1 異世界へ行けるんです!
初投稿です!
言葉遣いを間違えないように頑張ります!
「異世界に行く方法が見つかった」
唐突に、それは発表された。
それが発表された時刻は4月の平日の朝の8時。
それぞれが準備をしていたところで発表されたこのニュースは、ほとんどの人の動きを止めた。
『異世界』というものは、日本の小説でよく題材にされるものだ。
元から異世界視点のものもあれば、元の体、もしくは魂が『異世界』へと移動するものもある。
しかし、それらが何らかしらの事故によるものである場合が多く、そういったサブカルチャーに馴染み切った日本人は、自身がしていることを止めざるを得ないほど衝撃を受けたのだ。
「…まじか」
とある高校に通っている生徒、勝元美香という女子生徒も、同じように衝撃を受け、一言零すだけで精一杯だった。
今日からはじまる高校生活を謳歌しようと、友達をどう作ろうか悩みながらテレビを見ていた時に、突然そのニュースが流れたのだ。
そろそろ家から出ないとな、などと考えていた美香の思考はどこかへ吹っ飛ばされてしまい、別のことを考え出す。
「…異世界って、本当に異世界なのかな」
彼女とて、日本に生まれ、それなりに小説、いわばラノベを読んでいる。異世界に憧れがない訳では無い。
だが、それ故に不安もある。
「これから、どうなるんだろ…」
とはいえ、異世界に行く方法が見つかったぐらいで、自分が行くことになるとは思っていない美香は、気を取り直し、高校へ向かうために、長い黒髪を揺らしながら外に出た。
学校についた美香だったが、校内でも『異世界』についての話で持ち切りのようだった。
下駄箱に靴を入れ、自身のクラスを確認し、教室の中へ入るが、中にいる生徒はみんなで『異世界』について話していた。
そんな中、話をしている大半の生徒が美香の方を見た。
彼女は一体どうしたのだろうと思うばかりだ。
「や、おはよう。君もあのニュースを見たかい?」
おそらく会話の中心にいたであろう爽やかな生徒が、美香に話しかけてきた。
これ幸いとばかりに、ニュースをきっかけに近づいていく美香。
「うん、見たよ。あれ、安全だと思う?」
そう、朝感じた不安は、安全面の問題なのだ。
事故にあって異世界に行くパターンは、100%と言っていいほど神様の干渉を受けている。それならば、ある程度の安全は保証されているだろう。
しかし、今回ばかりは違う。人間は神様ではないのだ。
「なるほど、君はニュースの真偽はともかく、安全面の心配をしているのか」
爽やかな生徒が興味深そうに美香の顔を見る。
その言動から察せるに、ここにいる生徒はみんな本当なのかどうかの話をしていたのだろうか。
とはいえ、今の美香にとって真偽はどうでもいい。
こうして同年代の生徒と話が出来ていること自体が嬉しいのだ。
そこで、学校のチャイムが鳴り響く。
それと同時に、教師が入ってきて、それぞれ席に戻っていく。
だが。
(…あれ、私の席は?)
美香は自身の席など確認しておらず、教室でただ1人ぽつんと突っ立っている状況になってしまった。
「おい、何している?」
少し低めの女の人の声が聞こえてくる。教師の声だ。
「い、いえ、私の席が分からなくて…!」
「ああ、そういうことか。…そこだな」
教師…おそらく担任だろう。担任が手元の紙を見て、美香の席を指す。そこは、この教室のど真ん中であった。
(どうして気づかない私!こんな目立つ場所にあるのに!)
周りに愛想笑いを振りまきながら、教室の真ん中に行き、座る美香。
その顔はほのかに紅くなっていた。
「……よし、それじゃ、ホームルーム始めるぞ」
その担任は淡々と説明をした。
これからすぐ入学式があること、そのあとは写真撮影をし、授業をせずにこの学校の説明をするとの事だ。
そして最後に軽く言ったのが。
「勝元美香、この後私に着いてきて職員室に来い」
(それなら私についてこいでいいじゃない!)
なぜわざわざ職員室と口に出すのか。それでは変な方向で目立ってしまうではないかと美香は心配するが、そんなことは杞憂だった。
そもそも、生徒のほとんどが内容を上の空で聞いていたのだ。
(助かった…けど、先生の話聞かなくていいのかな)
「よし、ではホームルームを終了する。勝元、ついてこい」
「は、はい」
ホームルームを終わらせると、担任は美香に声をかけそのまま教室を出ていく。
最初からそれで良かったのではと美香は思ったが、すぐに考え直し、あとをついて行く。
しかし…。
(改めて考えても、この後入学式を控えている私を呼び出すほどの問題を起こしたとは思えないんだよね…)
カツン、カツンと鳴らして歩く担任の後ろ姿を見ると、それはそれはカッコイイものなのだが、そのヒールの音が、美香にとっては地獄へのカウントダウンに聞こえた。
(もしかして、退学? 本当に何もしてないんだよ、私!)
誰に説明しているわけでもないが、とにかく美香は頭の中で考えていた。
カウントダウンに耳を傾けては、気が滅入るだけだと思ったのだ。
「ついたぞ、入れ」
担任が振り向きながら言う。
確かに、扉の上には『職員室』と書いてあるが…。
「あの、先生は入らないんですか?」
「ああ、私は連れてこいと言われただけでな。詳細は聞いていないし、入るなとも言われている」
(なにそれ本格的に殺されでもするの?)
この場から今すぐ走って逃げ出したい美香だったが、それでは事態は解決しないこともまた分かってはいる。
というより、100m18秒で走り、息が上がる彼女が逃げ切れるわけが無いのだが。
「わかりました…」
「ああ、すまんが、私はこの後作業があるのでな。では」
それだけ言うと、担任は美香に背を向けて歩いて行ってしまった。
その姿を見届けた美香は、すぐに気を取り直し、職員室の扉を開く。
すると、そこにいたのは、黒のスーツに身を包んだ、強面の男の4人だった。
「君が、勝元美香さんかな?」
「は、はい、そうですけど…」
その中の1人が、美香に確認を取ると、美香の肩に手を置いて言った。
「君には国から招集がかかっている。我々についてきて頂く。拒否権はない」
「……はい?」
今日2回目の、衝撃だった。