恋してるのか
勢いに任せて書いた短編小説です。登場人物の名前も出てこない…軽い気持ちで暇つぶし程度に読んでいただければと思います。1000字いかないくらいなのでほんとに短いです。
~『愛している。』そんな言葉はこの気持ちにふさわしくない。この気持ちはまだ愛なんてものでは無い。もっと純粋に、ただひたすらに、気が付けば目で追っているようなそんな感じだ。~
放課後の教室で彼と私は向かい合わせに座っていた。担任から委員の仕事を頼みたいからと2人で居残りを命じられたのだ。外からの運動部の音が響くなか、私は彼に恋バナをふっていた。
「それが好きってことなんだよ。恋だよ、恋。」
目の前の彼は目を輝かせてそういった。
中学2年生の彼は、私よりは背は高いがどこか幼さが残る容姿をしている。好きなことについて話すとき特有のキラキラとした彼の目はどこか小動物のようだ。
(…ほんと好きなんだなぁ恋バナ。)
私は少し呆れた顔で頬杖を突きながら彼を見つめ返していた。
男子はこういう話は苦手だと思っていた。だが彼は違う。恋愛話を聞くのが大好きでよくほかの女子とも恋バナをしている。
「お前が好きになる奴なんてどんな奴なのかな。俺が知ってる奴か?」
「…どうだろ。」
前のめりで聞いてくる彼に私はそっけなく返した。
そのとき私の中では『好き。』という言葉がひたすらループしていたからだ。
なんとなくそんな言葉で片づけるのはあまり気が進まなかったがそれ以外に私の今の気持ちを言葉にすることは不可能なようだ。
(これが好きか…)
「なあどんな奴かぐらいは教えてくれよ。」
「…。」
「なぁ聞いてる?」
(えっ)
あまりの顔の近さに驚いてしまった。どうやら私は途中から彼の話を聞いていなかったようだ。彼は少しすねた顔をしてこちらを見ている。
「…ごめん聞いてなかった。」
私は自分の身を引きながら答えた。さすがにあの距離を耐えるのは無理だ。
彼に気づかれてしまうかもしれない。
「だーかーらー、どんな奴かぐらいは教えてくれよって。」
彼は再び目を輝かせて聞いてきた。
「嫌。」
「えー。」
彼はつまらなそうにしながらも教えてくれよと駄々をこねるように眼で訴えてくる。
その人懐っこい顔が今は自分にだけ向けられていることに少し幸せな気分になった。
彼の表情はころころ変わる。
それを見るのが少し楽しい。
あなたは気づいていないんだろう。私が想っているのはあなただってことを。
彼サイドなど投稿予定ですので気が向いたら読んでいただければ嬉しいです。