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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十八章

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人望

 

 今日はニャントリオンのトラン王国初ライブ。そして同時にブランド「ニャントリオン」のファッションショーもある。


 まずはファッションショーをやってからライブという流れ。


 お触れを出した時は「また簒奪王が変なことを言い出した」という感じだったらしい。でも、怖いもの見たさというか、コロシアムは満員御礼だ。


 武闘会はどちらかというと男性が多かったけど今日は女性が多い。人界で大ブランドになっているニャントリオンを知らなかったから結構な期待感があるらしい。


 今やその服を着ることが一種のステータスとなっているニャントリオン。そのファッションショーを大々的にやるということで他国からも多くの人が来てくれた。


 獣人さんが踊ったり、ファッションショーをしたりすること自体はまだまだ受け入れられないのだろうけど、ベインおじさんが言うにはトラン王国には獣人さんの隠れファンが多いということ。


 ルハラ帝国出身のロンおじさんもそうだったし、国の方針で獣人を嫌っているという風潮があったから大きな声では言えなかったとか。


 そんなロンおじさんとベインおじさん達がソドゴラで出会って、そこにヤト姉さんが来たというのもなんだか感慨深い。


 そんなヤト姉さんは今日のライブに参加してくれることなった。これにはニア姉さん達が配慮してくれたというのがある。


 王としても個人的にも挨拶が必要だと思う。ヤト姉さんが待機している部屋まで足を運んだ。


 部屋の中にはきらびやかな衣装を着たニャントリオンのメンバーがいる。ヤト姉さんは落ち着いたものだけど、他の獣人さんはソワソワというか、踊りや歌のチェックをしているみたいだ。


 邪魔をしないようにヤト姉さんの方へと移動した。


 ヤト姉さんは最初にファッションショーに出るからステージ衣装じゃないみたいだ。ラフな格好をしている。トリを務めるみたいだから、まだ余裕があるんだろう。


「今日はありがとう、ヤト姉さん」


「前にも言ったけど、礼をするならニア様達にするべきニャ」


 ヤト姉さんが来てくれた理由。それは今度、ニア姉さん達がトラン王国を旅行するから、ヤト姉さんにちょっと見てきて欲しいという依頼だったらしい。


 多分だけど、そういう形で送り出してくれたんだと思う。ヤト姉さんへの休暇という面もあるんだろうけど、私を心配してくれての対応だ。


「国賓として歓待するって伝えておいて」


「それは伝えておくニャ。でも、もっとトラン王国内の治安を良くしておくニャ。まさか王都で襲われるとは思ってなかったニャ」


「ごめんなさい。それって王制廃止派の人達。私がやることを失敗させるように色々と画策してる。ヤト姉さんに襲い掛かったところで負けるとは思ってなかったけど」


「アンリは人望がないニャー」


 心にぐさっとくる。確かに人望がない。でも、今日のライブやらファッションショーが成功すれば、私への評価も少しは変わるかもしれない。他人任せなのはちょっとあれだけど。


 いきなり頭を雑に撫でられた。


 何事と思ってヤト姉さんを見ると、ちょっと笑っている。どうしたんだろう。


「そんな顔しなくていいニャ。アンリに人望がないのはトラン王国だけニャ。ソドゴラなら人望がありまくりだから気にすることはないニャ」


「ありまくりって。でも、そうなのかな?」


「そうニャ。そしてアンリを一番に推しているのはフェル様ニャ」


 推す……そっか、フェル姉ちゃんは私推しなんだ。


「アンリに簒奪王という二つ名がついて一番怒ってたニャ。本人は『全然怒ってないぞ』と言っていたけど、あれははらわた煮えくりかえっている感じニャ。『ちょっと王制廃止派の奴らを見てくる』と言ったから皆で止めたニャ。王制廃止派は私達に感謝して欲しいニャ」


 そんなことがあったなんて初めて知った。


 簒奪王を名乗ることを決めたのは私だけど言い出したのは王制廃止派。フェル姉ちゃんはトラン王国へ来て潰すつもりだったんだ。


 ディーン兄さんについた不名誉な二つ名、傀儡の皇帝。


 フェル姉ちゃんは私にそういう二つ名がつかないように色々と配慮してくれた。魔族さん達には手伝わないように言っていたし、王になった後のことを考えてくれていた。


 でも、結局私には簒奪王という不名誉な二つ名がついた。フェル姉ちゃんは怒っているだろうな。個人的には結構気に入っているんだけど。


「この簒奪王という名前だけど、未来ではいい意味になっているから怒らないでって伝えておいて」


「分かったニャ。でも、たまにはお忍びでソドゴラに来るといいニャ。フェル様はあんなだから、一度トラン王国へ行くと何度も足を運ぶと思って自制しているニャ。今回もかなり悩んでたニャ」


「何度誘っても来てくれないのはそういう理由なんだ?」


「ヴィロー商会経由でトラン王国がお金に困ってると聞いたとき、フェル様はヴィロー商会に預けているお金を渡そうとしてたニャ。それも皆で止めたニャ。たぶん、一度ここに来て状況をみたら、トラン王国に余裕ができるまで延々とお金を貢ぐニャ。ついでに王制廃止派も潰しそうニャ」


 ものすごく想像できる。フェル姉ちゃんのことだから、ついでとかたまたまとか言ってドラゴンを狩ってくる可能性が高い。


 ディア姉さんのニャントリオンがそのいい例。服や革製品になる素材をかなり安く売っているとか。しかも最初はタダで渡そうとしていたとも聞いた。


 いまだに三割引きで売るというフェル姉ちゃんと、割増しで買うというガープ兄さんの交渉があるとか。お互いに自分に不利な条件を持ちかける交渉って傍から見たら意味不明だ。


 確かにありがたい話ではあるけれど、フェル姉ちゃんにおんぶに抱っこなのは確かにちょっとどうかなって思うところはある。止めてくれたのはありがたいって思うべきなんだろうな。


「ありがとう、ヤト姉さん。ここは私や国の皆が踏ん張るところだから」


「気にしなくていいニャ。そういうわけでタダ働きはしないから出演料は貰うニャ」


「……分割でお願いします」


「そのくらいが妥当ニャ。あと、そういうのはマネージャーに任せているからソイツと交渉するニャ」


「マネージャー?」


「ニャントリオンのスケジュール管理やらなにやらを全部やってくれる獣人の男ニャ。私と同じ黒猫の獣人でなかなか優秀な奴ニャ」


 ヤト姉さんがフェル姉ちゃん以外を褒めるなんて珍しい気がする。


「最近、ウゲン共和国から来て『タダでもいいから使ってください!』とか言ったからちゃんと無料で使ってやってるニャ」


 無料だから優秀って意味じゃないと思いたい。


 おっといけない。ちょっと長居し過ぎたかも。


「それじゃありがとう、ヤト姉さん。私もコロシアムでヤト姉さんの雄姿を見てるから」


「目に焼き付けておくといいニャ」


「もちろん。王だから特等席で見てる」


 一番いい席で見れるというのは王様の特権だ。


 さて、今度はディア姉さんの方へ行こう。スザンナ姉さん達を護衛として付けているからそっちに合流だ。


 ディア姉さんが待機している部屋は戦場だった。


 ソドゴラから連れてきているスタッフさんが大きな声を上げながら衣装の最終チェックをしている。


 それはそれとして、気になることがある。でも、それは後にしよう。


「ディア姉さん、今日はありがとう」


「やだなー、アンリちゃん。こちらこそありがとうだよ! こんな大きな舞台でファッションショーをやれるなんてすごく嬉しいからね!」


 聞いた話によるとソドゴラでのファッションショーは妖精王国の食堂でやっているとか。ここまで大きい場所、さらにはこんなに多くのお客さんの前でやるのは初めてだとか。


 これはウィンウィンの関係だと思う。でも、あそこにいる人達にとっては負けなのかな……?


「あの、ディア姉さん、あそこにいる親衛隊の皆だけど」


「アンリちゃん、素敵な原石をありがとう……磨きまくったよ!」


 王制廃止派が襲ってくる可能性があるから護衛として親衛隊を送り込んだんだけど、なぜかニャントリオンのドレスを着てお化粧されている。どう見てもモデルさんの扱いだ。


 皆強いのに、スタッフさんから「動かないで!」って怒られているのがとてもシュール。普段はワイルドな皆が借りてきた猫のように大人しい。


 そして皆が私に助けを求める目を向けている。とくにスザンナ姉さんとレイヤ姉さんの目力が強い。


「親衛隊の皆をここへ行くように指示したのは護衛のためでモデルさんとしてじゃないんだけど」


「アンリちゃん、世の中にはこんな言葉あるんだよ。『それはそれ、これはこれ』」


 すごく便利な言葉だと思う。納得できるかは別にして。


「それに親衛隊の子達だってたまには血なまぐさいことから離れて楽しまないと。若い女の子の会話が暴動鎮圧の話ばかりでどうするのって話だよ」


「それは確かに言えてるかも……分かった。今日の護衛はベインおじさん達に任せて、親衛隊の皆にはファッションモデルとして頑張ってもらう。もしかしたらドレスを着て護衛する場合もあるだろうし」


「そうそう。動きやすいドレスにしたから、このまま剣を振り回しても安心だよ!」


 ディア姉さんはそう言うと、親衛隊の皆に親指を立てて見せた。


 その言葉を聞いて、レイヤ姉さんや親衛隊の皆は前向きな感じになったみたいだけど、スザンナ姉さんはがっくりしている。でも、付き合いが長いから分かる。スザンナ姉さんもまんざらじゃない感じだ。大体、本当に嫌ならもっと暴れてる。


「ディアさんが来てるって聞いたんですけど――」


 マナちゃんとクル姉さんが部屋の扉を控えめに開けながら、首だけで覗き込んでくる。


 部屋の中にいる皆が会話を止めてマナちゃん達を見た。


「あ、ご、ごめんなさい。お取込み中でした……?」


 マナちゃんが謝ると、ディア姉さんが腕を組んでから頷いた。


「確保! 磨くよ!」


「え、な、なに!?」


「ど、どういうこと!?」


 マナちゃんとクル姉さんもスタッフさんに捕まって色々され始めた。スザンナ姉さんが率先して捕まえようとしたのは、皆で苦労を分かち合おうって話なんだと思う。


 そうだ、皆にはかなり難しい仕事を依頼するわけだから、特別ボーナスを出そう。今日着たドレスは購入してプレゼントしたほうがいいかも。


 でも、惜しい。私も王じゃなかったら参加していたんだけどな。仕方ない、今日は王として楽しもう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] フェルは他者視点だと可愛くなりますね。 何か、娘に対してとても不器用な父親みたいにも思えます。 [気になる点] 王制廃止派も、街の外の見晴らしが悪くて誰も居ない様な場所でヤト達を襲えばいい…
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