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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第五章

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第五回魔物会議

 

 アビスの入口がある畑にやってきた。


 畑では植物の魔物チームが、普通の花を育てていて、その花からキラービーちゃんが蜜を集めている。いつか美味しい蜂蜜ができるっていってたからその日が楽しみ。


 みんなに挨拶してから、アビスの入口に近づいた。


 あれはなんだろう? 地下に行く階段の前に看板がある。


『ダンジョン内の壁を壊さないでください。アビス』


 ヴァイア姉ちゃんの壁ドンのことかな。確かにダンジョンの壁を壊すのは良くない。あまり良く見てなかったけど、アビスの壁に描かれた模様は素敵だった。今度アンリもお絵かきしようかな。超大作を描こう。


 それはいいとして、ジョゼフィーヌちゃん達を呼びたいんだけど、階段に向かって呼びかければいいのかな。


「アビスちゃん、聞こえる?」


『アンリ様、お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください』


 アビスちゃんの声が階段の奥から聞こえた。でも、入る必要はないかな。


「ジョゼフィーヌちゃん達とグラヴェおじさんを呼んでもらえる? 今はヴァイア姉ちゃんの壁ドンで危ないらしいから、入らないようにしてる」


『……そうですか。大丈夫ですが、確かに危ないかもしれませんね。しかし、ヴァイア様はなぜ壁を破壊するのか……』


 なんか大変そう。大丈夫なのかな。


「大丈夫? アンリがヴァイア姉ちゃんにガツンと言ってあげようか? アンリはアビスちゃんのマスターだし」


『いえ、大丈夫です。これは私とヴァイア様の戦いなので』


「よく分からないけど大丈夫ってこと?」


『はい、ご心配をおかけします……そうそう、ジョゼフィーヌやグラヴェに連絡しましたので、すぐに来ると思います』


「うん、アビスちゃん、ありがとう」


『いえいえ、当然のことです。ところで私のことをアビスちゃんと言ってますか?』


「うん、女性っぽいからアビスちゃん」


『アビスで構いませんよ。ちゃんはいりません。アンリ様が言った通り、アンリ様は私のマスターなのですから呼び捨てでお願いします』


「そうなの? うん、わかった。それならアビスって呼ぶ。でも、たまにはちゃん付けするかも」


『はい。それで構いません。あ、少々お待ちください……グラヴェは、鍛冶をしている最中で手が離せないそうです。もう少し待ってくれとのことです』


「お仕事の邪魔をするほどのことじゃないから、無理しないでいいって言っておいて。アンリの剣について相談したかっただけだから」


 グラヴェおじさんは鍛冶をしてるみたい。何を作っているのかな?


 その後、アビスちゃんと色々な話をしていたら、ジョゼフィーヌちゃん達がやってきた。


「アンリ様、およびとのことでしたが、どうされました?」


「うん、単に遊びに来ただけ。もしかしてお仕事中だった?」


「いえ、ほとんどの者は仕事を終えています。一部の者は仕事中ですが、すぐに戻ってくるでしょう。ただ、ちょっと問題が起きてまして、仕事が終わった者は、その対策を考えておりました」


「問題が起きてるの?」


「問題と言っても些細なことです」


 ここはアンリがボスとして問題を解決しないといけないところだと思う。なら、やるべきことは決まった。


 背中の魔剣七難八苦を天高く掲げる。


「第五回魔物会議を始める」


 みんながびっくりしてる。でも、拍手してくれた。


「議題はその問題のこと。ちゃんと解決しておこう。問題の先送りはよくないっておじいちゃんが言ってる。でも、アンリはその問題を知らないからまずは教えてくれる?」


 みんなで畑に座り込むと、ジョゼフィーヌちゃんが話を始めた。


 どうやら、みんなのお仕事に関する問題みたい。


 魔物のみんなは仕事しているけど、その仕事量や成果に差がある。それに狩りで取ってきたお肉だったり、ウェイトレスをしてもらったお金だったりで、不公平感があるみたい。


「魔物である私たちにとってお金はなじみがないものです。洗濯やごみ拾いなど、働いてお金を得てはいますが、食べ物を持ってくるオーク達や狼達のほうが頑張ってると言い張るのですよ。確かに食べ物は大事ですが、お金だって食べ物に代わるのですから、そこに差はないと言ってはいるのですが」


「それが不満だってことなのかな?」


「不満というよりは、頑張っただけの証が欲しいみたいですね。頑張ったんだから、それなりに讃えて欲しい、みたいなニュアンスです。魔物は強さによる序列を大事にしますから、仕事に関してもどちらが上かをはっきりさせたいのですよ」


 そういうものなんだ。これは結構難しい問題かも。ここはボスとしてちゃんとした解決策を出さないと。


 強さによる序列……そういえば、ディア姉ちゃんがアダマンタイト級の冒険者のことを言ってたっけ。強い冒険者は何度も依頼を解決するとアダマンタイトってランクになれるはず。それも強さによる序列だと思う。


 ということは、みんなもそういう仕組みがあればいいんじゃないかな? お仕事の貢献度に見合ったランクを作ってあげれば解決かもしれない。


「お仕事の貢献度によってランク分けするのはどうかな? どういうお仕事がどういう貢献度になるかは分からないけど、やった分だけランクが上がるようにすればいいと思う」


 みんなから感嘆の声が上がった。


 うん、我ながらいい感じ。


 そこにスッと手をあげた人がいた。緑色のスライム、マリーちゃんだ。


「それでしたら、冒険者ギルドの魔物版を作ってみたらどうでしょうか? ランク分けに関しては冒険者ギルドでやってましたよね? あれを真似てみたらどうでしょう?」


 そこに気づくなんてマリーちゃんは優秀。


「うん、アンリの提案は冒険者ギルドの発想から来てる。マリーちゃんの意見だと、魔物ギルドを作るってことかな?」


 マリーちゃんがこくりとうなずく。


 みんながざわざわしてる。アンリもちょっとソワソワしてきた。魔物ギルドを設立……それは素敵。


「アンリ様、それは素晴らしい案だと思います。マリーも良くそこに気づいた。これからは個人ではなく、魔物ギルドという大きな組織として仕事を請け負うのがいいと思われます。仕事の内容からちゃんとした査定をして、ギルドへの貢献度によりランクを決める。そうすれば、誰が一番貢献しているのか目に見えて分かるでしょう」


 みんながまた感嘆の声をあげた。


「決めなくてはいけないことが多いですが、そのような方向性で考えてみたいと思います。皆、それでいいな?」


 みんなが雄たけびの声を上げた。畑仕事をしているベインおじさん達がちょっとびっくりしてる。


「では、アンリ様。魔物ギルドの件はみんなで意見を出しながら決めたいと思います」


「うん、アンリも手伝いたいけど、おじいちゃんとの勉強があるから、それは任せてもいい? 代わりにディア姉ちゃんから冒険者ギルドのことをよく聞いておくから」


「はい、お願いいたします。では、この件は一旦終わりにしましょう。では次の問題ですが――」


「問題がまだあるの?」


「はい。その、アビスの中にいる狼たちなのですが、実はヴァイア様からほんの少しノスト様を襲ってくれと言われてます。つがいになるための作戦のようです。いわゆる自作自演ですね。ですが、依頼通りにノスト様を襲うと、ヴァイア様から猛反撃を受けるそうです。納得いかないと苦情が来てます」


 ヴァイア姉ちゃんはちょっと過激になった気がする。でも、おかあさんが「女は恋をすると過激になる」って言ってた。それにアンリも応援はしたい。


「狼さんたちはものすごく貢献していると思うから、ランクをかなり上げよう。あと、ヴァイア姉ちゃんにはアンリのほうから言っておくから」


「はい、ではよろしくお願いします」


 これで第五回魔物会議は終了した。


 残念ながらグラヴェおじさんはアンリの門限前に来れなかったみたい。グラヴェおじさんとはまた今度にしよう。


 それじゃ、そろそろ夕食の時間だから帰ろうっと。


 みんなと別れて畑を後にした。こういうときフェル姉ちゃんがいればおんぶしてもらえるんだけどな。


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