「それでは、始める」


老人は小さく何かを呟き、水晶がすぐに反応して光った。

しかし、この色は____。


「赤、緑、青、黄...いや、白も入っているのか...?」


「____!!」


『アナライシス』を発動したままだったミカは、水晶を通して自分の才能に対して直に向きあった。

その可能性は膨大な情報量で、いかに精神は高校生でも、脳が6歳の少女では耐えきれなかった。

そして、意識を失う瞬間、誰かの声を聞いた。

その声は、助けを求めているかのような声。


(誰、なの...?)


そして、ミカはその場に倒れる。


それと同時に。


「!」


水晶が粉々にはじけ飛んだのだ。


ミカが倒れたのを視認したジェイナは、血相を変えて走り出す。

そのまま駆け寄り、ミカを抱き上げるが、反応は無い。

最近成長してきた小さな胸に耳を当てると、その鼓動は動いている。

安心したジェイナは、落ち着いた声で、周囲に聞こえる声で言った。


「大丈夫です、気絶しているだけ」


「...あなたがそういうなら、そうなのだろうな」


「でも、一応、医者に見せてもらっても?」


「よかろう。手配する」


周りの人から見たら、この老人と綺麗な女性は一体誰なのだろうとなるだろう。


ジェイナは、有力な貴族で、国王に最も近い貴族でもあった。

故に、他の貴族どころか、庶民のとなれば知らないのも仕方のないことだろう。


しかし、この老人は誰なのか。貴重である医者を手配できるなど、並の貴族ではない、そう思っていたのだが、すぐにその考えは過ちだったことに気がつく。


ジェイナが放った一言で。


「お願いしますね、国王陛下」


老人が、かつらを取ると、それまでの白い髪とは変わって、黒い髪にかわり、しわがあった顔も、いつの間にかハリのある肌になっている。


老人は、国王陛下だったのだ。


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