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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十七章

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一週間後

 

 戦いでボロボロになった王都は徐々に復興が始まっている。


 ドワーフさん達のおかげで建築物などは修復が早い。玉座の間もある程度は修復が終わった。最近はここで報告を受けることが多いけど、玉座に座っているだけというのも結構疲れる。


 そういうのは宰相であるおじいちゃんがやってくれれば問題ないんだけど、私も王として報告を受ける必要があるらしい。私としてはフェル姉ちゃんみたいに行動派の王で行きたいんだけど。


 そのフェル姉ちゃんは、今日にも暴走が終わるとのことだ。


 あれから一週間。人界中にいる魔力の多い人のおかげでアビスのダンジョンへ閉じ込めることに成功した。いまだに魔力の消費は激しいけど、それを上回る魔力の供給で無事に済んでいるみたいだ。


 フェル姉ちゃんを守るために皆がダンジョンで生活している。魔力を作るには食事と睡眠。魔力を吸われることでかなりの脱力感はあるけれど、それでも快適な生活が送れるようにとソドゴラの人達が色々とやってくれている。


 狩人のロミット兄さんが食材を用意して、ニア姉さんとヤト姉さんが料理を作ってアビスへ運んでいるとか。それにロンおじさんは家具なんかを作って提供している。


 冒険者ギルドのギルドマスターであるネヴァ姉さんも余計な問題が起きないようにとアビスを封鎖しているそうだし、ウェンディ姉さんもアビスの中で魔力を供給している。


 多くの人がフェル姉ちゃんのために色々やっているけど、私だけ何もしていない。全ての元凶である私はこの玉座の間で報告を受ける日々だ。


 一度だけ、アビスちゃんのダンジョンへ行った。


 できるだけ魔力を消費しない方がいいんだけど、ヴァイア姉さんに頼み込んだ。わがままを通した形になったけど、ゾルデ姉さん達を送るという話もあったのでそれに便乗した形だ。


 見ない方がいいですとアビスちゃんに言われたけど、そういうわけにもいかず、遠隔の映像でフェル姉ちゃんの状況を見た。


 一瞬、あれはフェル姉ちゃんじゃない、そう思ってしまった。


 姿形、服装は間違いなくフェル姉ちゃんなのに、狂ったように笑いながら壁を殴りつける姿は何に例えていいのか分からない程だった。見たことはないけど、悪魔が一番近いのかもしれない。


 スザンナ姉さんは私よりショックだったんだろう。それを見た瞬間に腰を抜かしたようで、床に座り込んで動けなくなった。


 そして私に謝った。フェル姉ちゃんが元に戻るまでトラン王国へは戻れないと。あのクールなスザンナ姉さんが自分のせいだと言いながら震えるなんて相当だ。


 スザンナ姉さんのせいじゃないと何度も言ったけど、結局はそれを許可した。


 私もアビスへ残りたかったけど王という立場としてそれはできない。だから「私の代わりにフェル姉ちゃんをお願い」と言ってスザンナ姉さんを残してきた。


 それも今日までだ。


 フェル姉ちゃんの暴走は今日終わる。しばらくは暴走の反動から眠ってしまうとのことだけど、少なくとも暴れるのは止めてくれる。そうすれば、魔力を使いながら閉じ込めておく必要はない。


 ただ、何があるか分からないのでアビスの外へは出さないみたいだ。暴れないけどしばらくは要警戒といったところだろう。


 少しでも問題が解決してくれるなら助かる。逆にトラン王国はまだまだ問題がいっぱいだ。


 地下で眠っていた人達、その何人かを試験的に目覚めさせた。


 事情を説明してはいるんだけど、納得できない人が多い。文句を言わないのは事情を把握していない子供くらいだ。


 あたりまえだ。いつの間にか十三年近い月日が流れているなんて納得できる人なんていないと思う。何度説明しても頑なに信じないと言っている人もいたとか。


 ただ、私が生きていて助けてくれたという話は好意的に受けてくれる人達もいた。


 国を追われた王女が困難を乗り越えて王位を取り戻したという物語のような話に、特に女性は好意的に捉えてくれたみたいだ。これはおじいちゃんが印象操作をするように話してくれたからだろう。


 良くない行為だとは思うけど、トラン王国の最大の脅威は内乱だ。


 ルハラ帝国やウゲン共和国からの脅威はない。ディーン兄さんやオルドおじさんがいる間は間違いなく大丈夫。戦争になんてならない。


 でも、トラン王国はラーファとダズマの影武者、それにノマのせいで目を覚ました人達は王族にかなりの不信感がある。おじいちゃんが言うには怒りの矛先がないから王族である私にそれが向かうという話だ。


 元凶だったラーファ達はもういない。だからと言って、はいそうですか、と納得できるわけじゃない。やり場のない怒りをどこに向けるかといえば、それは王族である私。王族のいざこざに巻き込まれた、そう捉える人も多いだろう。


 王位を奪われた私も犠牲者である、ということを事情の説明でしてくれてはいるけど、どれくらい効果があるのか分からない。


 そもそもこんな状態になる前から王制廃止論が出ていたらしいから、これを機にクーデターを起こそうと考える人も出てくるだろうとのことだった。


 これらを私のせいじゃないと放棄するわけにはいかない。王になった以上、すべてのことは私の責任。たとえどんな状況になったとしてもそれらを受け入れて真摯に対応していこう。


 フェル姉ちゃんなら必ずそうするはずだ。


 よし、午後の最初の仕事はヴィロー商会との面会だ。こっちの問題も解決していこう。




 おじいちゃんとラスナおじさんとのバトルが繰り広げられている。


 私とローシャ姉さんはちょっと蚊帳の外だ。


「しかしですな、シャスラ様。我々としても今回の戦いにはかなり投資をさせていただきました。その回収をトラン王国にあるダンジョンの運営で取り返したいのですよ」


「それには感謝しておりますよ、ラスナ殿。しかし、契約上、支払いはまだまだ先のはずですし、トラン王国が運営していたダンジョンの権利を渡してほしいと言うのは少々割に合わないと思いますが?」


「ですが、宝物庫にもあまりお金がないとなれば返す当てを期待することができませんからな」


 どうやらヴィロー商会というか、ラスナおじさんはトラン王国にあるダンジョンの権利が欲しいみたいだ。


 国が管理していたダンジョンの権利を手に入れるチャンスなんてそうないはず。宝物庫にあるお宝で支払いができなければ、それを奪えるチャンスだと思った……というのは建前だと思う。


 交渉を楽しんでいる部分もあるだろうけど、本当は私達のため。


 トラン王国にお金がないことは事実。国が疲弊しているから、はっきり言ってダンジョンの管理をしている暇はない。でも、そうなると遺跡機関からダンジョンの管理ができないと思われてダンジョンが競売にかけられる。


 そうなる前にヴィロー商会に預けないかという話だ。ヴィロー商会なら国への税金も普通に払ってくれる。変な商会に任せるよりははるかに安心だし信頼できる。


 それに対外的にもトラン王国から管理をお願いしたというよりは、ヴィロー商会が足元を見たという形にできるわけだ。結果は変わらないけど、こちらから下手に出たという形にはならない。


 国が商会に頭を下げたという形にならないように、こっちの面子を考慮してくれた――ような気がする。


 たぶんおじいちゃんも分かっているけどラスナおじさんの芝居に付き合っているわけだ。


 玉座に座ったまま軽く右手を上げると、二人は話し合いを止めてこちらを見てくれた。


「ヴィロー商会にトラン王国が所有するダンジョンの権利を売り渡すことにする」


「おお、感謝しますぞ! アンリ陛下!」


「アンリ様、よろしいのですか?」


 普通なら驚くようなことだけど、おじいちゃんは冷静だ。やっぱり分かっていたんだと思う。でも、ここからがネゴシエーターアンリの出番。皆の度肝を抜く。


「宰相。ラスナ殿はこう言っている。今のトラン王国にダンジョンを管理する力はない。借金を帳消しにするので管理を私達に任せくれませんかと」


 そう言うと、ここにいる三人が全員ぽかんとしていた。


 そこは大商人のラスナおじさん。誰よりも最初に動いた。


「お、お待ちくだされ! しゃ、借金を帳消し? さすがにそこまでは――」


「感謝する、ラスナ殿。トラン王国のことを考えてくれた素晴らしい提案だと思う。言葉の裏を読む、ソドゴラ村でそんな風に教わった記憶がある」


「いや、言ったかもしれませんが――」


「今のトラン王国は復興に力を入れなくてはならない。そんな状況ではいくら利益があるとは言ってもダンジョンの運営をトラン王国がするのは無理だろう。ラスナ殿はそれを危惧していたはずだ」


「……そういう考えがなかったとは言えませんがね」


「トラン王国にはダンジョンも多く、管理するためには多くの人を割く必要があるが、その余裕は今のトラン王国にない。なのでここはヴィロー商会に任せようと思う」


 おじいちゃんは笑顔で頷いた。


「確かにその通りではありますね。分かりました。アンリ様の決断に従いましょう」


「あのですな、たとえすべてのダンジョン権利を買ったとしても、借金を帳消しにできる額では――」


「ありがとう、ラスナおじさん」


 ラスナおじさんは一瞬驚いてから、苦笑いの顔になった。


「ラスナおじさんと言われてしまったら勝てませんな。最後に最強のカードを切ってくるとは恐れ入りました。今後もトラン王国との交渉は難しくなりそうです――会長、よろしいでしょうか?」


「もともとそのつもりだったんでしょ? それにこの件は全部ラスナに任せているから別に構わないわよ。数年もすれば借金のお金なんて回収できるだろうし」


「……ネタバレするのはあまり感心しませんな」


 そんなことだろうとは思った。


 フェル姉ちゃんとの交渉を楽しむためにわざと偽物の大金貨を混ぜるようなラスナおじさんだ。信頼している相手と交渉の遊びをするタイプなんだから、これも色々と楽しんでいたんだろう。


 とはいえ、トラン王国にあるダンジョンの権利をすべて渡したとしても借金の額には届かないのは間違いないはず。なにか別の形でお返しは必要だと思う。


 それに今までの借金はなくなったとしてもさらなる借金が必要だ。


 なにかこう、短期間でお金を稼げることってないかな……やっぱりダンジョンで何かお金になる物を見つけないとだめかもしれない。


 そんなことを考えていると、いきなり玉座の間の扉が開いた。そしてメイドさんが飛び込んでくる。


 おじいちゃんが少し眉間にしわを寄せている。


「何事だ?」


 メイドさんとしては珍しくあまり行儀がいいとは言えないことだとは思う。何の前触れもなくいきなり突撃してきたようなもの。兵士さんがいたら斬られても文句は言えないし、メイドギルドならギロチン案件だ。


 メイドさんはその謝罪もせずに息を切らしながら答えた。


「フェ、フェル様が暴れるのをやめたそうです! すぐに眠られてしまったそうですが、もう大丈夫と連絡がありました!」


 気付くといつの間にか玉座から立ち上がっていた。そして今度は力がまったく入らずに玉座に座る。


 良かった。あとは目を覚ましてくれるのを待つだけだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] アンリがトランから動けないから仕方ないけど暴走時の他視点が見れないのは残念 まぁ皆んながどうするかはキャラ立ってて想像しやすいし、悪かった、ありがとう……ちょっと臭いwで重くならないぐらいが…
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